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映画感想文)マッシブタレント〜ニコラス・ケイジに捧ぐ、強烈過ぎる愛〜

(内容に関わるネタバレばかりなので、未視聴の方は是非ご覧になってからお読みください。)


 落ち目の俳優という表現への遺憾の意

何が落ち目なのか私には一切全く理解出来ないのだが、ニコラス・ケイジはここしばらく落ち目だったらしい。出演作の興行成績が振るわなかった。出演作が駄作だった。へー、そんなのどうだっていいんだけどな…。だってニコラス・ケイジが映画に出てればそれで私は嬉しいので…。というか人が金を時間を労力を心血を注いで作り上げた作品に対して駄作とか軽々しくこき下ろすなど、どういう神経をしていれば出来るのか、全く理解出来ない。そもそも100本を超える映画に出られる、オファーが来る俳優に対して何を言ってるんだろうかと思うが。

ニコラス・ケイジの魅力〜シャーマン演技法について〜

マッシブタレントの中でも何度か単語が出てきた「シャーマン演技法」。私に言わせると「演技法を何一つ知らない素人(私)が見ても何故だか惹きつけられ魅入ってしまう謎の魅力」だと感じるのだが、それはともすれば霊的なヴィジョンであるとか瞑想や天啓等からしか得られないものなのかもしれない。それを評してニコケイはシャーマン演技法と名付けたのかもしれない。あまりに観念的に過ぎるのでもう少し分析してみると、「“演技”という枠を超越したもの」と言えるだろうか。その映画の中で「役を演じている」のではない。今回のマッシブタレントで言えば「そこにニック・ケイジが居る」のだ。(シャーマン演技法について検索した所、実際ニコケイがシャーマン演技法について説明しており、大体私の解釈と一致していたので私は嬉しい気持ちで満たされた。)

 ニコケイは本当はマッシブタレントに出たくなかった(でも出ることを選んでくれた)

本題のマッシブタレントだが、最強に最高の作品だった。何しろこれほぼ実写じゃん?本当に本来の意味での。
ニコケイが何回もオファーを断ったとかいうのも笑ってしまう(ごめん)が、監督が何度も熱烈なオファーをして、終いには直筆の手紙を送ったというのだから、本当に監督はハビだったんだなと思う。

ニコケイが出たくなかった気持もわかる。某Xで感想を検索したら「ようこんなのに出演できるなニコケイは頭大丈夫か」みたいなつらい感想もあったんだが、ニコケイはそう思われるかもしれない(ともすればナルシストっぽく見えてしまう可能性はある、というか作中でもそういう風に演じなければならなかった訳だが、出来ることなら観客にそんなふうに見られ、思われたくないじゃんね)事なんて十二分に理解してたから「出たくない」言うたんやんけ。それでも監督が拝み倒したのよ。ニコケイは優しいからそれに絆された訳よ(私の思い込みだが)

マッシブタレントのすげーーーーーーーー所

・映画の中でひたすらハビとニコケイがこれから作る映画について語ってる訳だが、それ自体が「マッシブタレント」の構想である。入れ子になってる、というんだろうか。すごい、すごい、と何回も見てしまう。

・美しいカメラワークや壮大な曲がかかると「ハビがこれを選んで指定したんだなあ」みたいな優しい気持ちで見ることができる。

・登場人物の長ったらしい状況説明ゼリフを「あ〜ハビが作った台詞だからな、はいはい」みたいな生温い笑いと共に聞くことができる。

というか、上記は多分「そのように見えるように」監督とニコケイが作って、ペドロ・パスカルとニコケイが演じたんだよな…………これはもうほんまにやべーーーーーーー作品なんよ…。
また、この作品にはニコケイ好きなら「あっ!」と思ったりニヤッとしたりする過去作のシーンが無数に織り込まれている訳だが、多くのコラムでそれは既出なのでここには列挙しない。ただ、それらをすべて用意、準備したトム・ゴーミカン監督に心からの盛大な拍手を贈りたい。ブラボー!!!!

個人的に好きなシーン
・長くだらだらと喋るのは苦手だと言っているニコケイに長くだらだらと喋るシーンを演じさせている所
・薬のキマッている所
・オタ部屋
・ニッキーと会話している時のニコケイの顔、ニッキーの口許(ザ・ロックの時が割とこんな口許だったような…?)
・冒頭では皺の多い、くたびれた、覇気、生気の無い「落ち目の俳優」のニコケイが、崖のシーンから肌のハリ・ツヤすら変わり、シャーマン演技法的に言えば何かが降りてきたような、打って変わった、スイッチの入った状態になる。それを画面からありありと感じることが出来る。感じさせてくれるニコケイの凄さ
・表情も仕草も、すべてが画面の中で完璧で、画になっている。「演技している俳優」がそこに居るのではない事。

 ペドロ・パスカルのニコケイ愛

実際のペドロ・パスカルもニコケイを大好きだってのがほんとにまた最高で…。オタ部屋でのクッションをぽんぽん、とする優しい手付き…。ニコケイと一緒にいる時のひたすら嬉しそうな顔…。マッシブタレント関連の2人のインタビュー記事検索してもほんまニコニコしてて、胸がいっぱいになる…。良かったね…。

「俳優を辞めちゃ駄目だ!!!」って言う時の、ハビの真剣な顔。
「そんなの世界を突き放してるのと同じことだ!!」(注、台詞うろ覚え)と言う時の悲しそうな顔。
ああ、この監督はほんとうに、ただただニコケイに、これを伝えたくてこの映画作ったんだな、ってストレートに胸を打つのだ。

ニコケイが、ニコケイの出てる作品がどんなに素晴らしいかを、これでもかこれでもかこれでもかと織り込んで見せてくれる。そしてきっと複雑な思いで一杯だっただろうに、というか多分その思いすら作品の雰囲気に調和させてしまうニコラス・ケイジの懐の深さ。

 ニック・ちょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおカッケージだぜ!!!!!!!!

大好きな俳優に、やめないでくれ、大好きだ、あんたは最高だ!!!!!!!、と、作品をまるごと使って叫び続けてる映画を、本人に出てもらって撮れた監督本人はどんなにか本望だろう。ニコケイが今どんな風に思ってるのかはわからないけど、私としてはニコケイは果報者だなと思うし、その監督の熱意がミリでも伝わってくれてたら良いなと思った。

パンフを今通販してるところなので、読んだらまた追記するかもしれない。答え合わせ出来るのが楽しみだ。

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