『雑魚どもよ、大志を抱け!』
ほとんど映画を見ない自分が、同じ日に連続で見たいと思わされたのは初めてだ。
その映画とは足立紳監督の『雑魚どもよ、大志を抱け!』。
監督ご自身で書かれた小説『弱虫日記』(講談社文庫)を原作とするこの作品は、高崎瞬の周囲で小学5年生の春休みから6年生の夏にかけて起きる変化と成長を描く。
なんといっても瞬と彼の友人たちが巻き起こす騒動(一部そんな言葉ではとても言い表せないものもある)が、好奇心に正直で何でも遊びに変えてしまうという彼らの世界観をよく表している。他の評でも記されているが、冒頭の長回しはとても見応えがあった。
そして否が応でも巻き込まれる家族の病気や友人との関係性の中で、弱虫だった少年たちは強い存在に、そして自分自身に向き合う。様々な分岐点でifを認めれば、特典のポストカードの写真ような未来もあったのかもしれない。
登場人物それぞれにもモデルがいるらしく、リアルが映画のような環境に驚いた。足立監督は、瞬はご自身のことだとおっしゃっていたが、映画監督を目指し劇中でシナリオを書く西野聡もまた監督の分身のように思える。かといって、『喜劇 愛妻物語』の主人公である豪太のようにはなってほしくない。
役者さんたちは豪太を演じた濱田岳さんのような大スターになりそうな予感がする。特に主人公・瞬役の池川侑希弥さんは演技初挑戦が嘘であるかのように思えた。演技を全く知らない人間が評するのも変だが、目の芝居が良かった。また、監督との舞台挨拶に登壇された際には、とてもしっかりとやりとりをされていたのが印象的だ。
話を戻すと、瞬たちが今後どのような大人になるのか、非常に楽しみである。願わくは手紙のやりとりはずっと続いており、何年後かにもう一度集まって何かに挑戦するという続編を見てみたい。
私は先に原作小説を読み、映画を観て(2回)原作との違いに驚いた。例えば、地獄トンネルは映画にしか登場しない。
その後「月刊シナリオ」4月号に掲載された脚本を読み、さらに映画を観て編集されたところを探すという、マニアックな楽しみ方をした。エンドロールではメイキング写真が流れるので、こんなシーンあったっけ?という写真はカットされてしまった部分である。
アプリHELLO! MOVIEで提供される音声ガイドも聴いた。また違った面白さがある。
本作とも関連の深い『ションベン・ライダー』(相米慎二監督)も見てみたくなった。
最後に、知り合いの宣伝になってしまうが、テレビの男性アナウンサーの声(序盤に登場)と後輩看護師(中盤と終盤に登場)にも注目していただきたい。
ちなみに、本稿公開時点(2023年4月16日)では、『喜劇 愛妻物語』がABEMAで23日まで無料で視聴できる。『雑魚どもよ』でワコ役の新津ちせさんが娘のアキ役で出演されている。こちらもぜひ。
2023年8月21日追記
京都みなみ会館で4回目の鑑賞、その後足立監督と佐藤現プロデューサーとのトークショーを楽しんだ。
オーディションや撮影の裏話、役者さん達の最近の活躍まで豊富な話題を語られた。
最後は客席にいた出演者を壇上に上げてパチリ。
その場でパンフレットと原作小説を購入し、監督のサインもいただきました。
2023年8月24日追記
上記イベント時の集合写真を京都みなみ会館さんが投稿してくださいました。
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