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『僕は悪者。』

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高校生の「俺」には友達がいない。クラスメイトからは無視され気持ち悪がられていた。「俺」は「俺」のことを無視するクラスメイトのことを頭の中でいたぶり殺すことで精神の均衡をなんとか保…
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『僕は悪者。』 かんたん梗概&リンク集

『僕は悪者。』 かんたん梗概&リンク集

梗概

高校生の「俺」には友達がいない。クラスメイトからは無視され気持ち悪がられていた。「俺」は「俺」のことを無視するクラスメイトのことを頭の中でいたぶり殺すことで精神の均衡をなんとか保つ毎日。そんな惨めな人生を自殺により幕を引こうと考えるが最後にクラスの中心人物を一人殺してから死ぬことにする。しかしそこに一人の転校生が現れた。その女子生徒は「俺」がイジメられていることを悟り「俺」に手を差し伸べる

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『僕は悪者。』①

『僕は悪者。』①

俺は悪者になりたい。
ヒーローは嫌いだ。あんな奴現実にはいやしない。
最初は敵なのに喧嘩の後は仲間になるとかそういうのも大っ嫌いだ。
そんなこと現実にはないじゃないか。
スクールカースト上位の人間と喧嘩でもしてみろ、クラス中から無視されるようになるだけだ。喧嘩の後に友情なんて芽生えない。
俺は少年漫画の主人公が全員嫌いだ。
フリーザになりたい。セルになりたい。ディオになりたい。アーロンになりたい。

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『僕は悪者。』②

『僕は悪者。』②

 二
 俺の脳みそが翌日には不要な記録としてデリートしてしまってもしょうがないような、クソつまらない古典の授業を終え、その後には今を生きてる俺にはどうでもいい日本史をなんとか終え、一日の授業は終わった。
 まあそんな授業でも座っていれば時間を使うことができるので別に構わない。体育なんかと比べるとだいぶ楽だ。
 ただ、最悪なのは今日は掃除当番だっていうことだ。
 掃除当番は出席番号順に決まる。俺の前

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『僕は悪者。』③

『僕は悪者。』③

  三
家での俺はいい息子だ。父親はサラリーマンで母親はスーパーのレジ打ち、妹は俺とは真逆でリアルに充実した中学校生活を送っているようで、帰宅部なのに高校生の彼氏(俺とは違う高校だ)がいて、いつも日が暮れるまで帰ってこない。彼氏の家でセックスでもしているのだろう。
絵に描いたような中産階級だ。しかもその中産階級の住んでいる家が、父親が三〇年ローンで買った郊外の家だから尚のことつまらない家庭だと言え

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『僕は悪者。』④

『僕は悪者。』④

前回の『僕は悪者。』

  四
俺は自転車に乗って、あてもなく漕いだ。
大通りに出ると、背中をそっと押すように追い風が吹いて、楽に前に前にと進むことができた。
ああ、なんて気持ちがいいのだろう。学校の中にうごめくクソみたいなカースト制度なんて気にならなくなる。
気にならないからわざわざ頭の中でぶち殺す必要もない。ああ、なんて楽なのだろう。
だけれど、実際には明日も学校に行かなければいけない。両親は

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『僕は悪者。』⑤

『僕は悪者。』⑤

  五
翌日、哀れな田口は健気にも学校に来た。俺は相変わらず、誰にも認識されることもなくただ田口を観察した。幸い彼の席は俺の隣だった。
彼はいつも通りに学校に来ると、いつも通りのグループのところに行き会話に参加しようとした。だが、無視される。
それからも悲惨だ。何度か色々な人に話しかけてみることを試みるが全ての人に無視される。
ああ、哀れだ。哀れだ、田口。お前は何もわかっていない。いじめってのはそ

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『僕は悪者。』⑥

『僕は悪者。』⑥

   

 六
翌日も田口は健気にも学校に来た。相談した担任の豚ゴミが何か対応してくれるとでも期待したのかもしれない。
だが、もちろん豚ゴミは何もしない。この学校には先生や教師と呼べるような人物は皆無で、全員骨ごとミンチにして豚の餌にして出て来た糞を畑の肥料にするぐらいでしか世の中に貢献することができないような豚ゴミだ。
だから田口は今日も一人で過ごすことになった。
俺が話しかけてやってもよかった

