見出し画像

クールなつくえさん

僕はみみちゃんのお姉さんが実家で使っていたつくえ。ルームライトくんと一緒にみみちゃんのおうちに来た。
 
ルームライトくんは真っ白なホーローでできていて、どんなインテリアにもさらっと自然になじむ。
 
僕はつくえと言っても学習づくえやひとり暮らしの人がよく使っている4本足のローテーブルではなくて、ルームライトくんに言わせると、ちょっとクールな感じのつくえなのだそうだ。
 
僕は天板が乳白色のうすい水色のガラスでできていて、その天板を白いロの字型の鉄材で支えている。
 
僕には引き出しがついていて、みみちゃんはそこに文房具を収納している。
 
みみちゃんは僕をふつうのつくえの用途で使うこともあれば、お料理したものを置く台にも使うし、ごはんを食べるときのテーブルとしても使ってくれる。
 
このあいだは、めずらしく履歴書を書くのに使っていてちょっとびっくりした。
 
みみちゃんの会社はつい最近2人も人がやめてしまって、それからみみちゃんは残業することが多くなってしまった。
 
みみちゃんは2回にいっかいの土曜日に実家に帰っていて、それ以外の土曜日か日曜日にお姉さんと電話で1時間以上話している。
 
連休とかがあると実家に泊まることもあって、とにかくみみちゃんは家族ととっても仲良しだ。
 
ほんとうはもっといっぱい実家に帰ってお母さんに会いたいねってお姉さんとよく話しているし、みみちゃんのおうちにお母さんとお姉さんが遊びに来ることもある。
 
みみちゃんは仕事がたいへんだと、ものもらいになってみたり口内炎ができてみたりして、小さな不調に悩まされるようになる。
 
それでもみみちゃんはそういうからだからのサインを見逃さずに、そのときどきでケアするように心がけているのだ。
 
だからみみちゃんにとって、今の会社がまったくもって好ましい場所じゃないっていうことを、おうちのみんなもみみちゃんもお姉さんもひしひしと感じていた。
 
みみちゃんには、もっと自由な時間やゆったりした働き方が必要なのだ。
 
お裁縫をしたりアラジンさんでお料理したり、好きなときにおさんぽに行ったりする、ゆとりのある暮らしがみみちゃんにはいいと僕たちは思っている。
 
みみちゃん、転職っていうのをするかもしれないね。
 
僕たちはみみちゃんのいないときにみんなで話し合いをした。
 
転職っていうのはなかなかたいへんらしいけど、みみちゃんの暮らしがよくなるのなら大賛成だよね。
 
とにかく僕たちはみみちゃんのチャレンジを全力でおうえんすることにした。
 
がんばっているみみちゃんに「がんばって」「がんばれ」はぜったいに言わないでおこうねって僕たちみんなで決めたから、僕はみみちゃんに「おうえんしてるよ」ってエールをおくることにした。
 
みみちゃんのチャレンジがうまく行ってもそうでなくても、みみちゃんの未来に新しくて心地いい何かがまっているといいなと思う。
 
僕はみみちゃんがコンビニ限定のちょっといいデザートを食べながら、お姉さんとうれしそうに電話しているのを、たのしい気持ちでしずかに聞いている。

この記事が参加している募集

#眠れない夜に

69,281件

この小さな物語に目を留めてくださり、 どうもありがとうございます。 少しずつでも、自分のペースで小説を 発表していきたいと思います。 鈴木春夜