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【SPOT紹介】Second Rooms

当記事は過去に京都のカルチャーを発信するウェブマガジン『アンテナ』内で

公開したものと同内容のものを挙げています。


阪急東向日駅を下車して徒歩2分。FORUM東向日の3階に位置するライブカフェがSecond Roomsです。現在のお店の前身であるライブカフェが閉店したことをきっかけに、当時からのスタッフであり、今ではお店の代表である木村さんがなんと約1ヶ月という短期間でお店を作り上げました。

『ライブスペース』と『カフェスペース』といった二面に渡る営業形態がこのお店の特徴です。カフェスペースに足を踏み入れると目に飛び込んできたのは白い壁に飾られた絵の数々。すべてSecond Roomsに訪れたお客様から繋がったアーティストさんの作品です。作品は定期的に入れ替わり、また新たなご縁が繋がれていくそうです。

カフェメニューには料理人のこだわりが光る『本日の一品』をはじめ、美味しそうな写真がズラリと並んでいます。中でも人気が高い看板メニューは『オリジナルカレー』『から揚げプレート』『本日の一品オムライス』とのこと。お昼時のライブやアーティストの打ち上げにもフードメニューは大好評です。

ライブ運営は「まずは楽しんで出演していただくこと」を大前提として基本的にはイベントごとに出演アーティストのターゲットを絞ってブッキングを組まれています。

「この場所がきっかけで音楽を始めてもらえたら嬉しい」と語る木村さんの語り口がとても印象的でした。果たしてこのような音楽への熱い想いはどこから来ているのでしょうか。木村さん自身も17歳の時に音楽に突き動かされ音楽を始めたひとり。ソロ、バンド、弾き語りと音楽活動の経験があり、現在はギターの弾き語りで出演者としてステージにも立っておられます。

お店の代表、音響そしてブッキング責任者であり、アーティストでもあるからこそ、演者と観客の気持ちを最大限に汲み取ることが出来る。こんな木村さんによって運営されている音楽愛にあふれたお店だから、このお店に合った人の好いお客さんが日々沢山集まってくるそうです。帰った後も「こんな場所に出逢えて良かったな」と心から思える、憩いのライブカフェをぜひとも体感してみて下さい。

INFORMATION

【住所】〒617-0002 京都府向日市寺戸町西田中瀬3-4 FORUM東向日1(3F)

【定休日】 不定休

【営業時間:カフェ】 平日 16:30~23:00(ラストオーダー22:30) 休日 11:30~23:00(ラストオーダー22:30)

【営業時間:ライブ】 開催イベントにより異なる

【メール】 secondrooms@live.jp 24時間受付

【HP】 http://www.ilfmusic.com/secondrooms.html/



(interview)

お客様にとって身近で2番目に大切な場所であってほしい

——オープンした経緯を教えてください。

元々僕は今のお店の前身であるライブカフェで音響、運営、ブッキング担当として働いていたのですが、2013年の3月にそのお店が閉店することになったんです。

だからといって僕の中で、お店を完全に辞めるという選択肢もなく、むしろこのタイミングで独立をしようと思いました。「これまでのお客さんに迷惑をかけないように」といった想いがとても強く、物件探しとブッキングを早急に進めて約1ヶ月間でSecond Roomsとしてのプレオープンまで形にしました。

——「あなたの2番目に大切な場所でありたい」といったお店のコンセプトにはどういった想いが込められているのでしょうか。

最初に店名を決めるときからこのコンセプトはあったんです。英単語単体でみると文法的には間違っているのですがRoomsのsはあえて記しています。きっと多くの人にとって一番大切な場所は自分の家だと思うんですよ。そんな中「2番目に大切であってほしい」といったコンセプトを掲げることで『店側の想い』が必ず宿るのではないかと思ったんです。

この場所はライブハウスというよりはライブカフェ、ライブルームであるので、部屋のようなアットホームな雰囲気にも自然と繋がっていると思います。「ライブハウスはちょっと……」と敬遠されるのではなく「ライブやってるから行ってみよう」といった身近さを大切にしたいと思い名付けました。

