写経のススメ(脚本家の場合)
仕事中に行き詰ったり、心がざわついたりすると、よく写経をします。
といっても、私にとっての「写経」は、般若心経を書き写すとかではなく、向田邦子さんの脚本や小説を手書きで書き写すこと。
「こんな作品が書けるようになりたい!!」
と感じる人の原稿を、コツコツと書き写すと学びがある……という説もありますが、私はほぼ「おまじない」みたいな気持ちで書き写して来たんですよね。
もしかしたら、これで上手くなるかもしれない。
なったらいいなぁ……ぐらいの期待感で。
ですが、ある時期から写経の方法をちょっと変えまして、それ以降は、
「あっ、これ効果ある」
と、感じられるようになりました。
確か冲方丁さんの著書で紹介されていた方法なんですが、
「書き写す際に、元の文章を見ながら書いてはいけない」
というのがポイント。
「一文ずつ覚えて、書き出す」ということを繰り返していくんです。
これだと、単に写しているのではなくて、その文章を自分が生みだしたかのような、疑似体験をしている感覚になって、「見ながら書き写し」の時より、いろんな発見があるんです。
「あっ、この文末の締めくくり方は心地いいな」とか、「こういうセリフを二つ三つ連ねると、テンポが良くなるな」とか……。
脚本や小説に限らず、エッセイとかも、憧れの書き手がいる人は、この方法で写経してみたらいいんじゃないかな?
「何となく好きだなぁ」というところから一歩進んで、「魅力の分析」ができるようになると思います。
私は今、原作モノの映画脚本を書いています。
今のところ過去作品はオリジナルの方が多く、原作モノは、書くための自分なりのノウハウがまだ確立し切れていないと思っていまして、あれこれ試行錯誤中です。
で、今回初めて「原作を写経する」ということを試してみているんですが、これ、なかなかいいかも。
企画の初期段階から原作は繰り返し読み続けてきましたが、写経をすることで、改めて原作が自分の中にインストールされているような気がします。
こうなると、「映画版においては、どこが絶対に外してはいけない要素なのか?」「逆に、どこは映画的でないので手を加えなくてはいけないのか?」といったことが判断がしやすくなる気がする……。多分。
まあ、脚本を書き終えてみないと本当に効果があるかは分からないですが、とりあえず「良いノウハウ発見!」と信じて、突き進もうと思います。
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