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「自己肯定感」との付き合い方

2020年もたくさんの方からお話を聴かせていただきました。日本の、そして世界各地の方々との出会いに、心から感謝です。振り返ってみると、カウンセリング・コーチングを通して一番多く挙がったテーマは「自己肯定感」。今日は、私の考える「自己肯定感との付き合い方」について書いてみたいと思います。

自己肯定感とは

自己肯定感とは、「自分を信じる気持ち」「自分を好きな気持ち」です。「○○出来るようになれば、もっと自信がつくかも」「○○になれば自分を好きになれるかも」と、自己肯定感を上げるために努力をする方は多いのではないでしょうか。「いい大学に入れれば」「いい会社に入れれば/転職できれば」「試験に合格すれば」「もっと痩せれば」など、努力してそれが叶えば、もっと自信がつくのではないか、と。

確かに、努力をし目標を達成することで、自信は付くでしょう。頑張る→自己肯定感が上がる→もっと頑張る→もっと上がる、といいサイクルを回し続けることが出来れば、問題はないのかもしれません。

頑張りサイクルの問題点

ただ、これには2つの問題があります。
①人は常に頑張り続けられる訳でないこと
②比較の集団が変わると、簡単に自己肯定感が下がる可能性があること
です。

①は、一生を通じて常に頑張り続けるのは、物理的に無理だと思います。人間ですから、どんなに気をつけていても風邪を引いたり、体調を崩すことはありますし、どうやったってやる気が出ない時もあります。そして、結婚や育児、介護など、ライフステージの変化により、自分のための時間を殆ど持てない時期もあるでしょう。

そんな「頑張れない」「物理的に時間が取れない」時、それまで目標に向かって頑張っている自分のみを肯定してきた場合、ガラガラと自己肯定感が崩れる可能性があります。頑張れていない自分には価値がない、と。

②の問題は、ある集団で「トップ」でも、別の集団に行った途端にその「価値」が相対的に下がり、自己肯定感を失う可能性があることです。分かりやすい例では、日本で「東京大学」というと一目置かれるかもしれませんが、国外に出て世界の大学ランキングに晒されると、その価値も揺らいでしまうかもしれません。大学までは優秀と自負していたのに、「一流企業」に就職した途端、木っ端微塵に自信を打ち砕かれた、というお悩みを聴いたことも一度ではありません。

頑張って頑張ってせっかく築いた自己肯定感も、頑張れなくなったり、他の集団に入ると揺らいでしまう。とすると一体どうしたらよいのでしょうか?

2種類の自己肯定感

実は自己肯定感には2種類あります。ここまで話していたのは、「条件付きの自己肯定感」、そしてもう1つは「無条件の自己肯定感」です。

前者が「条件付き」なのは、頑張っている自分はOK、頑張っていない自分はNOT OKだからです。目標に向かって行動していたり、努力出来ていたらOKなので、「行動」に対する肯定感になります。

一方、「無条件の自己肯定感」は、頑張っている自分はもちろんOKなのですが、頑張っていない自分、ダメな自分もOK。つまり、自分の「存在」に対する肯定感になります。

頑張れない時こそ、自信をつけるチャンス!?

セッションでこのように2種類の自己肯定感の説明をして、「なので、落ち込んでいる/上手くいっていない今だからこそ、自己肯定感を上げるチャンスなんですよ〜」とお伝えすると、皆さん、一同にびっくりされます。笑「頑張れば自信がつく」という通念とは真逆なので、当然の驚きなのかもしれませんが。

失敗した時や頑張れない時、そんな時こそ、ありのままの自分を受け入れるチャンス!では、具体的にはどうすれば良いのでしょうか。

上手くいかなかった時、心の中でどんなことが起きているのでしょう?

「あぁ、、、失敗してしまった」
「何で出来ないんだろう」
「やっぱりまたダメだった」

そんな心の呟きに対し、いつもどんな反応をしていますか?

パターン①励ます⤴️

「大丈夫!なんとかなる!」
「また次、頑張ればいいから!」
「出来るはず!諦めないで!頑張って!」

パターン②責める⤵️

「ほんとに最低だね」
「いっつもダメだよね」
「わかってたでしょ?何でやらなかったの?」

パターン③流す➡️

「大したことないでしょ」
「しょうがないか」
「気にすること程のことじゃないし」

無条件の自己肯定感を育むには

こんな風に、上手くいかなかった時には、励ましたり、責めたり、流したりすることが多いのではないでしょうか?そうではなく、自分のありのままの気持ちをそのまま受け止めてあげてください。頭で瞬時に処理をせず、じっと心に意識を向けると、悲しさ、悔しさ、虚しさ、怒り、不安、恐れなど、ネガティブな感情がそこにはあるのではないでしょうか?

