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16 失敗④ 共同作業プロトコルを持たない上司

本noteは連載形式です。全部で約100回の予定となります。本連載「想定外を克服する『究極の状況判断力』」のリンクは最下部に記載してあります。

先行きが見えない、初めての難題に取り組む時に有効な「究極の状況判断力」。これまでのシミュレーションで陥った失敗について振り返る。今回は4つ目の失敗の原因について。(初めてご覧になる方、最初から確認したい方はこちら:想定外を克服する「究極の状況判断力」

16 共同作業のためのプロトコルが不可欠

事実、上司のBさんは大変困り果てていた。能力も向上心も高いあなたに期待して、この案件を進めようと思っていた矢先、「どうして良いか分からない」と宣告を受けたようなものだったからだ。(第4回「上司と部下、意思疎通が止まるとき」

上司のBさんは、想定外な新規案件に対する答えを持ち合わせているわけでは無いので、当然、最初の指示や期待値を示すことは難しかったはずだ。また、様々な他案件もタイムセンシティブで多忙を極める中、チャンスだけが目の前にぶら下がっていた状態だった。そこで、あなたに色々と考えて進めて欲しかった。

しかし、想定外の案件や状況に遭遇し、対処するにあたっては通常のルーチンと同じような感覚で進めることはできない。「何も分からない状態である」という事を前提とした、チーム全体としての共同作業となる事を理解していなければならない。その上で、上司(Commander)と部下(Staff)が互いの役割と責任を理解しながら、信頼関係を基に難局にあたる必要がある。

自衛隊では、幹部自衛官が指揮活動を行う場合の基本中の基本として、「指揮官と幕僚」の関係を定義している。指揮官は「幕僚に対して自己の意図を明示する」ことが重要であり、幕僚は基本の心得として「常に指揮官の意図を承知する」ことが必要であるとされる。

詳細なプロセスの解説や実用方法は後述するが、チームとして想定外の事態に対応しようとする際は、まず最初に上司と部下は「どうしたいか」という意図を共有する作業からスタートする必要がある。それは、①会社のミッションに基づいて自分たちが達成すべきことを解釈し、②そのための方針や留意点を提示し、③不明確な事が多い中であってもこれから先の作業で何を決めなければならないかを共有する活動である。

不透明かつ不確実な中で事態に対処する際には、上司と部下が最初に何をすべきで、それぞれの責任を自覚して信頼することが大切だということを、まず現段階でご認識していただくと良いだろう。上司のBさんは優秀であったが、部下やチームとの共同作業プロトコルを持っていなかったことが失敗の要因だった。

>次回:失敗⑤上司も部下も、共に知らなかった

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マガジン:想定外を克服する「究極の状況判断力」

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