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自死は悪か尊厳か




自死は悪なのか


母親が27歳で自死を選んだ。
わたしはずっと母親の呪縛から
解ける事ができずにいた。

元々聞かされていた死因は
「心不全」だった。
が、絶対に違うと思い(謎の勘)
20歳を目前に控えた19歳の冬
児童相談所に持っている情報を
全て開示してくれと直談判しに行った。
結果としては何も分からず
ただただストレスが溜まっただけで
モヤモヤが増えて終わった。


保管された死体検案書


いつかのタイミングで、
遺体発見まで数日かかった
とどこかで誰かが言っていたのを
ふと思い出した(恐らく祖母あたり。)

数日かかったということは
いわゆる変死扱いになる。
死因を明らかにするため変死体は
必ず司法解剖に回される。
そして死亡診断書は5年の
保存期間が定められているが
司法解剖の死体検案書は
保管期間が自治体によって変動する。
という事を知っていた(元医療従事者)。
そのため大塚監察医務院に電話をし、
「○○(母)の死体検案書はありますか?」
と聞いたところ保管されていたので
即答で「取りに行きます」と答え
手続きに必要な物を聞き電話を切った。


絶望の答え合わせ


観察医務院に到着後、本人確認をし
「おかけになってお待ちください」
とソファーに案内された。
待っている時間がすごく長く感じたが
なぜか変に冷静だったので
「20年近く経ってるし探すの大変だ」
と思っていたのを覚えている。

しばらく経ってから職員さんが
1通の封筒を持って来た。
その人の顔があまりに真っ青で
「倒れるのかな?」と心配した程。
顔は青いわ表情は暗いわ黙ってるわで
なかなか封筒を渡してくれなかった。

ようやく口を開いたと思ったら
「お部屋へ案内します」だった。
受け取って終わりだと思っていたので
思わず「は?」と言ってしまったが
もうその人は体の向きがわたしではなく
"部屋"の方向を向いていたので
とりあえず黙って付いて行った。



「落ち着いて聞いてください」


通された部屋で待っていると
気の良さそうなおじさんが入ってきた。
なぜ別室に通されたのか、
封筒を持ったお兄さんはどこへ行ったのか
この人は誰なのかとか疑問は
たくさんあったがひたすら黙って
座っていたわたしにおじさんは
「落ち着いて聞いてくださいね」
とドラマでしか聞いたことが無い
言葉をかけてきて心底驚いた。

「こちらが司法解剖の結果です。」
とおじさんが渡してくれ
ようやく封筒を受け取る事ができた。
と同時に"開けろ"という圧を感じ
とりあえず開封して中身取り出した。

封書の中には司法解剖の結果、
おおよその死亡推定日時、死因が
記載されていたが死因の欄は
"精神薬多量摂取"だった。


何が彼女を追い詰めたのか


渡された死体検案書には
胃の内容物も記載されていた。
死後1週間程経過していたにも関わらず
行間なく1枚まるまる埋めつくす程
大量の薬品名が書かれていた。
正直引いた。ドン引きした。
病院で働いていた頃にも
見た事ないくらい多量の薬品名が
びっしりと書かれていた。
溶けてしまった薬もあるだろうが
それでも紙1枚を埋め尽くす程の量。
それをおじさんが説明してくれていたが
ドン引きしすぎて話の内容は
完全に頭に入ってこなかった。

ちょっとODしようとかの量じゃない。
致死量を遥かに超える致死量。
当時の彼女は確実に死を見てた。
何を考えてあれだけの薬を飲んだのか、
何にそこまで追い詰められていたのか、
子を持つ母という自覚は無かったのか、
思いとどまる事は無かったのか。
おじさんの言葉が入る隙がないくらい
わたしの頭の中は今までにないくらい
色々な事がよぎりまくったが
死人に口なしとはよく言ったもので
聞きたくても死人は答えてはくれない。



自死は悪なのか


発達障がいの支援員をやりながら
難病指定の患者さんの支援ができる
資格も取得しているのだが
資格を取るにあたり講義で
難病指定されている患者様の
嘱託殺人事件について何度も
ディスカッションをした。
日本では本人の意思であろうが
呼吸器設定を0にする事は違法だ。
神奈川県で起きた一家内
嘱託殺人連鎖は講師をやる時には
必ず話している程考えさせられた事件だ。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患う
息子から死にたい殺してくれと言われ続け
ノイローゼになった母が呼吸器設定を
0に設定して呼吸を止めた後息子は死亡。
殺人罪として裁判にかけられた。
温情裁判として有名な介護殺人もまた
尊厳死か殺人かで意見が分かれた。
かたやALSを始め治療法の確立していない
患者様の本人の意思に基づく安楽死が
合法的に認められている国もある。


