巻9巻頭歌:『鹿に馳せる想い』

夕されば 
小倉の山に 
伏す鹿し 
今夜は鳴かず 
寝ねにけらしも

「万葉集」巻⑨・1664
雄略天皇


『鹿に馳せる想い』

夕暮れ時に
小倉山に帰りし鹿は
今夜は鳴かない
妻を呼ぶこともなく
寝てしまったのだろうか

それとも
妻に逢えた安心感で
早くも眠りに就いたのだろうか

ひととき
その声を聞かないだけで
その身を案じてしまう


《巻9概要》
「雑歌」「相聞」「挽歌」の三大部立を収める巻。
柿本人麻呂歌集、田辺福麻呂歌集、高橋虫麻呂歌集など、先に編まれていた個人歌集からの採録が多い。
高橋虫麻呂歌集から採られた、既存の伝説を元にして詠まれた歌なども収められている。


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