——大きな特徴として、ライブスペースとカフェスペースと二面に渡ってお店を運営されていますが、こういった構想は最初からあったのでしょうか。

実は防音施工をする構図の関係でたまたまカフェとライブスペースが分かれたんですよ。最初にお話ししたようにオープンするまでが本当に短期間だったので、僕が書けない図面を全て書くところからお店の構想づくりが始まって、機材や備品も同時並行で揃えていきました。

なので、無我夢中で準備を進めていく上での偶然の重なりが幸に転じて今の形を生み出してくれたのだと思っています。逆に半年間とか1年間とかの長い期間かけて練った状態だとこのような形になっていなかったと思うので、結果的に良かったなと思っています。

——ライブスペースとしての空間作りに何かこだわりはありますか。

ステージの真っ白な壁にはこだわりました。真っ白の壁=演者様の奏でる音でステージを染めていただく。そこで始めてSecond Roomsのステージは完成するといった意味を込めています。

ステージの構図を決める際に「装飾や色が入った方がいいんじゃない」といった意見もいただいたりはしたんですけど、やはりこれは僕の強いこだわりですね。シンプルな白いステージにすることで観客のお客様にもより集中して演奏を聴いていただけるのではないかなと思っています。

——お店を新たに始める過程で「これだけは絶対に」といった条件は木村さんの中にありましたか。

「生ドラム、生ピアノありきでライブが出来る場所」という点です。前のお店でもドラムと生ピアノを置いていたので、このポイントは僕が独立してお店をオープンさせる上での絶対条件でした。そうでなければ某ライブカフェ時代からの演者様に来ていただけないと思ったので。結果、当時から引き続きSecond Roomsに出ていただいている方も多いです。



ライブ初心者でも大歓迎。演者様の成長を見届けたい


——以前のお店から引き継いでいるイベントはありますか。

『飛び入りライブ』です。一般的な飛び入りライブって「ひとり何曲、何分ステージに出演できます」といったスタイルで各自順番に演奏していく形態だと思うのですが、当店では少し異なります。

「この楽器のパートが足りないから入って!」とか「私入りたいです!」といった形で、たまたまその場で出逢った方がその日限りのバンドを自然と結成してライブをするということが本当に多いんです。

僕個人としてもセッションが大好きなので自然とこういった形が出来上がっているのが嬉しいですね。その場で誰がどういった形で演奏に入ってくるのかワクワクすることも当店の飛び入りライブの楽しみのひとつだと思っています。

——飛び入りライブを観ていて演者さんの様々な成長過程をダイレクトに感じることも嬉しいですよね。

最初は曲を1曲演奏することさえも難しかった方がライブを重ねる毎に「オリジナル曲が出来るようになった」というような報告が聞けたときは本当に嬉しかったです。飛び入りの場合は楽器が出来ない人でも、歌のみで参加も出来ます。そこで音楽に目覚めて音楽を始めていただけたら本望ですね。

メジャーシーンを目指して実力を底上げしていくライブスペースももちろんとても大切だと思うのですが、この場所は音楽を始めるきっかけだったり、ライブへの第一歩を踏み出してもらえる場所であって欲しいとも思っているんです。

——やはりお店全体としても幅広い世代の方に出演していただくことが理想なのでしょうか。

お子様が音楽を始めるきっかけ作りになれたらという願いが僕の中にあるんです。

また、ご高齢の方もライブに出ていただくことで、例えばボケ防止であったり、指先を動かすといった毎日の生活に何かしらのプラスの効果を与えられたらなと思っています。

他のライブハウスさんだと出演出来るハードルが割と高く設けてあって、それは他のライブハウスさんの強みだと思うのですが、当店の強みは幅広い世代の方に出ていただけることなので、そこは今後も強化していきたい部分ですね。ここはやっぱりライブバーというよりあくまでライブカフェなので、より気軽にお客様にご来店いただける環境を心がけています。




