見出し画像

【短編小説】クリスマスの出来事 第一幕 ♯アドベントカレンダー ♯聖夜に起こる不思議な話

これは、高校生の頃、書いたクリスマス短編の最後の一編のリメイクです。まだ、リメイク終わってません。年内には終えますので、気長に終わるのをお待ちください。
タイトルも後から変えるかもしれません。

クリスマスの出来事 第一幕

まだ、クリスマスまでは2週間近くあるというのに、教室内は常にクリスマスの話で盛り上がっている。我がクラスの女子生徒は、その手に持っているものをせっせと動かしている。編み棒である。このクラスは、男女のへだたりが少なく、クラス内に好きな人がいるとか、既に恋人同士である男女も、他のクラスに比べて多いようだ。

隣にいる友達の秋吉透美とうみも、紺色のセーターを編んでいた。彼女は他クラスの男子と付き合っているが、クラスの雰囲気に呑まれるかのように、今年の秋ごろから編み物を始めている。

「ねぇ、秋ちゃん。」
特にプレセントをあげる予定の彼氏もいない大槻ゆうは、親友に声をかける。
「なぁに?」
「それ、橋元くんにあげるの?」
「そうだよ。クリスマスにあげるの。」
透美が笑みを浮かべて答えるのを、夕はため息をついて見つめた。

「いいなぁ、秋はあんないい彼がいて。」
「夕ちゃんも作ればいいのに。ほら、神谷君とか。夕ちゃん仲いいでしょ?」
透美の言葉に、夕は激しく首を横に振った。
「冗談でしょ。」
ちらりと夕は神谷直樹の方を見る。
「どうしたんだ?ボーっとして。」
夕の視線に気づいたのか、笑って告げる直樹を見て、夕は頭の中に湧き上がった何かを振り払った。

「秋吉、帰るぞ。」
「うん、ちょっと待ってね。」
手元に持っていた編み物を、橋元優一から隠すようにすばやくバッグに入れた透美は、それを肩にかけると、振り返って夕にひらひらと手を振る。
「じゃあ、また明日ね。夕ちゃん。」
そんな透美を見て、夕は一つ深くため息をつく。

いいなぁ、秋ちゃんは。
夕は透美が優一と廊下の向こうに消えるのを見届けてから、立ち上がると、乱暴にバッグを背中に担ぎ、教室を出て行った。教室に残った直樹は、夕の様子を見て軽く首を傾げた。

部室に向かう間、何となく夕は心に何かがくすぶっているのを感じて、仕方がなかった。
何か・・嫌だなぁ。
夕は透美が優一の隣で笑っているのを見ると、何となく嫌な気持ちになるのだ。別に二人が付き合うのが気に入らない(こんな言い方をするのも変ではないかと夕は思うのだが。)わけでもないし、単に自分に彼氏がいないから、焦ってでもいるのだろうか?

夕はまたため息をついて、目の前の部室のドアを開けた。
「こんにちは。」
「こんにちは、夕先輩。あれ、今日は神谷先輩いないんですかぁ?」
文芸部の一年生の戸室とむろ美咲が、ニコニコと笑って尋ねる。
「今日は委員会。後で来るんじゃないの?」
「いっそのこと、正部員になっちゃえばいいのにね。」
奥から笑い声と共に遠岡志穂が現れる。

「あ、おつかい頼まれてくれるかな。夕ちゃん。紅茶のストレート2本と、烏龍茶1本と、カルピスウォーター1本。あ、美咲ちゃんはどうする?」
「私、アクエリアスがいいです。」
美咲は笑って志穂に答える。
「だって。後は夕ちゃんの分と、神谷君の分ね。それは好きなの買ってきて、はいお金。」
「ええっ!7本も一人で持てませんよ。」
「そうね。じゃあ・・。」

その時ガラッとドアが開いて、一人の男子生徒が姿を見せた。
「どうも・・こんにちは。」
部室に入ってきた神谷直樹は、3人の文芸部員と目が合って、戸惑いながらも挨拶をする。
「ちょうどよかったわ。神谷君。夕ちゃんと一緒にジュース買ってきてくれない?」
「ええ、いいですよ。」
直樹はディバッグを下ろして美咲に預けると、夕を促した。夕は仕方なしに、寒い廊下に足を踏み出した。その後ろから美咲が「行ってらっしゃあい。」と声をかけた。

「で、頼まれたものは?」
「ストレートティー2本と、カルピス1本、烏龍茶1本、アクエリアス1本。後は好きなもの2本。」
「ふうん、じゃ俺はコーヒー。大槻は?」
「何でもいい。それにしても、委員会終わるの早くない?」
「今日は委員会ないよ。」
直樹はお金を入れてボタンを押すことを繰り返し、夕に2本缶コーヒーを差し出した。

「これ、よろしく。」
夕は缶コーヒーを受け取った。コーヒーの温かさが冷え切った手に心地いい。直樹は残りの5本を抱えると、歩き出す。夕は慌てて直樹の隣に行って尋ねた。
「ごめん、怒った?」
「別に。」
直樹は、夕の問いにそっけなく答えた。お互い用事がない時は、誘い合って部活に行っているのに、今日は彼を置いて、一人で来てしまった。しかも、委員会だと誤解もしていたし、先ほどから直樹に投げやりに言葉を返している。

部室の前に来ると、夕は急いでドアを開けた。そして正面にある紺のカーテンを開けた。中は普通の教室の半分くらいの大きさで、正面に大きな窓があり、中央には会議室に置かれるような長方形のテーブルと10個の椅子。端にはクーラーボックスと、多くの本、部誌が置かれ、他イラストクラブも兼ねているため、色鉛筆、パステル、イラストボードなどが置かれている。

「ご苦労様。」
志穂が夕と直樹に声をかける。中には志穂を含めて5人の部員が座っていた。
「どうもありがとう。」
礼を言って受け取ったのは、文芸部部長の鳴本葉子。その隣で勉強をしているのが、副部長の霜原雅也。そして、一年生の美咲と崎野隼人である。

夕と直樹が席に着くと、葉子が二人に向かって言った。
「あのね。今、終業式の日に、お菓子を持ち寄ってクリスマスパーティーしないかって言ってたんだけど・・。」
「クリスマスパーティーですか?」
「うん、希望制で。霜原君は来れないんだけど、二人は来れる?」

「ええ・・私は大丈夫ですけど。」
「僕も予定ないけど・・部外者ですよ?」
「いいんだよ。俺も参加したいけどさ。代わりに行ってよ。」
その日予備校だもんなぁ。と残念そうに雅也は言う。
「じゃあ6人ね。後プレゼント交換するから、一人700円以内で用意して持って来てね。」
賛成の声が部室内に響き渡った。

第二幕へ続く


今回の作品は、アドベントカレンダーの企画に参加しています。
私が一番参加率多いです。すみません。

私の創作物を読んでくださったり、スキやコメントをくだされば嬉しいです。