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「あいつ今何してる?」のあいつになりたい。

2016年の1月末のことだ。

社会人同期で同い年の芦田太郎から着信。ひさしぶりの電話なら、ちょっと空気を探ったり、雑談から入ったりしそうなものだけど前置きもない。

「お前に、お願いしたいんだよね。お願いできるかな?」

話を聞くと、芦田が企画、ディレクターをしている番組、「あいつ今何してる?」が深夜帯からゴールデンに進出したそう。

「お、おう。そうかそうか」

なんて冷静に話を聞いてたけど、本当は驚いてた。

すごいなって。よくぼくらは好きな番組が深夜からゴールデンに昇格することを、「あー、これで尖ってる番組がまるくなっちゃうよ」なんて思うけど。

その裏では汗を流している人がいる。知恵をふりしぼって企画して、会議を通して、毎回ふんばって番組をつくって、自分の好きをかけて勝負して、番組中はエゴサーチ、つぶやきひとつに一喜一憂して、視聴率の速報がどうなるかどきどきで、少しずつファンを増やして、手応えを感じて、目に見える結果を出して。社内の上層部の方にも認められて、たくさん会議の経て、ひとつずつ落とされながら、なんとか生き残ってゴールデン行きの切符をつかみとる。

芦田がそこまでたどりついたんだな。すごいことだよな。ぼくは広告の会社にいるから、テレビの仕事のことは、わかるようでわからない。でもチャンスをもぎとったことが、どれだけすごいことかはわかる。

芦田の電話は、番組宣伝のポスターをつくって欲しい、という連絡だった。

おお、いいよ。やるよ。

本当はやれるかどうかわからない。いい大人なんだから、いろいろ調整しないといけないこともある。でも、やりたくて、躊躇することもなく、そう答えていた。

それこそ芦田と出会ったのは就職活動中の、たしか2007年だったと思う。リーマン・ショックの前で、平和だった。マスコミも元気だった。震災だってまだ起きてない。学生だったぼくらはのびのびと就職活動をしていたし、これからの未来に可能性しか感じていなかった。

内定者、という期間はなんともまあ調子の良い期間だと思う。まだじぶんは何者でもないのに、これから進む予定の企業の名前だけで、誇れたりもする。当時のぼくも多分そうだった。おなじ会社の集まりや、マスコミの集まりにも、よく顔を出していたし、みずから企画をしたりもしていた。

そんな中で進む会社はちがえど、よく話していたのが芦田だった。

芦田はじぶんの就職活動のドキュメンタリーをブログに書いて、「Japan Blog Award 2008」というブログの賞まで獲っていた。マスコミに進もうとしている人がいたらこの芦田太郎のブログを見て欲しい。

そう、芦田は、ちょっとへんで、だいぶ特別なやつだった。だから社会人になってもちょくちょく連絡は取り合っていたし、ぼくがコピーライターになってからは、番組のネーミングを手伝ったりしていた。

いつか一緒に仕事しよう。

新橋あたりでは毎晩言われてそうなこのセリフも、芦田とならいつか何か本当にできるかもなと思ってた。ただ、これは多分だけど。テレビ番組を、若手が企画して、メインの担当になるなんて、そう簡単なことじゃない。

入社して8年。ぼくらは30歳になっていた。

芦田の企画した「あいつ今何してる?」は業界内での評判が高かった。多くの放送作家の方も褒めていた。それも納得できる。ほんとうに面白い番組だったから。深夜からスタートして、ゴールデンに進出して、ある程度宣伝の予算がついて、誰かと仕事をできる、選べるとなったら、後悔したくないと思う。後悔しないというのは選択肢をもつということでもあるから、あれこれアイデアを集めて、じぶんで決めたくなるのが人ってもんだと思う。

あいつにお願いしよう。

芦田がぼくに電話をくれた時に、あいつはそう思ってくれたのか、と考えたらやっぱり嬉しかった。手を抜かずに、じぶんの出来ることをちゃんとやりつづけていれば、縁はつながるんだなと思った。そして感じる。ともだちと仕事をする時がいちばんこわい。へんに力が入る。でも、それを越えて、よいものをつくらないといけない。プロなんだから。

1枚のポスターが完成した。

とうぜん、ポスターをつくるにあたって、過去の放送ふくめて全部みる。ほんとうに良い番組だった。だれかを傷つけたり、毒や激しさに走るお笑いじゃなくて、一人ひとりの思い出と向き合って、丁寧に取材を重ねて、そこにあるうれしさをやさしく届けて笑顔にする。芦田のブログに見られる、丁寧さとしつこさと、ちょっとだけ不器用で、でもやさしい。そんなあいつらしさがにじみ出ている番組だった。

過去の話ばかりするようになったら終わり。

よくそう言われる。でも、そんなことないかもしれないなと。思い出を振り返ることで、これまでのじぶんを再確認して、これからもがんばるか!とまた前を向ける。その証拠に、出演者の方がすごく素敵な顔していた。

人がよろこぶ顔を見ると、こちらまで無条件にうれしくなる。結婚式で寿ビデオを見たかのような余韻。思い出は、多い方がたのしい。思い出は、背中を押してくれる。

あらゆるバラエティーがあるなかで、ああこれは、「思い出バラエティー」というジャンルなんだなと思った。

ポスターが完成して、いいコピーをありがとう、と言われたときは嬉しかったというより、安心した。

「あいつ」って不思議なことばだよなあと、ずっとそんなことを考えていた。ネガティブな意味合いでもつかえる、でも、親しみを込めた意味合いの方がぼくの中では大きい。欲張りかもしれないけど、「あいつ今何してるかな?」と、たくさんの人に思われたいな、いつかどんなときか、思い出してもらえるように。あなたの思い出の中にいられるように。そういう仕事をたくさんしていきたいと気づかせてもらえた。

芦田太郎という男がここまで育てたテレビ朝日「あいつ今何してる?」が水曜日の19時からです。なかなかオンタイムでは見られないですよね。どうか朝、家を出る前に、録画の予約をしてみてください。

あなたもあいつに会いたくなる番組です。

ここまで長々と語りたくなるくらいに、いい番組です。

芦田とふたりで話したイベントも記事になっています。もしよかったらぜひ。

お読みいただきありがとうございました。それでは、また。

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