海を飛ぶ夢 という映画があるが
尊厳死がテーマとなっている。
生死感、本人の感情、周りの反応
見る人によって色んな意見が
出るだろうがまさに今回のタイトル
自死は悪か尊厳か、を考えさせられた。


自死は悪か尊厳か


出産直前まで病院に行かず
ほぼほぼ駆け込み出産、
母子手帳には子の名前の記載無し、
生後0日からの育児放棄
終いには自死を選んだ母に対して
わたしはひたすらに恨みしかない。
人だとすら思っていない。
遺された側の怒りは凄まじい。
「育てられないなら産まないで」
と何度も思ったが伝えようが無い。
が、恐らく海を飛ぶ夢のように
段階を踏み合法的に認められている
国で自死を実行していたら
結果は恐らく違ったのだと思う。
(今回の母のような突発的な自死は
 安楽死の自殺幇助の要件は満たしていない。
 が、精神疾患等により長期に渡る
 判断能力の欠如で認められる例は
 ごく稀だが実際にあるとの事だった。)
母については本当に色んな感情が動く。
恨み、怒り、そして落胆。
なぜ産んだのか育てなかったのか
聞きたい事はたくさんある。
児童養護施設で育って良かったと
今は言えるが「普通」とは違う
社会的養護下で育った19年間
頭の中で何度も既に死んでいる
母を殺して恨んでは泣いた。
結論から言うと遺された側の
わたしは自死は悪だと思っている。
だが、わたしも軽率に死にたいと
思う人間である事は確かだ。
実際に行動に移すか移さないかの
違いはあれど死にたくなる
気持ちは分からんでもない。
死にたい、消えたい、
居なくなりたいとぐるぐる考え
手首を切っていた過去もある。
だが死んだら母に負けると思っていた。
当時は手首を切る事はわたしにとって
ストレスの発散、生きている実感。
死ぬ事はないと分かっていた。
今も死を考える瞬間はあれどその度
だいすきな人達の顔がよぎる。
楽しい事したいしやりたい事もある。
泣いて笑って足掻いてそれもまた人生、
といつか思える日が来ると信じている。
とはいえ常に足掻いているし
これから先も足掻きながらもがきながら
辛さやしんどさを抱えてその度
死にたいと思いながら生きていくのだろう
とも思うが少なくともわたしは
母のように自死をする事はない。
恐らくその根底には遺された側の
怒りや不満、悲しみ、しんどさ、辛さ
ぐっちゃぐちゃの真っ黒な感情を
体感しているからだろう。


命を大切に


死にたいと思った時、
そんな薄っぺらい言葉は
何の意味も持たない。
わたしが生きる意味は
母への対抗心、そして何より
だいすきで大切な周りの人達の存在。
ひたすらにみんな愛しているし
愛されている実感をくれる
大切すぎる周りの人達がいてくれる
おかげでわたしは生きられている。
乳児院、児童養護施設、自立援助で
関わってくれた数え切れない職員を始め
いつも近くで支えてくれる友人達や
尊敬する人達が常に側にいてくれる環境で
本当に周りの人達に恵まれていると思うし
更に27歳になった今も大切な人が
増え続けているわたしは世界で1番
運が良いと思っているし幸せ者だと思う。


わたしはあなたにはならない。


いつもnote1本書く時間は30分~1時間。
サクッと書いて公開しているが
このnoteを書いている最中は
何度もどす黒い感情に飲み込まれ
中断しながら再開してを繰り返し
3日くらいかかったし1本あたり
2500~3000字で書くようにしてるが
今回は既に3500字を超えている。

そしてこのnoteを公開するにあたり
母に対して本当に恨みしかないのだと
改めて痛感したのと同時に自分が
すごく揺れ、それにも腹が立ったので
書き上げた今、手元にある
死体検案書にライターで火をつけた。
検案書は今現在目の前で燃えている。

母へ。わたしはあなたにはならない。
すきな人達と笑って泣いて生きていく。
怒りも悲しみも辛いもしんどいも
嬉しいも楽しいも幸せも全て
さらけ出して生きていく。
どれだけ辛くてもしんどくても
側にいてくれる大切な人達が
たくさんいてくれるから
もう自分の感情からは逃げない。
大切な人達とたくさん話して
笑って泣いて生きていくし
あなたには1mmも感情を
使いたくないと思ったので
あなたの存在はこのnoteを以て
抹消します、さようなら。


いつも支えてくれる人達へ。
側にいてくれてありがとう。
ポンコツなわたしを
受け止めて愛してくれて
生かしてくれてありがとう。
幸せをくれてありがとう。
笑わせてくれてありがとう。
涙を我慢しなくて良いのだと
教えてくれてありがとう。
何より出会ってくれて
本当にありがとう。
だいすきなみんなに出会えた事が
わたしにとって1番の財産です。
全力で、本当にありがとう。



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