見出し画像

和歌・あなたと一緒に消えてしまいたかった

「白玉か何ぞと人の問ひしとき
露と答へて消えなましものを」
伊勢物語
(あれは白玉ですか?何でしょう?と愛しい人がたずねてきたとき、
あれは露ですよと答えて消えてしまいたかった)

逢うことが容易には許されない、
深窓の令嬢をやっと盗み出した夜。


月の光に照らされた露を見て
あれは何ですか?とたずねた姫。
逃げることに必死だったわたしは、
彼女に答えることができなかった…。


一晩を過ごすため
仮の宿に姫を安置し
わたしは外で見張りをした。


しかしそこには鬼がいて、
姫を襲いさらってしまった。


雷の音で姫の叫び声が耳に届かず、
朝が来て彼女を失ったことを知った…。


外の世界を知らないお姫様らしく、
露というものを彼女は知らなかった。

今思えば、なんともあの人らしく
可愛らしい問いだったことよ。


あの人を失って
こんなに悲しい思いをするくらいなら、
いっそのこと
あれは露ですよと答えて
一緒に消えてしまいたかった。


露のように儚く美しく、
あなたとともに消えてしまいたかった…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?