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ラーメンへの固定概念

ラーメンといえば豚骨ラーメン。

小さい頃から豚骨ラーメンしか食べてこなかった僕は、豚骨スープ以外のラーメンを邪道だと捉えていた。

それほど僕は豚骨ラーメンに執着し、そしてうるさいのだ。

その店最高のラーメンを食べる為に心掛けていることがある。

開店直後に行くことだ。

開店直後の店は従業員の集中力が高く、また麺を茹でる湯が新しい為、麺特有の臭みがないラーメンが提供される。

つまり、そのお店のパフォーマンスが100%発揮されたラーメンに出会えるのだ。

だから僕はそれ以外の時間帯に友達や家族とラーメン屋に行くとき、ラーメンを頼まない。

麺の臭みがあることを恐れ、炒飯や餃子で食事を済ませてしまう。

過去に地元のラーメンがそれほど美味しくない店に一人で行ったことがある。

スープに独特の臭みがあるラーメン屋だ。

そこは、僕以外お客さんがおらず、店内は閑古鳥が鳴いていた。

店員がすぐにお冷を持ってきて、「ご注文は?」と元気よく聞いてきた。

「炒飯ひとつ」

僕は淡々とそう答えた。

「ラーメンの方は……?」

店員が遠慮がちにそう聞いてきたのを鮮明に覚えている。

おそらく、店に入るときにラーメンを作り始めていたのだろう。

それでも、僕は「ラーメンはいりません」ときっぱり断った。

自分ひとりの為に作られた炒飯は、お米一粒一粒しっかりと強火が入っており、食べた瞬間に感動した。

『美味い炒飯を食べるにはどこに行けばいいか』
と聞かれたら、

僕は間違いなく『客のいないラーメン屋に行く』と答えるだろう。

それくらい美味しかった。

それから数年後そのお店はそこそこの繁盛店になっており、市の広報誌に掲載されていた。

広報誌には店主のインタビューが記事になっており、店主がこう答えていた。

数年前までお客さんがほとんど来てくれなくて、せっかく来たお客さんもラーメンを頼まずに、炒飯だけ食べて帰られたこともあった。これじゃいかんと思い、ラーメンに改良を重ね、今ではお客さんに来てもらえるようになった。これからもお客さんに満足してもらえるようなラーメンを提供していきたい。

そう。
僕が原因でひとつのラーメン屋を変えさせてしまったのだ。

これに責任を感じた僕は、県内のありとあらゆるラーメン店を食べ歩き、ラーメンに対しての意識を高めた。

それでも僕を納得させるようなラーメンはなかった。

福岡一美味しいと話題の行列のできるラーメン店に並んで食べたが、そこでもいまひとつだった。

2021年にラーメン屋で初めて味噌ラーメンを食べた。

店名は覚えていないがそこそこ有名なところだと思う。

めちゃめちゃ美味しかった。

濃厚な味噌スープとちぢれ麺がよく絡んでおり、
ズルズルと麺をすすった。

無我夢中で食べ続け、気がつくとスープまで飲み干していた。

豚骨ラーメンでは感じたことない幸福感に包まれ、生まれて初めてラーメンで満足できた。

このときにようやく気付いた。

豚骨スープが自分の口に合わない

ということに…

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