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201X年2月 ネオンの街

優しサの街から電車で数時間走ったところにあるこの街に来る機会がやっとできた。新幹線も走っていないローカル地域へ足を延ばすことは、短期の旅程だとなかなか難しい。今回は、たまたま来ることが出来たが、次にこれる保証はどこにもない。それくらいの秘境感だ。

昼に出発して到着したのは夕方。街に出る前に荷物を置くためホステルへ向かう。これまで見たことがないくらい美しくデザインされたホステルだ。建物の外見、受付やキッチンの作り、ピクトグラム、中庭のコントラスト、光の取り入れ方、調度品、部屋内部のデザイン。何もかもが素晴らしい。この街でこんなものが見られるとは正直思っておらず面食らった。そして価格はホステル価格。デザイナー本人がオーナーなんだろう。じゃないととてもじゃないけどここまで出来ない。

呆気にとられているうちに日が落ちたので、ナイトマーケーットまで歩くことにした。徒歩で40分くらいだが、街の様子を掴むにはちょうどいい。ホステルを出て、暗い路地から表通りに入ったところで見たのは、おしゃれなホステルとは正反対の、ギラギラとぎらついたえげつないネオンの光だった。その落差にくらくらしながらナイトマーケットを目指す。目が慣れてきたのでよく見ると、風俗産業とかではなく、ただの食堂だったり土産物屋だったり、薬局だったりする。

なんだこれは???

そうこうしているうちにナイトマーケットに着いた。売っているものは、現地の原住民の方々のものだ。言葉もよくわからないし、書いてあることもなんだかよくわからない。ギラギラしたネオンはさらにギラギラとしている。とりあえず魚を焼いているのが見えたので、これを食べたいと身振りで伝える。魚の名前を教えてもらって、さらに勧められた野菜の炒め物のようなものを食べた。独特の味付けで若干困惑していると、「ね?美味しいでしょ?」と畳み掛けられた。お、おう。美味しいよ。顔と身振りで伝える。嬉しそうに笑う店員さんを見ていたら、「ああ、この感じなんだよな」と思った。

原住民の人々は純朴で、まっすぐで気持ちがいい。それが、ギラギラしたネオンとどうしても結びつかない。

あ、そうか。興味がないのか。きっと誰かがネオンを持ち込んで、それを単純に真似ていったらこうなったんだな。つまり、どうでもいいものとして夜に対応した結果がこれなのか。

本当のところをきいてみたい。
それには原住民との言葉の壁を越える手札が必要だ。

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