僕も音楽に救われたひとり。だからこそ、音楽を始めていただく喜びを演者様に感じて欲しい。


———「この場所が誰かにとって音楽をはじめるきっかけになれたら」といった想いを先程お話しいただきましたが、木村さん自身が音楽をはじめたきっかけはどういったものだったのでしょうか

僕自身も音楽に救われちゃったんです。あるアーティストさんの映像に衝撃を受けたことがあって。この出来事がきっかけで僕は音楽を始めることになり、少しずつ自信を持てるようになったというか。それまでどこか縮こまっていた自分に「もっといろんなことしようよ」といった何かに挑戦する勇気やきっかけをくれたのだと思っています。

このように音楽を始めたことで得るプラス効果を僕自身も知っているので、まずは上手い下手は置いておいて音楽を始めていただく喜びをSecond Roomsで演者様に知って欲しいという気持ちが人一倍強いですね。

———ずばりその衝撃を受けたアーティストさんとは?

尾崎豊さんです。“太陽の破片”という楽曲のたった1分間の総集編映像で僕の中に衝撃が走りました。なので、その1分間がなかったら今の自分はいないですね。


———木村さんが音楽から得た喜びは「ステージに立ってるときに得たのか」「音楽を始めたときなのか」「ギターを弾けるようになったときなのか」など何かきっかけとなった出来事は覚えていますか。

やはりギターが弾けるようになったことが最初の喜びでしたね。ただ、ギターがただ弾けるからといって曲が弾けないとステージにはもちろん立てないので、曲がきちんと弾けて人前で初めて演奏出来た時にさらなる喜びを得たのだと思います。

この「初めて人前で演奏出来たぞ」っていう純粋な気持ちってとても大事だと思うんですよ。皆さんにもこの喜びを知ってもらうためにライブに挑戦して欲しいですね。

———オープンしてもうすぐ4年を迎えられるにあたって、今後どういったお店にしていきたいですか。

まずは「こんなお店ですよ」って知ってもらえるように、より認知度を上げることですね。京都市内はやはりお客さんにとってライブに行くのに選ばれやすいんですよ。そんな中、向日市で開催しているイベントとして、より選ばれるようになることが課題かなと思っています。そのためには『音の良さ、接客、飲食』をさらに強化していきたいです。

中でもドリンクは、メニューの種類を豊富に取り揃えています。こだわりをひとつ挙げるならばビールをキンキンに冷やしたジョッキで入れていることです。やっぱりライブとドリンクってセットじゃないですか。当店はカフェでもあるのでしっかりドリンクにも満足して楽しんでいただきたいな思っています。

———これまでお話しいただいた空間作りやドリンクに対しての想いなど、ライブスペースを運営するにあたっての強いこだわりを感じました。来店された方にどういった想いを感じていただきたいですか。

気持ち良くなって帰っていただきたいと思っています。でもライブスペースとしてそういった部分を時には無くさないといけないなとも思っていて。例えば、高みを目指している演者様にはライブ後にガツンっと店側がその人のために意見を伝える事も必要だと感じているんです。これからの課題はそういった部分かなと。

あと、演者様にはステージでいかにベストポジションで演奏してもらえるかといった部分も大切にしています。特にリハーサルの音作りは念入りに行い、最高のパフォーマンスをしていただきたく思っております。

今、お話してきたようなお店側としての葛藤や愛を根底に持ちつつ、これからも試行錯誤を重ねていきたいと思います。そして「ご来店いただいた方の2番目に大切な場所」になれるよう成長していけたらなと。

———どんどん変化していっているお店だからこそ、お客様やアーティストさんが訪れやすい環境なんだなと感じました。今後もより沢山の人に愛されるお店であって欲しいなと思っています。お話を聞かせていただきありがとうございました。


Taxt by 稲本 百合香

Photo by 岡安 いつ美(http://itsumiokayasu.com/)
























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