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中国古典に見るお酒についての教えと伊達政宗の失敗(『詩経』小雅・賓之初筵)

今回取り上げるのは『詩経』小雅・賓之初筵篇からの言葉。

言うべきに匪ずんば言う勿れ、由うべきに匪ずんば語る勿れ
(読み:イうべきにアラずんばイうナカれ、シタガうべきにアラずんばカタるナカれ)

『詩経』小雅・賓之初筵篇

言わなくても良いことは言ってはならない、道理に合わないことであれば人と語ってはいけない、という意味。

お酒の席での振る舞いについて述べたものになります。

口は災いの元ということですね。

そろそろ3月末ということもあり、年度末や新年度に合わせた飲み会が増えてくる時期だと思います。

私はお酒が飲めないので飲み会は正直憂鬱です。。

ですが、同僚や新しい方とお話しする機会でもあるので、勇気とやる気を振り絞って参加し、烏龍茶を飲みながら話を聞く側に回ります。

お酒といえば「酒は百薬の長」という言葉がありますが、これは『漢書』が出典です。

酒は百薬の長なり
(読み:サケはヒャクヤクのチョウなり)

『漢書』食貨志

お酒はあらゆる薬の中で最も優れたものである、という意味です。

当時の衛生状況を考えると、消毒ができるアルコールは「飲んでよし」「傷に使ってもよし」みたいな感覚だったのでしょう。

さて、そんなお酒ではありますが、飲み会が盛りあがってくるとみなさん割と口が軽くなりがちな気がします。

場の雰囲気とお酒に飲まれるからでしょうか。

油断すると、仕事や上司への不満がポロッと口に出てしまったり、言わなくても良いことを口走ってしまったりする可能性があるので、注意が必要です。

私は素面なので「お酒の場だし・・」と思って聞き流すのですが、どこでだれが聞いているかわからないですからね。

『十八史略』にも、お酒には注意するよう記載があります。

後世必ず酒を以て国を亡ぼす者あらん
(読み:コウセイカナラずサケをモッてクニをホロぼずモノあらん)

『十八史略』夏后氏

後世には必ずお酒が原因で国を滅ぼす人がいるだろう、という意味です。

現代なら「身を滅ぼす」と置き換えた方がわかりやすいですね。

お酒で失敗する事例は歴史上も色々ありますので、何事もほどほどが良いということなのかもしれません。

有名な戦国大名の伊達政宗も、お酒の飲み過ぎで失敗したことがあります。

伊達政宗は元々お酒が大好きなのですが、ある日酔った際に刀の鞘で部下の頭を殴ってしまったそうです。

酔いが覚めてから自分のしたことに気づいたそうで、部下に謝罪の手紙を書いています。

部下にきちんと謝るところに、伊達政宗の器の大きさを感じますね。

これは口ではなく手が出た事例ですが、飲み過ぎには気をつけたいところです。

言うべきに匪ずんば言う勿れ、由うべきに匪ずんば語る勿れ
(読み:イうべきにアラずんばイうナカれ、シタガうべきにアラずんばカタるナカれ)

『詩経』小雅・賓之初筵篇

お酒の席では口に気をつけなさい、という教え。

『詩経』は中国最古の詩集で、『書経』『易経』『礼記』『春秋』と合わせて「五経」と呼ばれています。

「四書五経」の「五経」です。

『詩経』のルーツを辿っていくとめちゃくちゃ古いのですが、現代に伝わっているのは孔子が一度編纂し直したものなので、約2500年ほど前のものになります。

そんな古い時代からお酒に関する注意がされているということは、きっと古代の人もお酒で口が滑って失敗したことがあるのでしょう。

そう考えると現代とあまり変わらなくて面白いなぁと感じます。

お酒を飲む機会が増えてくる時期なので、飲み過ぎには注意したいですね。

私は烏龍茶で頑張ります!


中国古典が初めてという方には、分かりやすい現代語訳・原文・解説で楽しく読める「ビギナーズ・クラシックス」シリーズがおすすめです。


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