マガジンのカバー画像

マンホール探訪記

51
ときには立ち止まり、足元を見つめる。
運営しているクリエイター

2016年1月の記事一覧

茨城県水戸市のマンホール

茨城県水戸市のマンホール

 「崖急に 梅ことごとく 斜めなり」
 正岡子規が、明治二十二年に水戸の偕楽園を訪れ、その際に詠んだ句である。
 急な崖にも、梅の木は地に合わせて斜めになって立ち、しかも懸命に花を咲かせている。
 人生にも通じるものを感じさせる名句といわれている。

 茨城県水戸市のマンホールには、市の木である梅がデザインされている。

千葉県山武郡九十九里町のマンホール

千葉県山武郡九十九里町のマンホール

 地方へ旅行に行ったら、まず最初にやることが、書店に入って現地の地図を買うことだ。
 一度、長崎の島原半島で、「島原半島の地図はありますか?」と尋ねたら、「島原半島だけの地図ですか?」と、驚かれたことがある。

 九十九里町は、伊能忠敬が生まれた土地だ。
 伊能忠敬が、江戸で測量の勉強をやり始めたのは、50歳になってからだ。
 その後、55歳で蝦夷地(北海道)に測量の旅に出て、足かけ17年かけて全

もっとみる
東京都羽村市のマンホール

東京都羽村市のマンホール

 小説「沈まぬ太陽」(山崎豊子著)で、主人公が、ニューヨークにあるブロンクス動物園で見た出来事を回想する場面がある。コンパクトにまとめると、こんな内容だ。
 ブロンクス動物園には、「鏡の間」という檻がある。
 その鉄格子をはめ込んだ檻の中には、一匹の動物もいない。一枚の鏡が置いてあるだけだ。
 来場客がその檻の前に立つと、格子越しに、自分自身の姿が、鏡に映って見える仕掛けになっている。
 そして、

もっとみる
鳥取県八頭郡八頭町(旧郡家町)のマンホール

鳥取県八頭郡八頭町(旧郡家町)のマンホール

 たとえば、毎年春には満開の桜の写真を撮らなければ気が済まないのと同じで、秋になると、柿の木の前でシャッターを切り、一人、悦に入っている。
 ただ食べるとなると、干し柿は好きなのだが、生の柿はそれほどでもない。柿は好きだが干し柿は駄目、という人もいるそうで、その意見もわかるような気がする。

 鳥取県八頭郡の旧郡家町は、花御所柿という柿が名産品で、それがマンホールのデザインに採用されている。

東京都昭島市のマンホール

東京都昭島市のマンホール

 「DEEP BLUE」という、イギリスのBBCが作った、素晴らしい映画がある。
 この映画の中で、シャチが、クジラを襲うシーンがでてくる。
 シャチは、集団になって子クジラを囲み、6時間かけて母クジラから引き離す。子クジラの体力を徐々に奪っていき、最後には食い殺してしまう。
 シャチは、彼らが最も好む部位である、子クジラの舌と下あごのみを食べて、あとはそのまま残して、去っていく。
 シャチが食い

もっとみる
鳥取県境港市のマンホール

鳥取県境港市のマンホール

 昨年亡くなった漫画家の水木しげるは、幼少期を、鳥取県境港市で過ごした。
 市はそれにあやかり、町の中心に、水木しげるロードや水木しげる記念館を造り、観光スポットにした。
 市のマンホールも、彼の代表作「ゲゲゲの鬼太郎」のキャラクターがデザインされている。

鳥取県鳥取市のマンホール

鳥取県鳥取市のマンホール

 「傘がない」という、井上陽水の歌がある。とても恥ずかしい歌だとおもう。
 正確な歌詞は覚えていないが、おおよそ、「新聞で、若者の自殺についての記事を読んだ。だが、そんなことはどうでもいい、傘がない、女のところに行かなければならないのに」というものだ。
 今風にすれば、「ネットで、欧州の移民問題や、北朝鮮の核実験についての記事を読んだ。でも、そんなことは知ったことじゃない。スマホをなくしてしまった

もっとみる
鳥取県米子市旧淀江町のマンホール

鳥取県米子市旧淀江町のマンホール

 黒澤映画の名作「七人の侍」で、水車小屋が燃え盛るシーンがあるが、黒澤は、火の勢いに迫力がないと言って、水車小屋を6回立て直させ、燃やした。そうして、あの名シーンは生まれたのだ。

 鳥取県米子市旧淀江町のマンホールには、名水百選にも選ばれた、集落の湧水地と水車がデザインされている。

 この水車は、古くから生活に密着した道具として利用されていて、現在でも、精米精粉は、この水車で行われている。

島根県安来市のマンホール

島根県安来市のマンホール

 安来節は、島根県安来市の民謡であり、全国的に有名な、ひょっとこ顔で滑稽な踊りをする、「どじょうすくい」も安来節の一部だ。それが、市のマンホールのデザインにもなっている。

 「どじょう」とは、安来鋼を造るための原料となる、砂鉄採りの際の動作である、「土壌」をすくう、が由来という説もある。
 砂鉄による製鉄は、現在の近代的な製鉄の前では採算が合わず、今ではめっきり廃れている。ところが、安来では砂鉄

もっとみる
島根県松江市のマンホール

島根県松江市のマンホール

 懐古趣味というわけでもないのだが、武家屋敷が好きで、大切に保存されている通りを歩くと、清々しい心持ちがする。

 島根県松江市にも、約270年前の古い姿を今に伝える武家屋敷があり、市のマンホールのデザインに採用されている。

 この日は、本当は隠岐の島に行こうと思っていたのだが、松江駅前のバス乗り場で尋ねたら、冬は、日帰りのフェリーがないということで行かなかった。

 なので、隠岐産の白いかで行

もっとみる
島根県出雲市のマンホール

島根県出雲市のマンホール

 東京都中央区の日本橋人形町から、水天宮通りの方向へ歩いて行くと、頭上を、首都高速が覆いかぶさってくる。
 一日中薄暗いそこには、箱崎ジャンクションが浮かんでいる。この奇怪な建造物は、6号向島線、7号松川線、9号深川線が入り組んだ、複雑な構造になっていて、その形から、首都高速のヤマタノオロチとも呼ばれている。

 ヤマタノオロチ伝説がある島根県出雲市のマンホールには、なんだかドラゴンのようなヤマタ

もっとみる