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ケアーズ・ハイ介護職員
介護職員はいつでも、フロア全体が見渡せるような立ち位置で見守りをしなければいけない。
死角を作ってしまうと、危険を未然に防ぐことができないし、何か事故があった時に気づかない、それに後から的確な報告をすることができない。
ひとりの利用者さんに対してひとりの介護職員が対応できればいいが、ここはキャバクラでもなければスナックでもない。いや、キャバクラでもひとりの客に対しひとりのキャバ嬢がつくとは限らない。ご指名が入ればすぐにどこかに飛んでいってしまうし。(キャバクラには行かないけど)
んなこたぁーどうでもよくて。限られた介護職員の人数で、複数名の利用者さんの見守りを行う。
これがまた、大変なのである。
その複数名の利用者さんは、それぞれ健康状態、運動機能がまるっきり違う。
杖をついている方もいれば、歩行器であるかれる方もいる。車椅子の方、もちろん認知症の方。デイサービスに来ることが楽しくて機嫌がいい方もいれば、「なんでこんなところに連れてこらられなくちゃいけないんだ!」と、ごっつ不機嫌な方もいる。
そして、皆、順番には動いてくれないのである。
杖をついて歩けるけれど見守りの必要なおじいちゃんが、トイレに行こうと席を立った。と同時に、歩行器なしでは歩けないおじいちゃんが歩行器無しでどこかに行こうとしている。と同時に、認知症の方はフロアを徘徊し、と同時に、機嫌の悪いおばあちゃんが口喧嘩をするという始末。
「よし!みんな一旦落ち着こう!」
「とりあえず座って話を聞こうではないか!」
そうして治まるなら、誰か治めてくれ。
言葉は悪いが、モグラ叩き状態になる。笑けてくる。
これを「ケアーズ・ハイ」と呼びます。とは、、誰も言っていないので、ぼくが言うようにします。
で、食事介助してる時も、フロア全体が見渡せるようにして目の前の利用者さんの食事介助をする。
認知症の利用者さんの横に座り、スプーンに主食とおかずを乗せ口に運ぶ。
そうした食事介助と同時に、ぼくの目線はフロア全体を見守る。
目の前の動作が、ある程度予測できる範囲で行動できたことを確認して、目線をフロアの方へ移す。一瞬、利用者さんからは目を離すことになる。
ひとつのことに集中しているようで、いくつもの動作や思考を張り巡らせていく。これも「ケアーズ・ハイ」と言えよう。
その一瞬、目を離した隙に。
利用者さんは、おしぼりを口に入れようとしていた。というか、もうシガんでいた。おうおう、ちょっと待ったんかい。
やっぱりですね、ものごとって幾つも同時にしちゃいかんのですよ。
選択と集中っていうじゃない。ひとつのことに意識を向けないと、足元すくわれるし、スプーンの上に載せた食事も床に落ちてしまうのです。
これも人生の学び。
「ケアーズ・ハイ」は、己の慢心でしたとさ。
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