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デザインの法則ーその5

余白は「余った部分」ではなく、活かすもの

多くの人は、余白を余った部分と捉えがちです。余白にどんな効果があるのかを知らないからです。そこで今回は、余白の効果と重要性について解説していきます。デザインの法則5つ目は「余白を活かす」つまり、間隔を開けるというものです。

デザインの法則4つ目では、関連する要素にまとまりを持たせる(グループ化する)ことが大事という話をしましたが、まとまりを持たせるとどうなるかと言うと、自ずと間隔が空いて余白ができます。この余白こそが重要な働きをしてくれるのです。(デザインの法則その4参照)

おちいりがちな失敗例

分かりやすい例を取り上げます。次の画像をご覧ください。この画像の中から、アルファベットの「U」という文字を探してください。何秒で見つけられますか?

アルファベットの例1

おそらく多くの方は、5秒くらい、早くても3秒くらいはかかったのではないでしょうか。色とりどりのパーツがある中で、目的のモノを見つけるのは非常に時間がかかるものです。

これがもし、広告やチラシ、ホームページなどのWEBページだったらどうでしょう?仮に、あなたが何か事業をやっていたとして、その事業の売りとなる商品や、キャッチコピーが「U」だったとします。広告がこのようなデザインだったら、顧客(ユーザー)はあなたの望み通りに「U」に着目してくれるかは疑問です。おそらく、他の派手な色のものが気になって、それに気を取られてしまうでしょう。

たまに、このような派手なデザインを見かけることがあります。例えば、スーパーの特売チラシです。どれも文字と数字の羅列だけで、余白がほとんどなく、ゴチャゴチャしたデザインですよね。目のやり場に困るケースがあります。ただし、少しでも安い商品を買いたい消費者なら、きっと端から端までじっくり見てくれるでしょう。

スーパーのチラシ例

しかし、もしあなたの事業がまだ世に知られていなくて、商品の魅力も知ってもらえていない状況で、顧客(ユーザー)が、このような広告やWEBデザインを見たらどうでしょう?端から端までじっくり見ることはなく、ちょっと気になるところだけ見るというのが大半ではないでしょうか。

派手な色使いにしなくても、目立たせられる

では、レイアウトのデザインをどうすればよいか?その答えが分かる画像をご覧頂きたいと思います。次の画像のアルファベットの中から、何秒で「U」を見つけることができますか?

アルファベットの例2

おそらく、大半の人が1秒で「U」を見つけることができたのではないでしょうか?そうです、どんなにゴチャゴチャしたデザインであっても、余白があることによって、要素を目立たせることができるのです。

素人がよくやってしまうデザインは、目立たせたいものに派手な色使いをして目立たせる方法です。しかし、この方法だけでは限界があります。そんな時に、余白を作って主役(売りとなるもの)を引き立たせれば、色に頼らず目立たせることができるのです。

背景(脇役)は主役を引き立たせるためにある

この効果を活かした例を上げます。劇場やコンサートでは、よく会場は真っ暗ですよね。暗い舞台上に、主役だけスポットライトを当てると、観客はすぐに主役を見つけることができます。裏方(背景)は主役より目立ってはいけないので、舞台の裏方さんは黒子頭巾をかぶり、黒い衣装でいます。このように、背景の色が目立たないよう黒一色にして、スポットライトを浴びた主役を引き立たせているのです。

これは白と黒が逆転している例ですが、レイアウトのデザインにおいても、背景が白とは限りません。黒や青など様々です。つまり、余白というのは「背景」のことを指しています。この背景にあたる部分を、どれだけ活かすかによって、デザインに差がでます。

ただし、劇場のように主役以外を見えなくして、背景を全てなくせと言っている訳ではありません。適度に背景を作る必要があるということです。適度な余白は見やすさに繋がり、要素を「明確に見せる」効果があります。重要だからといって、何もかも派手にするには限界がありますが、派手な表現をしなくても、余白を作ることで「目立たせる」ことができるのです。余白は「余った部分」にせず、活かしましょう。

最後にメッセージ

以上がデザインの法則ついての解説です。これはデザインの基本原則になるものです。この原則を知らずにコツやテクニックだけを学んでいても、そのときの状況が変わったら応用できなくなります。

法則1~4をまだご覧になっていない方は、ぜひ、島津寿制作デザインの教科書というマガジンをご覧ください。これは、デザイナーだけでなく、企画書や提案書など、資料作りをしているビジネスパーソンにとっても、役立つ内容になっていると思います。

法則を知れば、レイアウトデザインに悩んでいる方は、何を基準にレイアウトすべきかが分かるようになります。デザインはセンスで作るものではなく、意図して設計するものです。デザインの教科書が、少しでもみなさんのお役に立てましたら幸いです。

(次はデザイン手法の原則について解説します)

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