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201X年2月 青の島

ぽっかりと空いた時間を使って、なんども電車を乗り継いで、船に乗ってやっとたどり着いた最果ての地。真冬なのに気温は30℃前後あり、運良く天気もいい。船は極東の島国から払い下げられたものであり、船内のあちこちでその言語を見ることができた。船内は至る所にゴミ箱とビニール袋が設置されており、聞くところによると、悪天候時に船酔いで吐く人が大量に出るそうだ。なんというか、聞くだけで辛い。。。

島に着いた。宿は船着き場の反対側だそうだ。駅前ではバイクが貸し出されている。島に着いた人々はここでバイクを借りるようなのだが、その割には妙に静かだ。全てが電化されていて充電が減ってきたら島に数カ所ある電池交換所で交換するらしい。島ぐるみで取り組むとこうなるのか。なるほど。。。

さて、島はというと、多くの観光客が素潜りやダイビングを楽しんでいるようで、アウトドアの方々には天国のような場所なのだが、あいにく僕は外こもりのインドア派。ネット回線が確保できるカフェを探してまったりしようかと思ってはみたけど、せっかくの天気なのでバイクで島を回ることにした。こういう時に国際免許証は便利だ。バイクで一周一時間ほどの島では電動バイクのおかげで静寂と空気のきれいさが保たれて清々しい爽快感に溢れている。湿気は少なく気温も高い。ちょっとした天国のようだと思う。

島の北の果てに着くと空気が一変。重苦しい空気に包まれた。
湾岸の廃墟群の中を恐る恐る進むと、そこには刑務所があった。正確には現在の刑務所とかつて別の国に支配されていた頃の刑務所だ。現在の刑務所はまだいいのだが、かつての刑務所の部分が本当に重苦しい。いわゆる犯罪者ではなく、政府に歯向かい独立のために戦った人たちの記録を忘れにように、という場所なのだ。ダイビングポイントとの対比に目眩がした。長い時間いると飲み込まれそうになるので、早々に退散した。

一周して港に戻ると、元の活気に溢れている。溢れてはいるのだけど、先ほどの重苦しい空気の重力圏に自分が残っているせいで気分がとても重い。この感覚が抜けるまでカフェでぼおっとしよう。と、Wi-Fiを繋いで数時間を過ごした。

数時間経ってころ、夕日が射してきたので浜に出ると美しい太陽が見事に沈んでいくのを見ることができた。そしてあっという間に夜。電動バイクをかっ飛ばす気分は田舎の中学生だ。違うのはイグゾーストノイズがないこと。すーーーっと走る電動バイクは何か物足らない。港から宿まで街灯ひとつないポイントに差し掛かった時、空がふわっと明るくなった。

空には満点の星だ。

無くなったものと手に入ったもの。
そんなことをぼんやりと考えながらしばらく空を見上げた。

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