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法学部だけど法律を学ばなかった大学生活

※話のテーマ的に、どうしても小難しい話になります。

僕は大学生の頃、学生芸人としてお笑いライブに出たり、ジャグリングでステージに呼んでもらったり、MCの仕事もらってステージに出たりと、エピソードを話すと一体大学で何をやってたんだと言いたくなる学生生活だったんですよ。

そんな僕は実は法学部を卒業してまして。
高校生の頃から法律家になりたくて法学部だけに絞って受験してたんですけど、いざ大学に入って学んでみたら、基本的に全然面白くなかったんですよね。
そもそも 面白さ を求めて法学部に入るのが間違ってるのかもしれないけれど、自分が面白いと思えないことで大成しないだろうって思いもあったんです。
単位は落とさなかったけど、別に成績良ければ興味があるってわけでも無いしねえ。
条文とか判例読むのは好きだったんで、そのスキルは今でも活かせてるんですけど。

こう書くと、僕は大学で何も学んでなかった感じがしますが実はそうでもなくて。
きちんと1つの専攻分野を追究していました。

それが、生命倫理問題を比較法学検討するというものです

…わかりますか?

そもそも比較法ってのが馴染みないと思うんですけど、ザックリ言うと1つのケースを様々な国の法体系で比較して検討する学問です。

もっと極端な例を出せば、仮に殺人が無罪の国があったとしたら、その国ではなぜ無罪なのか?日本を始めとする他の国ではなぜ有罪なのか?を、それぞれの根拠法令や判例から追究していく学問って感じです。

まあでも殺人は合法だ!って国は無いでしょう。(法律等で明文化されてない国はあると思うけど)
では一体どんなテーマなら比較しがいがあるというか、結論や考え方がケースバイケースになるか、となった時、僕の先生が選んだのが生命倫理問題だったわけです。

この『生命倫理問題』というのも抽象的でわかりづらいかもしれないですが、例えば『安楽死』などが挙げられます。

具体的な例を出せば、オランダでは安楽死は合法と言われています。
日本は合法では無いですね。

これを考えるにあたっては、単純に「死にたい人は死んでもよいのか」という議論では無いんですよ。
いや、そういう議論もあるんですが、ここでいう「死にたい」は、『自分らしく生きることの選択』という個人の意思に重きを置いて、それを尊重するのかどうかという価値観の問題になります。

何らかの重い病気にかかり、治る見込みは無く、家族に負担をかけるしかなくて自分では何一つ身の回りのことができなくなった時、「死にたい」と思う人にどう寄り添うかって話なんですよね。

しかもそっからさらに掘下げていくと、生前に「自分がそのような状態になり、意識が戻る見込みもない時は、安楽死させてほしい」という生前の意志があった場合、その生前の本人の意思は尊重されるのか。
家族に決定権があるのか。
と言ったケースも考えなきゃなりません。

別に僕はこの記事で死生観を訴えたいわけではないので、どっちが正しいかって話には言及しませんが、こういった事に対し国によって捉え方が異なるというのは事実でして。
客観的な立場から検討して自分なりの結論を導くというのが僕が専攻していた分野です。

僕の大学は法学部は卒論書かなくても卒業できたんですが、僕はパフォーマンスと同じくらいの熱量でこの学問に入れこんでいたので、卒論を書きました。

あんまり内容を書くとバチバチに僕を特定できちゃうのでそんなに書かないですが、ボカシて書くと遺伝子技術の特許性に関する問題を、海外の先進事例(判例)を元に日本で同様のことが起きた場合どのような問題になるか?また、どういう結論に結びつけるか?(私見)というものです。

その先進事例がEUの司法裁判所大法廷の判決だったんですが、まだ日本で誰も判決文を訳して論文にしていなかったので、まず全て和訳するところから始めました。

この和訳にめちゃくちゃ苦労したんですよね。
フランス語がペラペラな僕の先生に訳が間違ってると怒られながらなんとか訳し、そっからようやく解釈に入るという途方も無い作業でした。

訳が終わると見えてくるのが、この事例の複雑さです。
そりゃそうだ。
EU司法裁判所大法廷までもつれこんだ話なんで、日本で言えば最高裁判所の判決と同じ扱いです。
最高裁の判決ってそれ以降の同様の事例があった時にも絶大な影響を及ぼすんですよ。
言い換えれば、EU司法裁判所大法廷で出た結論は、今後EU加盟国全土に影響を及ぼすデカイ事例だったわけです。

帰国子女でも無いただの学生が手を付けるにはかなりハードな内容だったんですが、何とか書き切りました。


この研究が今の人生に影響を与えているかというと、直接的にこの知識を使ったことは正直一度も無いです。

普段の生活で、生命倫理問題って言葉を交わすことすらほぼ無いですもんね。
ただ卒論以外に取り上げたテーマの『非配偶者間人工授精』や『新型出生前診断』などは、知っていて良かったなーと思うこともしばしば…


僕はこの比較法って学問にのめり込みました。
多分答えが無い物を考えることが好きなんだと思います。
ここを見れば答えがわかる、という物を覚えることに魅力を感じづらかったんですよね。

自分の中から答えを生み出す。
答えを生み出すために学ぶ。考える。
そのプロセスに僕はのめり込んだんだと思います。

正直大学で何を学んでも良いと思うんですよ。
ただ、何も学んでいない、ってのはもったいないなと思います。

・自分はこれをやってきました。
・自分の専攻はこれです。

そうハッキリと言えることは、自分の中の自信になるし、自分の支えになっている気がします。

…こう書いてて気づきましたが、
物事を客観的に、色々な角度から考え自分の結論を出す
という頭の使い方を覚えたのは、この比較法学の考え方のお陰かもしれないですね。

学ぶって楽しいし最高の贅沢です。
こうやって振り返ってみて、自分の学生生活良かったなって思えるのは幸せだなあと思います。


ちなみに、ゼミに入って初めて書いたレポートを先生が見て僕に言った言葉は

日本語で書いてくださる?

でした。

学問とは直接関係無いけれど、色々なスキルを鍛えてもらった気がします。

選ぶ学問も大事ですが、良い先生に出会えるかどうかも大事なポイントかもしれないですね。


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