娘と私の信頼貯金

前回記事で藤原竜也をネタにしたからお詫びの気持ちも込めて映画版カイジを観た。

最後、香川照之演じる利根川とのカード戦で見事勝利したカイジ。カードがすり替えられていると読み策を講じた利根川だったが、カイジは裏の裏を読みすり替えもどきを演じていた。どうして!と混乱する利根川にカイジが放ったセリフ。

簡単だよ。俺は信頼したんだ。

過去何度も利根川に騙されたカイジ。彼の優秀さを認めていた。そして、その優秀さゆえの驕りを討ち心理戦を制したのだ。このシーンを観ながら私は思わず「信頼貯金!!」と叫んでしまった。

突然なんの話?そこぶる前置きが長くなったが、今日は信頼貯金について書こうと思う。

娘を信頼できない母

私には子供が2人いる。繊細で穏やかな兄と、おてんばな妹。このおてんば娘の育児に日々手を焼いている。

息子は乳幼児期、良くも悪くも常に私にしがみついていたので「目が離せない」ということが無かった。ところが、同じ腹から生まれたはずの娘。

やるなということを、やる。
行くなというと、飛び出す。
食べるなというものを、食べる。
開けるなという扉を、開ける。
派手に散らかす。こぼす。壊す。割る。


文字通り常に「目が離せない」。そんな彼女を私は全く「信頼」していない。見守るを通り越し、悪事を働かないよう監視している。見張られている彼女もそれに気づいており、私が目を離した隙に悪事を働く。そして、犯行後は満面の笑み。しかもその笑顔が可愛いときたもんだ。

悪魔的だ!…いや、悪循環だ!

この悪循環を断ち切るヒントになるかもしれないのが「信頼貯金」だ。

信頼貯金とは?

信頼貯金は、『7つの習慣』という本に登場する言葉。『7つの習慣』は、スティーブン・R・コヴィー博士によって書かれた本。愛読書だがなかなか分厚いのでここでは詳細は割愛…。

信頼貯金とは、銀行にお金を預けたら増えるのと同じように、人間関係における「信頼」にも預入や引き出しがあるという考え方だ。

これまで私は、私が彼女を信頼できないのは、彼女が悪事を働くからだと思っていた。信頼貯金は相手の心の中に預け入れをすることができるという考え方。つまり、口座はそれぞれが所有している。では、彼女の口座に私は預け入れがある状態だろうか?自分自身の彼女に対する言動を振り返ってみると、
●頭ごなしに怒る
●先回りしてダメダメ光線を出す
●たまに濡れ衣を着せてしまう

信頼貯金を引き出しまくっており、残高があるかどうかすら怪しいことに気づいた。こりゃまずい。気を取り直して口座を新規開設せねば。

娘と一緒に口座開設

娘にもわかりやすいようイラストにして、信頼貯金について説明してみた。信頼っていうのはだね…というのを説明するのにのび太くんに登場してもらった。

どんなときに信頼貯金が増えるのか、どんなときに減るのか、例を出しつつ説明。私とあなたの間には見えないブタの貯金箱がある。お互い嬉しいことがあると貯金箱には信頼という名のキラキラコインがどんどん貯まる。でも、あなたが約束を破ったりすると、ブタさんも泣いちゃって貯まったコイン(信頼)が流れていっちゃうんだよ。私がガミガミ怒るとあなたは悲しいでしょ。そのときもブタさんからコインが減ってくの。だから、私もあなたの話をちゃんと聞くようにするよ。

…とまぁ、かなり強引な意訳だけど、これにて私と娘の信頼貯金口座、新規開設完了。

最初は残高が可視化できるよう通帳でも作ろうかしらなどと考えたが、今のは預け入れ!今のは引き出し!と逐一言動をチェックされるのは双方しんどいので、話はこの1度限りにしてまず自分自身が預け入れを意識して行動してみることにした。

信頼はやる気に繋がる

『7つの習慣』の中には、信頼貯金の預け入れを増やす方法がいくつか紹介されている。

相手を理解する/小さなことを大切にする
約束を守る/期待を明確にする/誠実さを示す/引き出してしまったら素直に謝る

いきなり頭ごなしに怒らず、娘がどんな気持ちなのか理解するようにする。お願い事はわかりやすいよう具体的に伝えるようにして、守ってくれたらきちんとお礼をいう。些細な優しさを見つけて褒める。うっかり怒鳴ってしまったら謝る(たびたび謝っている)。

…そんなことを続けていたら、本当に少しずつだけど、娘の破天荒がマシになった気がする。単に彼女が年齢的に成長したせいかもと疑っていた。でも、あながちそうとも限らないぞという出来事が起きた。

信頼貯金の話をした数ヶ月後のある日。『これだけ』と言われた量を超えてオヤツを食べようと手を伸ばしかけていた娘が、すっと手を引っ込めた。いつもなら食べるのにと不思議に思い、どうしたの?と聞いたら、娘が一言。

「だって、ブタの貯金箱、減っちゃうでしょ」

イラストにして伝えたのが功を奏したのか、信頼貯金の話が彼女の記憶にきちんと残っていたようだ。オヤツを我慢できたこと、私の話を覚えていたこと、全部ひっくるめて褒めた。そしてふと、『7つの習慣』の中の以下の文を思い出した。

信頼ほど人にやる気を起こさせるものはない

もちろん、良いことをすることが点数稼ぎのようになってはいけない。だけど、約束を守ったり、優しくしてあげると、相手も嬉しいということ、反対に、約束を破ったり、人の気持ちを考えず行動することで、目には見えないけど失うものがあるということ、そのことがなんとなくでも娘に伝わっていると信じたい。娘、まだ4歳だけど。

せっかく開設した口座が破綻しないよう、私も引き続き娘とのブタの貯金箱を意識していきたい。

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