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ロシア軍の今後の行動を「究極の状況判断プロトコル」でサクッと検討してみた

2022年2月24日、報道によるとロシア軍がウクライナへの侵攻を開始した。侵攻があるか無いかの議論の結果は、”侵攻があった”に軍配は上がった。一方で、それはリーダーであるプーチン大統領のみが決定できることから、危機管理の観点からは予測よりも対処が重要となる。ロシアのEnd State(出口戦略)は何か

本noteで解説中の究極の状況判断プロトコルには、「情報見積り」と呼ばれるステージがある。敵の行動を様々な観点から見積り、敵の出方を推察していく作業だ。この作業を経た後、我が方の対応すべき方針である「行動方針」を検討していく流れとなる。

ロシアの侵攻が明らかとなった今、ロシアがどの程度まで軍事力などを行使してくるかについて、この「究極の状況判断プロセス」(本記事の最後にリンク)でご紹介予定の「情報見積り」の手法を極めてシンプルに用い、サクッとロシア軍の可能行動を検討してみた

ロシア軍の可能行動の見積り(i-J Solutionsによる簡易シミュレーション)

表中のE-1, E-2, E-3のEは”Enemy”の略であり、敢えてシンプルにするため3つのパターンを導き出す形とした。ロシア軍が採る可能性のある行動を描写するにあたっては、行動の目的を設定し、それを達成するための範囲、目標、時間、規模、要領を列挙し、最後に可能行動としてまとめる

その後、妥当性、許容度、実行可能性の観点から3つの可能行動案を分析し、どの行動が採用される可能性が高いかを評価して順位付けをする。

今回のシミュレーションの結果、1位となったのは「キエフを含んだ全土的なキネティック(物理的な)侵攻かつ全国的なハイブリッド侵攻」となった。この場合、達成すべき目的は「プーチン政権の正統性の継続的確保」となった。

一方、2位(目的;「ロシア経済の回復、自国エネルギー戦略の成就」)との優劣の比較も容易ではない。複雑多岐にわたる情勢理解と判断が混在する中では、いかに我が方が相手方の戦略的趣向やクセ、歴史的合理性のような定性的な特性を理解できているかによって予測が変化してしまう。リーダーとスタッフには日々の研鑽が不可欠な所以だ。

このように、複雑で予測が難しいと考えられる状況であっても、一定の手法を活用することによって、思考を押し進めることが可能となり、仮に明確な回答案が出せない場合であっても、概ね確からしい方向付けをしていくことが可能となる。

この規定の手法は、ビジネスの場面でも活用が可能だ。不確実な危機に耐えうる強固な組織的意思決定術として、自衛隊・米軍で長年活用され続けている言わば「戦術」としての意思決定方法を学ぶ意義は大きい。

マガジン:
想定外を克服する「究極の状況判断力」(導入編)
想定外を克服する「究極の状況判断力」(基礎編)
「究極の状況判断力」実践講座

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