サント・シャペル

時々舞台や建築を見ていて、何世紀も前に作った人たちのものに圧倒されることがあります。それは言葉や思考ではなくて、生きた証のような完成形として目の前に現れるため、私はいつもその景色に「到底敵わない」というような羨望とあきらめの混じった目を向けざるを得ませんでした。

しかし、パリにあるサントシャペルはこの眼差しのあきらめの部分を、なにか柔らかいものに変換してくれたような気がします。


パリの街は、シテ島というセーヌ川の中州から発展していきました。その島の中心に位置しているのが、ノートルダム大聖堂とサントシャペルです。サントシャペルが建造されたのは約7世紀前のことですが、建物一面に広がるステンドグラスはその歴史を微塵も感じさせない輝きを保っていました。

由緒ある教会なので、司祭さんが立つ祭壇や燭台などはかなり堅牢に作られていました。壁から顔を出す彫刻や壁面の装飾は、あの時代にどうやって作ったのか想像できないほど緻密で鮮やかでした。



ステンドグラスに輝かされた光は中の装飾との反射を繰り返しながら顔に当たっていました。いつもならこの光とか雰囲気に圧倒されてしまうんですが、この教会はその感情が一切湧きませんでした。もちろん凄いなという気持ちは消えませんでしたが、それによって自分が恥ずかしくなることはなくて、むしろその光に包まれて安心させられているみたいでした。今まで全然賛同できなかった胎内回帰とか言ってる人の気持ちが少しわかりました。


内覧を終えて外に出ると、少し空が曇っていました。本当の景色はいつも平凡なんだと思います。あとは自分がどの場所でどんな人と見るか。



読んでくれてありがとうございました。
またどこかで。




日々是口実



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