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201X年9月 万能の街

あちこち旅をしていてホステル住まいの楽しさに気付いてしまった僕は、極東の島国の「万能の街」でもホステル住まいをするようになっている。ホステルには常に色んな国の人が居て、彼らとコミュニケーションを取って遊ぶのが楽しい。その昔、この国には日本印度化計画という曲があり、それは日本を印度にしてしまう感じであったが、この方法では居る場所全てをどこの国にでも出来てしまう。そして世界中に友達がどんどん増えるおかげでどこの街に行くのも楽しくなるのでおススメだ。

ここには極東の島国の人たちが泊っていることもあるが、その多くは会話を避け、陰気で引きこもった感じがする。そういう人に遭遇するたびにもったいないことするな、と思う(それぞれ事情はあるのだろうけれども)。そんな中、一人の吹っ切れた女性が居た。名前をKKという。KK曰く「家が仕事場から遠いし時間もったいない。ここなら主要駅から徒歩5分圏内だしなんなら歩いて会社も行ける。シーツは毎日新しくなるし、部屋の掃除もしなくていい。ごはん作りたければ作れるし、湯船に浸かりたければ近所に銭湯もある。物も沢山持つ必要がない。そしていろんな人といつでもしゃべっていられる。最高じゃん。」僕も同じことを思っていたが彼女はその先に居て、すでにホステルに住んでいた。家賃は時価だし一見割高にも見えるが、内容から考えたら十分有りな選択肢だ。KKは周りの人には全く理解されないらしいが僕には同意しかない。
楽しい話のお礼にその日の飲み代を奢った。「あんたとは仲良くなれそうだね。またおいでよ。」とまるで自分ちのように言ってて笑った。ああ、また来るよ。

生活基盤のアウトソーシングをどこまでするか。都市ではそれを選択することが可能だ。作られた資本主義的な価値観から逸脱すると、別の景色が見えてくる。

とても心地が良い。さすが「万能の街」だ。

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