ゴンゲ様の話
ゴンゲサマは神楽舞の組毎に一つずつある、木彫りの像です。
獅子頭に似ていますが、少し違います。
いまだにご利益があります。
新張の八幡杜の神楽組のゴンゲサマと、土渕村五日市の神楽組のゴンゲサマは争ったことがあります。
その争いは空を割り、大地を揺らしということはありませんでしたが、お互いの意地をぶつけた激しいものでした。
がんがんごんごんと頭をぶつけあったのです。
そして、新張のゴンゲサマは負けて、片耳を失ったのでした。
「片耳のゴンゲサマ」
今も片耳のない新張のゴンゲサマを見て、子供がそう言ったのでした。
新張のゴンゲサマは今もその姿を見せ、舞うので誰もが知っている話です。
ゴンゲサマの霊験は火にあります。
八幡の神楽組、附馬牛村に行ったときに宿を取り損ねたので、貧しい者の家に泊まりました。
五升枡を伏せ、その上にゴンゲサマをすえ置きました。
皆が寝ているときにがつがつと音がしました。
「何の音だ」
皆は何が起きているのか分からないので不安になりました。
「ゴンゲサマが火を食っているぞ」
その声を聞き、皆がゴンゲサマを見ました。
がつりがつりとゴンゲサマが道端の火を枡の上から飛びあがり飛びあがり食っていたのでした。
子供が頭を病んだら、頭をゴンゲサマにかんでもらいます。
聞き伝える昔の話でございます
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