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北村薫

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北村薫「街の灯」

北村薫「街の灯」

北村薫さんらしい優しい雰囲気のミステリー

時代は昭和初期 上流家庭のお嬢様が謎を解く三篇のお話
ヒロインの英子は古き良き時代の女性といった感じで 清らかで理知的

三話目の「街の灯」がよかった
軽井沢の別荘に避暑に来ていた 英子や友人達やその婚約者
彼らが催した自作映画の試写会でひとりの女性が死んでしまう
その死の真相を解明する英子と運転手のベッキーさん

英子の友人の言葉

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北村薫「夜の蝉」

北村薫「夜の蝉」

人の悪意の恐ろしさを書いた二篇「朧夜の底」「夜の蝉」
やさしく清々しい「六月の花嫁」

「夜の蝉」が一番よかった 
姉妹の葛藤と愛が軸になっているが 胸の奥にずしりときたのは お姉さんの恋敵の行動
自分の欲しいものを手に入れるためなら何でもする 人を騙し陥れる お化けになってでも…
理性も常識も自分のプライドをも吹っ飛ばして感情の赴くまま生きる こういう人間も世の中にはたくさんいるんだろう
こわい

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北村薫「朝霧」

この本も やはり北村薫さんらしくやさしいのだが 『走り来るもの』の中のリドル・ストーリーにはぞくりとした

愛する妻の目の前で 浮気相手の男の言い出した賭けに乗る夫 
彼は目の前までライオンを引き付けて銃で撃ち倒さなければならない 
倒せれば賭けは夫の勝ち 
打つのが早すぎればライオンは倒せないし 遅すぎれば襲われるが 
その前に浮気相手がライオンを撃ってくれると言う 
だがその場合賭けには

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北村薫「秋の花」

北村薫「秋の花」

読み終わってあまりの結末に呆然とする

解かれた謎は痛ましい
本当にそこに救いはあるのかと問いたくなるよう

生きていれば
どうしようもないことは起きる
余儀ないことがある 無念もある
でも どんなことにも 救いはあるんだろう 
そう思いたい いや そう信じてる

人は生まれるところを選ぶことは出来ない。どのような人間として生まれるかも選べない。気が付いた時には否応無しに存在する自分

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北村薫「スキップ」

北村薫「スキップ」

よかった 読後感とても爽やか

17歳の真理子はある日突然42歳の真理子になってしまう
心は17歳 外側は42歳 夫もいて娘もいる
失われた時間はとても長い
私だったら いや 普通の女性だったら 一番楽しいはずの25年間を失くしてしまったら気が狂うところだ

でも真理子は実にひたむきに前向きに 「今」を生きていく 時には嘆きながら 苦しみながら それでも一生懸命歩く

真理子の夫は言う

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