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201X年2月 太陽の街

毎年、極東の島国の冬の寒さが身体に合わず、この季節には居場所を探しているのだが、冬の太陽を求めてようやく辿り着いたのがこの街だ。世界で何番目かに美しいと言われる駅を降りたところにホステルがあった。この地域ではよくある、ビルの1フロアがホステルというタイプでとても綺麗で快適だ。電車を何度も乗り継ぎで来たため、着いた時にはすでに夕暮れ時。チェックインして明るいうちに街へ出ようとしたところホステルの受付に居合わせたHJという女性と話し、一通りの旅の挨拶をしたところでどういうわけか一緒に夜市へ行く事になった。カタコト同士のコミュニケーションが誤解を生んで面白い。誤解が誤解を生んで僕らはすでに爆笑していた。たぶん、お互い違うポイントで笑ってるはずだが。。。
街に出るとHJは、『極東の人にはこれは食べられまい!』という料理を作る店を次から次へと選んでは入り、食べては次の店を回るという謎スタイルを繰り出した。結果、僕は食べられないものはなく、全てをクリアしたのだが、5店目をクリアしたあたりで『フむ、、、、、イイダろウ。オ前こレデ友達。コれカラヨろし区。私ハすピードの街から来タ。』と大陸の言葉で言われた。僕たちは屋台で乾杯した。

翌日、街の果ての港をぶらぶらしていたらばったりHJと出会ったのでレンタサイクルを借り、船で島に渡った。途中、HJは今日も今日でやはり変なものを食べさせようとする。声がでかくて面白くて大変いいのだが、それだけが難点だ。もういいだろう許してくれ。

僕たちは島の頂上に登り、軍艦だらけの海を眺め、街中を自転車で走りまわっていたのだが、途中、あまりの暑さに屋台でジュースを買って飲んでいる時にそれまで笑顔で話していたHJが急に神妙な顔になって言った。

『入口カもしレナい』

そしてジュースを飲み終わると言った。

「ぼチボち帰ロう。こコハ危なイ。」

どういうこと?何が?と聞いたがHJはまったく取り合わず、真顔のまま自転車を漕いで僕たちは再度島を渡って島を出た。
街に戻るとHJは元通りに戻って軽口を叩いている(詳しくはわからないが、何かいじわるな事を言ってるってことだけはわかる)。気付いたら日は暮れていて、いい加減腹が減ったので夕食を食べようと店に入る。店に入るなりHJは豚の脳味噌のスープを注文し、出てきた料理を前にしてニヤリと笑った。「こレ、オ前の分。トモグイだな。」お返しに僕はクラゲのサラダを頼んだ「コれデ、オ前もトモグイだな。」

お互い何かが分かった気がして、僕たちは現地のビールで乾杯をした。
ここはとても居心地がいいところだ。それにしてもこの人は何者なのだろうか。。。。。まあいい。

冬なのにも関わらず真夏のような日差しと海の匂い。

僕はここを『太陽の街』と名付けた。

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