そんなネガティブな感情をそのまま受け止めるために、こんな風に心の中で自分自身に声をかけてあげてみてください。

「そうか。失敗して悲しいんだね」
「『何で出来ないんだろう』って落ち込んでるんだね」
「怒られるかも、って不安なんだね」

「自分の感情が分からない」という方もいるかもしれません。そんな場合でも大丈夫です。自分の心に浮かんだ言葉に、「って思ってるんだね」と加えてみてください。

「『あぁ、失敗してしまった』って思ってるんだね」
「『何で出来ないんだろう』って思ってるんだね」
「『やっぱりまたダメだった』って思ってるんだね」

どうでしょう?これならやってみれそうでしょうか?

ネガティブな自分をも受け止める大切さ

セッションでこんな風にご説明すると、「そんな風に、自分で自分の気持ちを受け止めたことは一度もなかったです」と仰る方が殆どです。ありがちなのが、自分を責めはしなくても、励ましてしまうこと。「大丈夫大丈夫、次があるから!」「次は頑張んなよ!」と励まして、気持ちを無理に切り替えようとしてしまうんですよね。もちろん、それで気持ちが切り替われば良いですが、励まされても全然気分は上がらず、どよ〜んな時もあるかと思います。そんな時は、「励ます」前に「受け止める」のステップを入れてみてください。その後の気持ちに、きっと変化があると思います。

「自分の気持ちに『寄り添う』というのが掴めない」とおっしゃる方もいます。そんな場合、目の前に「落ち込んでいる『自分の大切な人』がいる」とイメージしてください。そして「彼/彼女にどんな風に声をかけるだろうか」と想像してみてください。自分の大切な人が落ち込んでいたら、決して否定したり流したりせず、ただただその辛い気持ちに共感し、寄り添うのではないでしょうか。そう、「ただ気持ちに寄り添う」というのは既に知っている感覚だと思うのです。

自己肯定感との付き合い方

これがセッションでお話している「自己肯定感との付き合い方」です。自己肯定感を上げるためには、ネガティブな気持ちをそのまま受け止めればいい、とお伝えすると、「え?それだけですか?」と拍子抜けされる方も結構多いです。笑「でも、今までやってなかったことですよね?取り敢えず、思い付いた時に、このやり方を試してみるのはいかがでしょう?」と伺うと、「はぁ、まぁ、そうですけど・・・」と。こんな簡単なことで何かが変わるかもしれないとは、なかなか信じてもらえません

確かにこれをやったその日から、人生が劇的に変わる!という訳ではありませんし、全ての問題が夢のように解決する訳でもありません。でも、自分の気持ちを否定せず、ありのままを受け止めることを続けていると、無条件の自己肯定感が育まれてきて、「自分の行動」と「自分の存在」を分けて考えることが出来てくると思います。今までは、ちょっと上手くいかなかっただけで、人格まで否定されるような恐怖を覚えていたのに、「行動」と「存在」を分けられるようになると、1つの行動の失敗はあくまで1つの失敗、と冷静に捉えられるようになります。「行動」が上手くいかなくても、「存在」への肯定が、セーフティネットのように自分を受け止めてくれるようになるかもしれません。

「あれ?気づけば、自己否定が減ってきたな」「そう言えば、失敗しても気持ちを切り替えるのが早くなってきた気がする」「何だかあまり人目が気にならなくなりました」など、その後のセッションで変化を伝えてくれる方もいらっしゃいます。一方で、あまりに穏やかで静かな変化なので、こちらが水を向けない限り、変化に気づかない方も。

最後に、私自身のこと

2020年はコロナ禍で世界が揺れ、私の住むフランスでも2度のロックダウンが実施されました。日本に帰国も出来ないし、先が全く見えず、安心安全が足元から揺さぶられるとはこういうことか、と実感しました。そんな状況でしたが、「ネガティブな気持ちをそのまま受け止める」という方法が、随分と私を助けてくれた気がします。腹が立った時、悲しい時、やりきれない時も、心の中で「ウンウン、そうだよね。そう感じるよね」と精一杯自分で自分に共感する。がっしりと受け止めると、いつのまにかその感情も気にならなくなっていたことが多かったです。「感情くん」の立場からすると、「ま、ちゃんと受け止めてもらえたし、分かってもらえたし、これ以上、居座る必要もないか〜。またね〜」という感じで、役目を果たしたら、さらっと退出してくれるのでしょうか。

以前は常に、「もっと頑張らないと」「もっとやらないと」という気持ちが強く、根底には「今の自分じゃダメだ」「変わらないと」という思いがありました。○○を達成すれば何か変わるかも、○○になれば自信がつくかも、という思いで、いつも頑張ってないといけない気がして。でも、頑張っても頑張っても終わりはなくて、なかなか苦しかったなぁ。。。

今より楽に生きていくために、「自分自身と仲良くなること」はとても大切なのではないかと思っています。自分で自分の気持ちを否定しないこと、自分で自分の気持ちを受け止めること。そして何より、自分が自分の味方であること。そうやって、ネガティブも含めた「ありのままの自分」を受け止められるようになれば、知らず知らずのうちに何かが変わってくるかもしれません。

この記事が、誰かの何かのヒントとなりますように。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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