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15 失敗③ 未来を上司だけに依存する

本noteは連載形式です。全部で約100回の予定となります。本連載「想定外を克服する『究極の状況判断力』」のリンクは最下部に記載してあります。

不透明で不確実な想定外に対応しようとする際に、これまでのシミュレーションで陥った失敗について振り返る。今回は3つ目の失敗の原因について。(初めてご覧になる方、最初から確認したい方はこちら:想定外を克服する「究極の状況判断力」

15 ”上司任せ”は博打である

また、思い出して欲しい。あなたは上司のBさんが持っているイメージが分かりにくかったため、計画化にあたって非常に困っていた。この時、あなたはもう一度、上司に確認しようと考えた。上司のBさんは一体、どんなイメージをもっているのか、どこまで頑張れば良いのか、自分勝手に考えを進めてみたところで、イメージと異なってひっくり返されるのも時間の無駄だし効率が悪い、と思ってしまった。

このような発想は非常に自然なことだ。あるチームにリーダーがいて、方向性を示すことによってチームは動く。だから、方向性が分からなかったら話にならないじゃないか、そう考えるのは当然のこと。だから、方向性を示すリーダーにその責任を果たしてもらおう、そう思うものだ。

しかし、これが不透明、不確実な状況である場合、その上司も答えを持っていないことが大半だ。そんな場合に、盲目的に未来のことを上司任せにすることは、上司にとっても、そしてチームにとっても博打となる。これは初めての経験で、想定外の難題なのだ。ここは、もっとプロセスが科学的であっても良いはずだ。 

前々回の「想定外」に打ち勝つ秘訣は共通プロトコルにありでご紹介したように、自衛隊の場合、指揮官(リーダー)と幕僚(スタッフ)は明確に役割分担されている。特に幕僚(スタッフ)は、指揮官(リーダー)が状況を判断したり意思決定を行う際の補佐が主要な責任だと明確に定義され、全幹部自衛官が極めて早い段階でそれを叩き込まれる。

下図は米軍が正式に発行している文書「Joint Planning」だ。説明は応用編で後述するが、今ここで注目して頂きたいのは、この活動の中でCommander and Staff(リーダーとスタッフ)の相互の協力関係が規定されていることだ。世界最強の軍隊は、リーダー一人だけに任せず、チームとして未来のことについて一緒に検討を進めるプロセスを明確に定義している。

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出典:米統合軍Joint Publication (JP) 5-0, Joint Planning

スタッフが知恵を出して条件整理をした後、 継続的な相互の対話(Iterative Dialogue)を経て、最後はリーダーによって今後どうしたいかというインテンション(意図)を確定する。どういう方向性にするかを確定するのはリーダー自身なのだが、どうしたいかという意図を確立する作業は、その組織が全体として責任を負うのである。

未来を上司だけに依存する思考や体質は、想定外の難題を克服するためには害となる。

>次回:失敗④ 共同作業プロトコルを持たない上司

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マガジン:想定外を克服する「究極の状況判断力」

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