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登場人物の”中の人”になる方法

前回の投稿が5月31日なので、丸6日間もnoteを更新していなかったんですね……。これは私が今年の1月1日にnoteを始めて以来、最長の空白期間だと思います。

間が空いてしまったのは、ある映画の脚本の初稿を書いていたから。
……というと、「ああ、新しい作品に着手し始めたってことね」と思われるかもしれませんが、そうではないのです。
一般に脚本家が「脚本の初稿」を書き始めるまでには、いくつもの段階を経ます。
具体的には、
1)プロット(大まかなストーリーの流れ)を作る。
2)ハコ書き(構成表のようなもの)を作る。
の2つを行うのですが、プロットもハコ書きも、プロデューサーや監督との打ち合わせを挟みつつ、数回の直しを行うことが多いです。

ここまで来てやっと脚本の初稿を書き始めます。
つまり、脚本の初稿を書く頃にはすでに、ストーリーの展開はおおよそ決まっている、ということですね。
「だったら、脚本初稿の執筆は、それほど大変じゃないのでは?」と思った皆さん! これが、なかなかそういうわけにはいかないんです……。

プロット作りからスタートし、脚本が決定稿になるまでの間で、私が一番気力、体力を消耗するのは、脚本の初稿執筆時です。
プロット、ハコ書き、脚本のそれぞれを書く時の自分の状態を改めて見直すと、
・プロット、ハコ書きの時は、神様視点(物語世界を俯瞰しているイメージ)
・脚本執筆時は、主要登場人物視点(作品内キャラクターの”中の人”になっているイメージ

という違いがあります。
つまり、脚本を書く時だけは「別人格になっている」という感覚なんですよね。おそらく「自分以外の人物になろうとすること」には、相当のカロリーを必要とするのでしょう。

登場人物の”中の人”になって、それぞれのシーンにふさわしいセリフを生み出そうとする時、最大の武器は「感情移入」だと思います。
まずは書き手である自分自身と、描こうとする登場人物との「共通点」を見つけ出し、そこを入り口にして、登場人物の中に潜り込んでいくイメージです。(なんとも抽象的な言い方ですが……。)
逆に、登場人物の特徴の中で、「自分とは全く相いれない部分」も、”中の人”になるための重要な手がかりになるんですよね。
違いを認識することで、かえって対象への理解が深まる、ということだと思います。

この「自分との違い」を使って他者を理解し、感情移入していくというアプローチは、日常でも使えそうな気がします。
もしあなたの身近に、「理解不能」と切って捨てたくなるような相手がいるなら、この方法を試すと、少し見方が変わるかもしれません。
逆に、自己分析にも応用できそうな気がします。
つまり、
「人は、自分との差異で他者を定義づけ、他者との差異で自分を定義づけている」
ということかな。

#日記 #エッセイ #コラム #エンタメ #シナリオ #脚本
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