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『僕は悪者。』⑦

『僕は悪者。』⑦

   七
退屈になったな。俺は田口がいなくなりぽっかりと空いた席を眺めた。いつかは不登校になるとは思っていたがこんなにも早いとは。田口の親は理解がいい親なのかもしれない。
もし高校が合わなくても、親が理解のある親ならフリースクールにでもいくことはできる。不登校向けの塾やら家庭教師もあるのだから学業は学校に行かなくてもそれぞれの努力次第でそれほど落ち込むことはないだろう。それどころか、豚ゴミの授業を

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『僕は悪者。』⑧

『僕は悪者。』⑧

↑前回

  八
だが計画というのはなかなか思うようには進まない。
計画の実行日のたった一日前。一人の転校生が来た。
名前を片桐美梨といったその女は控えめに言っても、たまらなく可愛かった。すらりと通った鼻に、ぱっちり二重の目。唇はぽっくりとしていて、ふんわりと柔らかな雰囲気を纏っていた。
高校での転校は滅多にあることではない。だが、その女は来た。父親の転勤だか何だか理由は知らないがやって来てしまっ

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『僕は悪者。』⑨

『僕は悪者。』⑨

 https://note.mu/kotobatoto/n/n951beeb04637

↑前回

   九
「ねえ、イジメられてるんでしょ。私そんなの気にしないから。」
俺は目をパチクリさせた。あまりにもそれは唐突な出来事だった。
青天の霹靂だった。藪から出た蛇だった。
俺は恐ろしくなった。突然に俺の心の一番奥底の柔らかい場所を生ぬるい手で撫でられたようだった。なんと答えればいいのか。俺にはわか

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『僕は悪者。』⑩

『僕は悪者。』⑩

    一〇
俺は帰りのホームルームが終わると飛び出すように学校を出た。
彼女に話しかけられる前に立ち去りたかった。今日は特別教室の掃除当番だったが、そんなことはどうでもよかった。
俺の今までは匪賊でありながらも安定した生活を送ることが一つの目標だったし、そうして暮らして来た。何度踏まれて、引っこ抜かれて除草剤を蒔かれようが、黙々と根を張り続ける雑草のような日々を俺は送って来た。だが、片桐美梨の登

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『僕は悪者。』 11

『僕は悪者。』 11

 

https://note.mu/kotobatoto/n/n1d2eb9ea446c

  一一
翌日はほとんどいつもと同じ金曜日だった。ただ少し違うのは俺には会話相手ができたことだ。そう、それは片桐美梨だった。
彼女は一〇分休みも、そして昼休みも俺の隣に座り続けた。今日は他の女子生徒から見限られたのか朝から誰も片桐美梨に話しかけに来なかった。
まるで、転校生など来なかったかのように淡々と日

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『僕は悪者。』 12

『僕は悪者。』 12

   一二
俺の平穏な日々は終わった。学校では誰とも会話をせずに、誰からも無視され、時にはバイキンとして扱われ、グループを作る時には最後まで決まって残され、昼休みは顔を突っ伏して寝たふりをして、掃除がないときは真っ先に教室を飛び出して一目散に逃げるように下校し、頭の中では同級生のアバズレどもをレイプし、ヤリチンどものちんこを刈り取り、豚ゴミどもをミンチにして腐らせ、そして全員を機関銃で撃ち殺すとい

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『僕は悪者。』 13

『僕は悪者。』 13

   一三
しかし、実際に月曜になり、学校に行き、一時間目が始まる頃には俺の心はいつも以上のブルーになった。
来ないのだ、片桐美梨が。来ない。学校に。不登校になってしまったのだろうか?転校してしまったのだろうか?いや、ただの風邪かもしれない。俺はソワソワした心を落ち着けようと深呼吸をした。
しかし、火曜日も水曜日も木曜日もそして金曜が来ても彼女は来なかった。
俺は先週の土曜と同じように自分のベッド

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