見出し画像

不安障害の朝に。

私が朝というものを憎むようになったのは、いつからだろう。
会社員だった頃の月曜日の朝のけだるさが、毎日続いている。
散々な悪夢を見た果てに、悪夢よりたちが悪い現実という夢に目覚める。
体温を持った布団に包まれて意識がたゆたう。この瞬間が一日の中で最も愛しく、だからこそ最も嫌悪する時間だ。最高は必ず終わるものだから。

もはや肉体となった布団から自分を引きはがしていくこの痛み。自分だけ重力が倍になっている。ついでに痛覚も倍だ。錆びついた全身が動くたびに軋んで神経をかき回す。押したら自分が消えるボタンがあったらとっくに押している。希望の朝なんてものは、私の人生に存在しない。あるのは絶望の朝だけだ。

起きた時から眠る時まで、不安もまた目覚めている。
四年ほど前から頭の中に棲んでいる全般性不安障害という病気だ。
そいつはすべてを監視している。脳内監視社会。まさにディストピアだ。
異常、異変があればすぐに警報を鳴らす。鳴らす。鳴らす。うるさい。
異常は正されなくてはならない。裏切り者は処分しろ!
そいつは警報と命令はしてくるが、対処は私の仕事になっている。
ほくろを発見しただけで、それはがんだった。
最悪のケースを想定しろ。
意識がある時はずっと最悪のケースに巻き込まれている。
たとえそれが10万人に1人が発症する病気でも、起こりうる可能性があれば100%なのだ。ガチャでも引くまで回せば100%と言ってるようなものだ。脳内で不安というガチャを引き続ける病気。それが全般性不安障害だった。

このゲームを終わらせるボタンを、私はまだ知らない。
警報を鳴らす頭に、身体を慣らすことなどできるのか。
朝は何食わぬ顔でやってくる。

朝よ、私はお前が憎い。

朝よ、私はお前を愛せる日が来るのだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?