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夏だ虫だ鎌倉だ!『蟲??? 養老先生とみんなの虫ラボ』に新作イモムシ展示します!

2024年夏、養老孟司先生による『蟲??? 養老先生とみんなの虫ラボ』が
鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムで開催されます。
桃山鈴子さんも虫アーティストの一人として参加します!
夏。虫。鎌倉。行くしかありません!

『蟲??? 養老先生とみんなの虫ラボ』(以下『蟲???』展)は、養老孟司先生の事務所「養老研究所」が主催する展覧会です。
養老先生の昆虫コレクションを中心に、虫や自然への理解を深める展示やワークショップが企画されています。
開催期間は7月8日〜9月1日。会場の鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムは、旧・神奈川県立近代美術館だった建物で、建築家 坂倉準三の設計。周辺も水や緑に囲まれたすばらしい環境です。
 
「蟲???」展の詳細はこちら↓

鎌倉は、養老先生のホームグラウンドであり、子供の頃から昆虫採集をしてきた場所。虫への供養のために虫塚を建立した建長寺もあります。その鎌倉で開催する『蟲???』展には、養老先生の並々ならぬ思いが込められています。
養老先生のメッセージはこちら↓

参加アーティストがまたすばらしいのです。
甲虫を石で彫る彫刻作家の佐藤正和重孝さん。建長寺の虫塚にも佐藤さんの作品が設置されています。
『がろあむし』『うんこ虫を追え』など数々の絵本でおなじみの舘野 鴻さん。『どんぐり』で第29回日本絵本賞を受賞されました。
養老先生と同じく鎌倉に生まれ育ったイラストレーター・画家の横山寛多さんは、養老先生の初めての絵本『「じぶん」のはなし』の絵をてがけておられます。
そしてイモムシ画家の桃山鈴子さん。桃山さんは、描き下ろしのイモムシたちを連れて『蟲???』展に参加します。

「『蟲???』展のお誘いがきたのは今年(2024年)のGWでした。過去作品でいいですよ、というお話だったのですが、養老先生が初めてご自身で主催される展覧会なので、どうしても描き下ろしの絵を出したい!と思って」
現在とりくんでいる仕事を少しの期間お休みさせてもらって、新作に集中することにした桃山さん。
展示する新作イモムシたちは次のとおりです!(桃山さん撮影の実写イモムシケムシ写真注意。大丈夫な方だけどうぞ!)
 
・キバラケンモン

茶色い毛の塊がかわいいキバラケンモン

・クワゴマダラヒトリ

成虫になると地味なのに、美しすぎるクワゴマダラヒトリ

・ヒメシロモンドクガ

歯ブラシ状の毛束が生えてるヒメシロモンドクガ

・ホソバスズメ

みんな大好きスズメガの仲間 ホソバスズメ

以上、個性豊かな4頭のイモムシのひらきのほか、こちらも描き下ろしのルリタテハの一生とサルトリイバラの絵、さらに旧作も展示する予定です。
 
最近、忙しくて、ライフワークである“ひらき”(イモムシの姿を魚の背びらきのように展開して描く)をなかなか描けず、ちょっとストレスが溜まっていたという桃山さん。
「『蟲???』展のおかげで、じっくりと“ひらき”に集中することができました。すばらしい機会をくださった養老先生、仕事を待ってくれた出版社の皆さん、ありがとうございます!」
 
桃山さんは、6月4日の鎌倉・建長寺での虫法要にも参列してきました。
「展覧会の準備に打ち込んでおられる養老先生のお姿を見て、私もがんばろう!いい絵を描くぞ!という気持ちになりました」
おそらくミュージアムへの搬入日ぎりぎりまで点描を打ちまくっていることでしょう。がんばれ桃山さん!
 
鎌倉 建長寺の虫塚と虫供養の様子はこちら↓

 桃山さんに、新作の美しいクワゴマダラヒトリへの思いを書いていただきました。ぜひお読みください。(以上 編集担当・李)

