オモウマい店の哲学
名古屋の中京テレビ制作の
オモウマい店という番組がある。
関東圏では日テレで見ることができる。
ここのところ、
およそテレビはニュース以外
ほぼ見る時間はない。
ただ、この番組だけは見逃し配信などを
使いながら欠かさず見ている。
登場する店主の考え方は
極めてシンプルであることが多い。
しかし、シンプル極まりないが故に深い。
そこにはその人のこれまでの凄まじい歴史と
生き方と、人への想いが全て滲み出ている。
彼ら彼女らなりの生き様、哲学を持った市井の料理人とのやりとり。
番組の面白さばかりが目立つが、
それだけにとどまらないものがある。
昨日見たのはフレンチの料理人。
本場フランスの名店で修行したが、
紆余曲折あって今に至る。
彼は言う。
ざっくりと響いた言葉を抜き出す。
運のよしわるしってあると。
そして、やってるやつはやっていると。
俺は負けてないと。
「やってるやつはやっている」
そうなんだよ。
やってるやつはやっている。
どんな状況下にあっても、
どんなに厳しい中でも、
本当に息をするようにコツコツと目立たず
やってるやつはやっている。
こういう人はすこぶる強い。
法律のプロになる過程でも、
山ほど「やってるやつ」に会った。
わたしはいま、その世界ではなく、
紆余曲折を経て、介護の厳しさの中にある。
それでも、
やってるやつはやっている。
これは自分の限界を超えて
無理することではない。
やってるやつはいるんだとわかったとき
自分の状況を冷静に見返す道標になる言葉だ。
そういう人もいるから頑張るというのもありだし
そういう人もいるがわたしはやっぱり難しいか。
どちらでもいいのだが、
いろんな人間がこの世の中で懸命に生きている。
それだけは頭に置いておきたい。
本人たちはすごいと思っていないようだが、
隠された人間的な深みを持っている。
それを見つけ出す製作陣は凄いと思う。
凄い人を凄いと褒めるのはよくあるが、
一見凄いと思えないような場面の中に
凄さを見出す。
見つけ出された店主たちも凄いが、
見つけ出す製作陣もすごい。
洞察眼がなければできないだろうし、
店主からその哲学を短い時間で引き出し
番組にまとめ上げることはスタッフの
力量なんだろう。
持ち上げてばかりだが、
哲学を持つ番組は少ない。
北海道のHTBでかつて放送されていた
「水曜どうでしょう」は、哲学だと思う。
四人の男たちの哲学が垣間見える。
藤村、嬉野両Dの見せ方の哲学。
大泉洋、鈴井貴之の役割と演じ方の哲学。
やってるやつはやっている。