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🦊 Black Spider-Man その②

 “Black Spiderman”は、人種や宗教、性趣向、家庭環境などを起因とするあらゆる差別からの解放を叫んだ歌である。曲名には、「スパイダーマンが黒人だったって良いじゃないか」という思いが込められている。

その歌詞には自身の幼少期の状況も歌われている。

Momma don't love me
Daddy don't love me
Wonder why I drown in the bubbly

ママは俺を愛さない。
パパも。
何でこんなに苦しいんだろう。

人種や家庭環境といった、理由なき差別によって地獄を見せられ続けたLogic。
だからこそ、その歌詞は僕たちのすぐ隣まで降りてきて、強く背中を押してくれる。

I don't wanna be black, I don’t wanna be white, I just wanna be a man today
I don't wanna be a Christian, Muslim, gay, straight, or bi, see you later, bye

黒人になりたいわけじゃない。白人にも。
ただ、「人」でありたいんだ。
キリスト教徒にも、イスラム教徒にも、ゲイにも、ストレートにも、バイセクシャルにもなりたく無い。
さよなら。

Logicはあらゆる差別を嫌う。ただの人でありたい。
ただの人として色眼鏡を掛けずに接し合おう。
そんな強い気持ちが、歌詞から伝わってくる。
Logicは鋭いメッセージと現実をリズミカルに歌詞に盛り込むのがとても上手いんだろう。

Make me wanna pull up with the, with the gat in the glove like
I just wanna be free

銃を隠しとかなきゃならない。
自由を感じたいだけなのに。

差別を受ける者は、いつどこでどんな事件に巻き込まれるかわからない。誰も守ってくれない。
銃を持ち歩くことが、ただ自由を感じるのに必要なのである。そんな生々しい現実が、スパイダーマンというテーマで書かれた曲に語られている。

2019年、映画「Spider-Man:Into the Spider -Verse」が公開された(日本公開)。

Logicの思いが通じて、かどうかはわからないが、その主人公はマイルズ・モラレスという、黒人の父親とプエルトリコ系の母親から生まれたバイレイシャルの少年であった。
正統なスパイダーマン世界のパラレルワールド扱いではあるものの、有色人種がスパイダーマンとして主役を張るのは、スパイダーマン映画史上初のことであった。

2020年5月、アメリカ国内で黒人差別反対運動に火をつけることとなる、あの「ジョージフロイドさんの死亡事件」が起きる。

その後、2020年11月にはマイルズを主人公としたPS4向けゲーム「Spider-Man:Miles Morales」が発売となる。
そのゲーム内には「Black lives matter」の文字もあり、明確に黒人差別に対する反対意思を表示している。
マイルズは、単に街を飛び回る「親愛なる隣人」であるだけでなく、肌の色という謂れのない差別からの解放を目指すシンボルとして機能しているのである。

▲ゲーム内のBlack Lives Matterの文字

Black Spidermanをめぐるカルチャー形成は、まだまだ現在進行形である。
Logicが主張したことや、ジョージフロイドさんの死が直接的にスパイダーマンをblackにしたかどうかは、わからない。(マイルズの初登場自体は2011年)
だが間違いなく、人種や、差別といったものから自由になるための運動の一筋の光になっている。

Spider-Man should be black.

kou

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