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高橋琴麻呂
2020年5月9日 21:03
あしひきの山行きしかば山人の朕に得しめし山づとそこれ(「万葉集」巻⑳・4293)元正天皇『心遣い』険しい山を行けば山に住む その土地の人が私のためと木の枝で作った杖をお土産にくれた歩き慣れない私の事を気遣ってのことだろう土産はもちろんだがその心遣いこそが私には嬉しかった《巻20概要》万葉集の最終巻。この巻には東国から兵役にかりだされた「防人
2020年5月9日 21:00
春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ娘子(「万葉集」巻⑲・4139) 大伴家持『春苑にて』春の苑が夕陽によって薄紅に染め抜かれてゆく…そして桃の花の色を鏡のように映し込み照り輝く道にふと、立ち現れた一人の乙女それは、うつつの人か私の中の空想美人か…それとも、桃の精霊か《巻19概要》家持の歌日記のうちの1冊。この巻では家持の秀作が多く収めら
2020年5月9日 20:57
奈呉の海に舟しまし貸せ沖に出でて波立ち来やと見て帰り来む(「万葉集」巻⑱・4031)田辺福麻呂『舟を貸せ』奈呉(なご)の海には美しい波が立つことが多いという…そこに住む漁師よ奈呉の海に出るために舟をしばらく貸してくれそこに美しい波が立っているかと見て帰ってこよう【メモ】奈呉の海…現在の富山県射水市(いみずし)新湊(しんみなと)あたりの海《巻18
2020年5月9日 20:53
我が背子を 我が松原よ 見渡せば 海人娘子ども 玉藻刈る見ゆ「万葉集」巻⑰・3890 三野石守『松原にて』私の愛しい人を私が待つ 松原から見渡せばさんさんと降り注ぐ陽光の下この海で海女を生業とする乙女たちが珠もように美しい海藻を刈っている様子が見えている愛しい人さえ景色の一部にしてしまう美しい景色がこの松原にはあった《巻17概要》巻1~16が「
2020年5月9日 20:50
春さらば かざしにせむと 我が思ひし 桜の花は 散り行けるかも(「万葉集」巻⑯・3786)『美しい軌跡』春になれば私のものとして頭に挿してかんざしにしようと思っていた桜の花はもう、散ってしまった短い命を風に委ねて美しい軌跡だけを私の心の中にだけ残して散ってしまった《巻16概要》「有由縁雑歌」とあり、歌の全後に歌の元となった長い物語などが収められてい
2020年5月9日 20:44
武庫の浦の 入江の渚鳥 羽ぐくもる 君を離れて 恋に死ぬべし(「万葉集」巻⑮・3578)『君と離れる時』武庫(むこ)の浦の入り江の渚に住む鳥がその大きな羽で優しく雛を包み込むようにその腕で大事に大事に私を優しく包み込んでくれた貴方が海外に行ってしまうなんて…こんなにも大好きなにこんな離れ方をすると切なさと恋しさで私、死んでしまいそう…《巻15概
2020年5月9日 20:39
夏麻引く 海上潟の 沖つ渚に 舟は留めむ さ夜ふけにけり「万葉集」巻⑭・3348『光と共に』今日は海上潟の沖の渚に舟を留めようもう、夜は更けた明日の日の出を待ってまた船を漕ぎだそう潮風浴びて前へ、前へ…《巻14概要》東歌(あづまうた)と呼ばれる東国の歌を収める。庶民の労働歌として労働の際に歌われていたと思われる歌も収められている。当時の方言を垣間見
2020年5月9日 20:35
冬ごもり 春さり来れば 朝には 白露置き夕には 霞たなびく 風の吹く 木沫が下に うぐいす鳴くも「万葉集」巻⑬・3221『春風の吹く時』冬が季節の裏側に隠れ春がやって来たこの時朝は草木に珠のような白露が置かれ夕方には霞が棚引いているそして春風の吹く梢の下では鶯が綺麗な声で鳴いている《巻13概要》「雑歌」「相聞」「問答」「比喩歌」から成る巻。主に長歌(五七
2020年5月9日 20:32
我が背子が 朝明の姿 よく見ずて 今日の間を 恋ひ暮らすかも「万葉集」巻⑫・2841『想いを馳せきれずに』明け方に出勤してゆく愛しい貴方のお姿をよく見なかったから今日一日想いを馳せきれずに恋しさを募らせて暮らすことになりそう早く貴方に逢える夕方にならないかな…《巻12概要》「古今相聞往来歌」の下巻。巻11の姉妹巻。巻11に比べ、比較的新しい歌を収める。
2020年5月9日 20:28
新室の 壁草刈りに いましたまはね草のごと 寄りあふ娘子は 君がまにまに「万葉集」巻⑪・2351『其処の人』其処の人、其処の人遠巻きに見てないで新しく建てる家の脇に生える草を刈りにおいでなさいなそよ風に吹かれた草のように優しく貴方になびいてくる乙女にはどうぞ、思いのまま心も身体も通わせてください私たちは口出ししませんから…《巻11概要》「古今相
2020年5月9日 20:24
ひさかたの 天の香具山 この夕 霞たなびく 春立つらしも「万葉集」巻⑩・1812『霞から朧へ』神々しく鎮座する夕暮れ近い天の香具山に今、霞が棚引いているその様は天女が羽衣をまとうようで美しい…霞から朧へと名前が移り変わる時流れる風の片隅で私は春を感じていた《巻10概要》巻8と同じく四季分類されて「雑歌」「相聞」に分けられる。こちらは作者未詳歌を収
2020年5月9日 18:12
夕されば 小倉の山に 伏す鹿し 今夜は鳴かず 寝ねにけらしも「万葉集」巻⑨・1664雄略天皇『鹿に馳せる想い』夕暮れ時に小倉山に帰りし鹿は今夜は鳴かない妻を呼ぶこともなく寝てしまったのだろうかそれとも妻に逢えた安心感で早くも眠りに就いたのだろうかひとときその声を聞かないだけでその身を案じてしまう《巻9概要》「雑歌」「相聞」「挽歌」の三大部立を収め
2020年5月9日 18:09
石走る 垂水の上の さわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも「万葉集」巻⑧・1418 志貴皇子『春の喜び』岩に当たり柔らかな光を受けながら清らかな雪解け水が右へ左へ走りゆく山奥の小さな滝その上の斜面で若緑の蕨が芽吹く春になったのだな生きとし生けるものの活力が充満する暖かな春になったのだな《巻8概要》春夏秋冬に四季分類され、それぞれ「雑歌」と「相
2020年5月9日 18:07
天の海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ「万葉集」巻⑦・1068『天空の海を見上げて』天空の海に逆巻きながら雲の波が立っているそして、そこを伝い大いなる宇宙に住む誰かが漕ぐ月の舟が星の林に分け入って隠れてゆくのを今、この地上から見上げている《巻7概要》「雑歌」「比喩歌」「挽歌」で構成。575777の形式の「旋頭歌(せどうか)」も収められる