クワゴマダラヒトリをひらくまで 

 桃山鈴子

2月が過ぎて3月がやってくると、そろそろイモムシやケムシに出会えるかなと毎年心が浮き立ちます。二十四節気では、冬眠している虫たちが目覚め、姿を現す啓蟄のころです。
 家にはアサギマダラなど飼育中の越冬幼虫がいるけれど、野外で春一番に出会うイモムシ・ケムシは特別です。そしてかなりの確率で毎年最初に出会うのが、この『クワゴマダラヒトリ』なのです。ヒトリと聞くと、ついひとりぼっちのヒトリを想像しますが、漢字では火取です。羽化すると、多くの蛾と同じように夜行性となり、光に集まる習性があります。雑食性が高く、食草の選り好みをしないので1匹見かけたら、通常3〜4匹、多い時には10匹近く、いろいろな植物に見かけます。
 図鑑を紐解くと、このケムシは若齢幼虫で集団越冬をし、春になると分散するそうで、卵からスタートするイモムシ・ケムシたちよりも一足早く春の恵を味わっていることが分かりました。
 
 金属光沢のある青い瘤と真っ赤な腹脚を持つ美しいケムシですが、「ひらき」にしたのは今回が初めてです。出会いの多さに気が緩み、つい他のイモムシ・ケムシを描くことを優先してしまい、後回しにしていたのです。梅雨が近づくころになると、あんなにたくさんいたクワゴマダラヒトリはすっかりいなくなってしまい、
(ああ。あのメタリックな青藍色の瘤が今年も描けなかった )と毎年後悔をくり返していました。

 さて、今年も春がやってきました。そして一番に出会ったのはやはりクワゴマダラヒトリでした。タンポポ、アザミ、ヤエムグラ、セイタカアワダチソウ、ヨモギ、ドクダミ、アラカシ、サクラ…とにかくあちこちで出会いました。青い瘤を光らせ、腹脚もサクランボのような赤い色をしています。描きたいなと思いながら、今年は抱えている仕事に追われ、どうにも時間がありませんでした。
ああ。また春が過ぎて行く…。やがて季節はゴールデンウィークに突入しました。山へも行けず、仕事の山に取り組む毎日。ところが、そこへ思いがけず、養老先生の『蟲??? 養老先生とみんなの虫ラボ』展へのお誘いをいただいたのです!その頃、クワゴマダラヒトリは中齢〜終齢幼虫になり、まだあちこちに見かけました。 
 よし!この機会にまずは、クワゴマダラヒトリをひらきにするぞ!他のイモムシ・ケムシに出会っても誘惑されないぞ!そう心に決めました。
 
 丹念に観察すると、青色の瘤の数には個体差があり、多くの個体は青が橙色に置き換わっていることに気がつきました。些細なことですが青色の瘤に魅了されている私にとっては大発見でした。それからは絵のモデル選びのため、出会う個体の青瘤の数を一匹一匹、注意深く観察しました。
 いつもの散策路を歩いていると、きらきらと一際青く輝いている個体に出会いました。青瘤がサファイアのように身体に散りばめられています。モデルはこの美麗個体で決定です。観察しながら絵を描くため、家に持ち帰りました。

 制作期間はフン染めで紙作りをするところから始まり、約2週間ほどでした。描いてみると、瘤以外の体表は黒とアイボリーの細かい迷路のような模様になっていて、目をまわすほど複雑でした。
 作画中にミドリシジミやキシタバの幼虫に出会いましたが誘惑に負けず、はじめてクワゴマダラヒトリのひらきを完成させることが出来ました。…いや、正直に言うと、ずっと会いたかったキバラケンモンと憧れのヒメシロモンドクガは我慢が出来ず、気づいた時には、クワゴマダラヒトリを描きながら、キバラケンモンとヒメシロモンドクガの紙作りと下描きをしていました。やっぱり「イモムシのひらき」は私のライフワークなのです。
 美麗クワゴマダラヒトリ。妖艶なキバラケンモン。華やかなヒメシロモンドクガ。そして昨年出会ったミント色の小洒落たホソバスズメ。
 ぜひ、『蟲??? 養老先生とみんなの虫ラボ』展へ、美しいイモムシたちに会いに来て下さい!

何を撮っているのかイモムシ好きにしかわからないと思いますが
桃山さんを魅了した、光る青瘤と赤い腹脚

『蟲??? 養老先生とみんなの虫ラボ』
2024年7月8日(月)〜9月1日(日)
午前10時~午後4時30分(入館は閉館30分前まで)
鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム
観覧料:一般 1,500円/小中学生 1,000円/小学生未満は無料
主催:有限会社養老研究所
お問い合わせ:mushi.hatena.info@gmail.com

期間中にはワークショップなどのイベントも予定されています。
桃山鈴子さんは、7月14日(日)の絵本の朗読・お絵描きワークショップで講師を務めます。対象は幼稚園年長~小学校低学年のお子さんたち。
ぜひご参加ください! お申し込みはこちら↓


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