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トンネルを抜けて見えるのは?英語と日本語の視点の違い【インターネットで学ぶ英語表現8】

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」。日本人なら誰もが知っている一文でしょう。川端康成の「雪国」の書き出しです。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」と聞いて描く景色(日本人の場合)


この文章を読んで頭に描くのは、トンネルを抜けて一面に広がる銀世界を車窓から眺める登場人物。車内にいる自分の視点で外の景色を見ています、よね?

ところが、英語圏の人たちには違う景色が見えています。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」と聞いて描く景色(英語話者の場合)


The train came out of the long tunnel into the snow country.

英語ではこんな風に訳されています。言語学の世界ではよく知られた話ですが、英語話者がこの文章を読んで描くのは、例外なく、トンネルから出てくる列車を上空から見た絵なのです。

生成AIに描いてもらう(英語版)


そこでふと頭に浮かんだのが生成AIの存在。彼(彼女?)は果たしてこの英文をどう描くのか。

画像生成AI(Microsoft Bing Image creator)でビジュアル化してもらいました。

そしたらやっぱり外から列車を見ていました。

The train came out of the long tunnel into the snow country.

生成AIに描いてもらう(日本語版)


一方、元の日本語をビジュアル化してもらうとこんな感じ。あ、あれ…?

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。


提供された4つの画像のうち、車内から外を見ている画像が1つもないどころか、3つは列車さえありません。

なぜなら、日本語では「列車」なんて一言も書いていないから。主語がないのです。

日本語は、自分を中心に話す場合、主語をすっ飛ばすという特徴があります。普段しゃべっていても、一人称(=私)を言わないこと結構ありますよね。何かを見て「来た!」「いたー!」と三人称(=誰)を省略することもしょっちゅう。

一方、主語がないと成り立たないのが英語。なので英訳は”The train”を主語に構成されています。描くイメージに違いが出るのもこれが一因です。

…ん、どういうこと?!と思う方は、こちらの書籍をどうぞ。

英語を学ぶ上で重要なこと:英語=日本語ではない

日本語について深く知ることも、実は英語を学ぶうえで役立ちます。「この英文、日本語にしたい」「この日本語、英語にすると何?」と思っても、多くの場合、英語⇔日本語へ単純に置き換えられません。視点まで違うのだから。「ここはどこ?」は"Where is here?"ではないのです。

ではまた来週。

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