『小さき者たち』を読んで
こんにちは、ことろです。
今回は『小さき者たち』という小説の感想を書いていきたいと思います。
『小さき者たち』は著・粕谷知世(かすや ちせ)、装画・とびはちによるファンタジー小説です。
第六章まであり、主人公が九歳の頃から十八歳までを描いています。
主人公は、モチカ。
男の子です。
死者の家の家守の息子です。
父が家守で、母は幼い頃に亡くなっています。
二人だけで死者の家に住んでいました。
死者の家というのは、都から送られてくる屍体を丁重に弔い、供物を捧げ、声を聞いて慰めるための場所です。
家守は、その家を守る人のこと。
死者の声を聞き、供物を捧げます。
また悪霊にならないよう見守る役目もあるようです。
モチカは自分もいつかは家守になって、父のように死者の家で暮らすものだと思っていました。
しかし、あるとき都から来た祖母に半ば強引に引き取られ、都で暮らすようになります。
都では、十五歳になると<試しの儀>を受けることになっています。
祖母が引き取ったのも、この<試しの儀>に間に合うように勉学を積むことをうながしたかったからです。
モチカはずっと死者の家に居たので、世間知らずでした。
都のこともよく知らず、歴史も知りません。
祖母はロディヨナ家の人間だったため身分が高く、孫であるモチカも必然的に身分が高かったのですが、そのために学問所へ行き身分に相応しい学問を身につけることとなりました。
しかし、なかなか身に入らないモチカ。
周りの人間たちはモチカを忌み嫌って遠ざけたり、罵ったりするので、仲間ができず、学問所にもロディヨナ家にも居場所がありませんでした。
ある日、親戚の子と仲違いしたときに、賢者の館という場所に迷い込みます。
そのときはチュンゴという従者に止められて中に入ることはできなかったのですが、豊穣祭の夜に忍び込もうと街に繰り出します。モチカは従者もいないたった一人で外を出歩けているのが久しぶりで嬉しかったのですが、すぐに警邏人(警察)に見つかってしまいます。
そのとき助けてくれたのが、バタンとシパンでした。
バタンは幼い頃に死者の家で会ったことがある少年で、偶然の再会を果たすのでした。
それからというもの、学問所には行かず賢者の館へバタンとシパンに会いに行っては遊んだりして過ごしていました。勉強はしていません。
しかし、いつかは祖母にもバレてしまいます。
こってり怒られたあと、学問所に行かずに家庭教師を雇うことになったモチカは、賢者の館に行くことを禁じられました。
モチカの出自は複雑で、祖母が言うには本来家守は家族を持ってはいけない身なのだそうです。しかし母が父に恋をして、モチカが生まれた。本来モチカは生まれてはいけない子でした。
そのためにも、モチカは勉学に励み<試しの儀>で力を示すことによって、このロディヨナ家の人間であることを証明しなければいけない。そうしないと、存在してはいけない身なのです。
また、<試しの儀>のあとには授けの大神からの試練が待ち受けていることをロディヨナ家当主から知らされました。
そこそこ身分の高いモチカならば、その試練に合格すれば神官になるか雲上人になって神王陛下に仕えることもできるようになる。
そして、最も名誉なことは、その身を授けの大神に捧げること、つまり献身(生贄となり斬首)することでした。その際どんな願いも叶えられると言われています。
モチカは残り少ない期間で勉学に励み、<試しの儀>を受けられる歳になりました。
この物語は、献身という雨乞いの生贄制度がテーマになっています。
神様がいて、神様に1番近い神王陛下がいて、その方々がいるから生贄を出すことで本当に雨が降ると考えられてきました。
事実、旱魃が2年以上続くことはなく、それは神様のおかげだと信じられてきました。
しかし、3年経っても旱魃が止みません。
これはどうしたことかと問題になりますが、当然生贄が足りないからだと、人々は思います。
建前上は自ら進んで献身に立候補し、その命を捧げるのですが、本当はみな命が惜しく捧げたいものなどいないのが現状でした。
しかし、この生贄制度に問題があるとは思わない人々。
何の因果か、モチカやバタン、シパンも献身人になってしまいます。
主人公が殺されるのをハラハラしながら待つ物語でもあるのですが、命とは何なのか、神とは何なのか、宗教や飢餓、幸せや憎しみとはどんなものかということが語られている物語になっています。
最後は一応救いはあるので、ぜひ最後まで諦めずに読んで欲しい物語です。
ファンタジーとはいえ、この地球にもありそうなお話になっているので、今生きながらえている私たちの幸せをもう一度噛み締めることができると思います。
最後にモチカはどうなったのか、仲間たちはどうなったのか、神様や神王陛下は、この国の旱魃はどうなったのか、ぜひ読んで確かめてくださいね。
小さき者たちというタイトルの意味も、ぜひ知ってほしいです。
さて、いかがだったでしょうか?
それではまた、次の本でお会いしましょう~!
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