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【物語のネタ切れに悩む方必見】ストーリーメイクの鉄則!(2012年4月号特集)


もしも……だったら、が鉄則

 「ストーリーが思いつかない」という声を聞きます。そして、そのあと、「才能がないから」という言葉が続きます

 しかし、書く意識を持って探せば、ストーリーのタネは誰にでも見つかります。
 「何かいいネタはないか」と常に探していれば、「これは使える!」という気づきは必ず得られます。この段階ではまだストーリーのタネに過ぎませんが、タネ自体なら二つ三つと見つけることは簡単です。

 ひとつ鉄則があります。それはふだんはあたりまえと思っていることに妄想を加え、「もしも……だったら」と考えてみることです。

 たとえば、家の前に病院がある。「もしも、この世から病気がなくなれば」というのは多くの人の願いだと思いますが、これを飛躍させて、「もしも、病気を吸い取ってくれる人がいたら」と考える。スティーヴン・キングの『グリーンマイル』ですね。
 あるいは近所に墓地があり、「もしも、幽霊が出たら」ではちょっとありがちですから、もう少し飛躍させて「もしも、自分が幽霊であることに気づいていない幽霊がいたら」と考える。これは『シックス・センス』のアイデアですね。

 どうでしょう。そんなに難しいことではないですね。ドイツの作家ノヴァーリスも言っています。
「仮定は網である。網を投げてみたまえ、そうすれば、おそかれはやかれ、何かかかるだろう」

言葉遊びから着想を得る

 かつてシュルレアリストたちは、何人かが集まり、事前の打ち合わせなしに主語や動詞などを書いて持ちより、変な文章を作るという遊びをしました。その最初の作品が、一九二五年にアンドレ・ブルトンたちが作った「甘美な・死骸は・新しい・酒を・飲むだろう」です。

 これを応用し、言葉遊びでストーリーのタネを見つけてみましょう。
 まずは、全く関係のない言葉を二つ挙げます。できれば、異種の言葉がいいですね。「犬」と「タンス」とか。そして、この二つを組み合わせます。
「タンスを背負った犬」
 カタツムリみたいな犬です。なんでそんなことになったんだ! と考えると、ストーリーが浮かんできますね。
「犬のタンス」
 犬用のタンスに、犬は何を入れるのでしょう? やっぱり骨でしょうか。
「タンスの中に犬」
 タンスを開けたら、なんとそこに犬がいた! これも物語になりそうです。
 ロシアフォルマリズムのシクロフスキーは、このように言葉の意味を変えていくことを異化と呼びました。この異化も着想法の定番のひとつです。

「一枚の絵」から物語を作る

 牧野節子先生の新刊『童話を書こう!完全版』の中に、「一枚の絵」から物語を作った実例が紹介されています。

いちばん物語を思い浮かべやすいのではないかと私が思っているのが、「絵」である。小さいときから私は、絵を見てお話をあれこれ想像する、ということをしてきた。(中略)
美術館に行って、一枚の絵にひかれたとき。画集を見ていて、一枚の絵に目がとまったとき。私はそこから一つの物語を書くことができる。そしてそれは誰にでもできることなのである。もちろん、あなたにも。
私は創作の講義で「一枚の絵から」という授業をしている。何枚かの絵を提示し、そのなかから受講生に好きなものを選んでもらい、物語を書いてもらう。その際、受講生にはこんなことを伝えている。
*その絵を、物語の挿絵として考える。
*絵のなかの人物、背景、小道具をフルに活用させるのもいいし、そのうちの一つだけに焦点を絞ってもいい。
*絵に描いてあるもの以外のものや人を登場させてもいい。
*枠のなかに描かれた情景だけでなく、その奥の広がりを想像する。

(牧野節子『童話を書こう!完全版』)

絵画やイラスト、ポスター、写真、歌詞には、背後に物語を感じるものがあります。それならば、逆にそこから物語を紡ぎ出してやろうという発想ですね。

リメイクという発想法

多くの作家が古典を題材にした作品を残していますが、ストーリーが思いつかない人には、民話、神話、名作のストーリー(の骨格だけ)を借りるという手があります。たとえば、こんなふうに……

特集「ストーリーメイクの鉄則」
公開全文はこちら!

https://koubo.jp/article/25444

※本記事は「公募ガイド2012年4月号」の記事を再掲載したものです。