我が文体について

 わたしの文体は世間一般として「難しい」部類にあたる。というのも、比喩を何重にも重ねたり、平生ほとんど目にしない難読漢字や、使用場面が限定的過ぎる語彙を惜しげもなく使用しているからだ。昨今文章表現において、抽象度の度合いが高いと「文学的」「詩的」などという評価が下されるが、わたしの文体に至ってはその境域からも外れていることだろう。
 単純に悲しくて泣く人間のことを描写するにあたり、わざわざ「無思慮の炉に溶かされているのを、暗雲は気づいて、次に起こすべき事の執行を躊躇しているのだった」などと書かないだろうし、これが長いと判断して「雫は忘れ去られた」とも書かないだろう。
 これほど他人の理解を拒むような表現は、いつの世にも淘汰されて然るべきだとされるだろう。

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