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【小説】目が覚めたら夢の中 第31話:暴露1

暴露1

「兄上、今日はもうこれくらいにしましょう。」
「そうだな。」
手元にある資料をまとめ、別のテーブルに積み上げる。
お茶の準備をした兄上の従者であるミシェルが、資料を外したテーブルに3人分のお茶を入れていく。ミシェルが部屋を出て行ったのを見届けて、私は口を開いた。

「兄上、お話したいことがあるのですが。。」
兄の青い瞳が私を見つめる。
「どうした?」
「テラスティーネと婚姻してください。兄上。」
私の言葉を受けて、兄はフォルネスを振り仰ぐ。兄の横に立っているフォルネスは、兄の視線を受けて、顔を うつむかせた。兄はフォルネスの様子を見た後、私の方を向いて、大きく息を吐く。

「テラスティーネはフォルネスと婚約している。」
「別に婚約者と婚姻しなくても問題ありません。このままテラスティーネとフォルネスが婚姻しても、誰も幸せになりません。」
「なぜ、そう思う。フォルネスは有能だ。それに相手のことを考えて行動できる。そなたが領主になった後は、私とともに摂政役についてもらう予定だし、なんなら辺境伯に銘じてもいい。将来も有望だ。何の問題がある。」
兄の言葉を聞いて、フォルネスの頬が若干赤らむ。

フォルネスが有能なのはわかっているが、今の問題はそこにはない。
「問題ばかりです。テラスティーネと兄上は両想い。フォルネスは別にテラスティーネが好きなわけではなく他に思い人がいるのですから。」
「アルスカイン様。それは言わないでほしかったのですが。」
フォルネスに貴族的な笑みが浮かぶ。カミュスヤーナはそんなフォルネスの様子を唖然 あぜんと見つめている。

「そうだったのか。それはフォルネスに悪いことをした。だが既に婚姻の準備は済んでいるのだろう。」
「まだ2ヶ月ほどありますから、準備はいかようにでもなります。それより。」
私は兄の方に身を乗り出し、両肩をつかむ。

「兄上、何が障害になっているのかはわかりませぬが、テラスティーネを幸せにできるのは、貴方しかいないのです。テラスティーネと婚姻してください。お願いです。」
「アルスカイン。。」
兄がその顔をゆがめる。泣きそうな耐えているような、そんな表情。瞳の色が同じせいか、兄に彼女の姿が重なって見える。

テラスティーネには心配せず待つよう伝えたが、そのまま彼女は魔王に身体を奪われてしまった。この点では兄の懸念が当たってしまったというわけだ。
兄は魔王からテラスティーネの身体を取り戻そうと尽力している。いざとなれば、自分を犠牲にしてでも、それをなそうとするだろう。
でも、兄がいなくなれば、テラスティーネは彼を追っていくような気がしてならない。
彼女の幸せは、兄の側にあるのだろう。
であれば、なぜ兄は彼女を遠ざけようとするのか?彼女を いとうているわけでもあるまいし。

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