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201X年9月 スピーどノ街

今、行っておくべき街ということで行くことにしたスピーどノ街。太陽の街で出会ったHJもSkypeレッスンの老師も居ることもあり、軽い気持ちで行くことにした。

宿泊に選んだ場所は繁華街のど真ん中。楽器屋が沢山あって街中をぶらぶら。知らないメーカーの楽器ばかりがある中、イシバシ楽器の品揃えは極東の国準拠で揃えてあった。値段は万能の街よりずっと高いが、店内はすごく賑わっていた。

楽器街を抜けて西洋建築の建物が立ち並ぶ川沿いに出ると、写真を撮る商売の人が居て、観光客が居る中、腹を出してるおっさんがいて、、、ふいに既視感に襲われた。あれ???ここ、来たことあるぞ。。。と、川沿いを歩いているうちに記憶が鮮明になって来た。

あれは2000年になる年の年末だった。かの2000年問題で世の中何が起こるかわからない時にスピーどノ街近郊の「祈リの村」に飛んだことがあったのだ。海外に行けばやり過ごせるとでも思ったんだろうか。全く覚えてない。記憶にないのは、観光バスだかなんだかに乗って自分の意思で動いてなかったからだと思う。

一つ一つ思い出して行った。大晦日に寺に行ってお参りをしたこと。なぜかこの川沿いに来たこと。綺麗な外観の街の裏側が混沌であったこと。著作権無視のCDや非合法のソフトウエアが驚くような安い値段で売られていたこと。もちろんPCはOSから何から全部入りで爆安で売られていたこと。小室哲哉氏がプロデュースしていたクラブに行くタクシーの運転が荒くて死ぬかと思ったこと。クラブというよりはディスコで、歌ものばかりが流れた上にチークタイムがあったりして呆然としたこと。得体の知れない屋台で食べた謎スープがやたら美味かったこと。そしてお腹をこわしたこと。

街の裏側に入る。あの時に見た光景はないが、路地の雰囲気は残っている。国が資金を大量に注入したおかげで街はきれいに開発され、地下鉄も整備され、何よりトイレがだいぶまともになっていた。それだけで充分だ。当時のトイレはそれくらいひどかった。

なんてことを考えてる間に老師と待ち合わせの時間。地下鉄の駅で待ち合わせをして羊肉の火鍋屋に行った。老師曰く「ココは新鮮で美味シイよ」。そして鍋に具を入れて食べ始めた時だった。店内でガツ!ガツ!ゴ!ゴ!という音が鳴り響いた。振り向くと、大鉈のような包丁で肉をさばいている。店内の客は誰も気にしていない。もちろん老師もだ。ここで嫌な妄想をすると負けだ。とにかく食べることに集中しよう。

確かに新鮮で美味かった。美味かったが、なんというか、生きた心地がしなかった。無意識にやられるのではないかという意識が働いていたのかも知れない。だが、この街を仕切る巨大な国ではその感覚は重要だ。街は急速に発展し、経済はブンブンにまわり、人々の様子も勢いに満ちている。だが、その裏側にある大きな手の存在が街中を覆っている。

勢いに乗ると良いが気を抜くとやられる感じ。ギャンブル性の高い街はとてもドキドキする。

ここにはまた来る気がする。

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