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こんな時間になにをしているんだ。いっぱい広げましたなぁ。
一度のめり込むと気の済むまでトコトンやってしまう集中力には脱帽だ。ただ飽きっぽいところもあるが、まぁ何かに夢中になっているなら効果はあった。

「このまま水戸黄門の再放送を見て一生を終えるつもりですか?死に際に思い出すのは、見飽きたであろう紋所でいいのでしょうか。母よ、何か夢中になれるものを探してみてはいかがか。いや、決して水戸黄門を否定しているわけではないのだよ。でも、毎回構成とオチは一緒ですよ」

今年のはじめ、母親と鍋を食べ終わったあとに話をした。自分はどう生きて行くのか、そして母はどう生きて行くのか。
隠居生活を送るにはまだまだ早い。毎日デイサービで高齢者と接しているせいか感覚的だがいつまでも人生を楽しむには、人に与えられたものではなく、自ら探し出した何かがないと、とてもじゃないが老後という膨大な時間を過ごせなくなってきている。身内だからこそ少し強めに問うことができる。「そのまま死んでいくのか?」と。できることは問いだけで、あとは自分がどうするかだ。いつだってそう。自分で決めて行かなくてはいけない。もちろん自分もいろいろ母に打ち明けた。

「己書(おのれしょ)。そういえば昔、一度やってみたいと思ってたの」生まれ変わったような顔つきで話を聞かせてくれた。
ならばさっそくAmazonで書籍を買おうじゃないか。環境の準備なんかはいくらでも手を貸しますよ。

そうして、今。皆が寝静まった頃に道具を広げて、背中を丸めて筆を握っているのである。

これは、母とぼくの介護エッセイ。

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