惨憺たる高校生時代、辻潤という彼岸へしがみついた。
高校時代を振り返ってみれば、わたしには友人らしい友人は一人もいなかったように思う。
当時人見知りは極端であり、集合の中での流行に馴染めぬゆえに、わたしは鴃舌であるかのようにみられていた。
辻潤を知ったのは高校三年生の時分であった。彼の「自分だけの世界」なるエッセイのある一句につよく惹きつけられたのである。
「手から口へ」の生活者。辻の生活が如何に窮乏で満ち満ちていたかを表現するのに、この一句よりほかに言葉は必要とされないであろう。そしてなにより、この「手から口へ」の