見出し画像

もしも「愛と書かずに愛を伝える本」だったらどんな未来が待ってたかな?


たぶん、きっと、いやぜったい。
いい未来が待っていると思うんだけど。


どう生きても人は幸せになるようになっているし、そう信じている限りはいい未来がやってくるし、そうなる。今こうしてnoteを書きはじめたのは本のタイトルについて書きたかったのだ。

『自分の考え方が変わった瞬間の記録』として書き残しておくためにも。


2019年12月のことだ。

その日の夕方、打合せを終えて、僕はニコニコの笑顔で帰り道についていた。ルンルン、なんて言葉あまり使ったことはないけど、ルンがおまけでもう1つ付くくらいに満ち足りていた気持ちだったルン。

アートディレクターであり装丁家の寄藤文平さんと打合せだったのだ。2016年、ロックバンド「クリープハイプ」の「破花」というシングルのジャケット制作でご一緒して以来、「いつかまたご一緒したい!」が叶って、事務所に打合せへ。

書籍の企画書には『愛と書かずに愛を伝える』とタイトルが入っていた。僕の話にじっくりと耳を傾けてくれる。返してくれる言葉が温かい。文平さんと話していると気持ちがなだらかになる。心地いい。

「阿部さんの、コピーライターとしての、代表の1冊になるってことですね」
「そう、そうなんです!」

前のめりに僕も答えた。

「新しい本ができたんですって、阿部さんがカバンから取り出すとした時に、こっちのほうがいいと思うんですよね」

2Bだろうか。芯の太い鉛筆で『愛と書かずに愛を伝える「本」』と一文字書き足してくれて、文平さんはまっさらな紙にこんな感じかな、と書いてくださった手書きラフがこれだ。

画像1

「うわあー!」とか、「すごいっす…」とか。ただただ目の前で描かれる未来予想図に感動していた。思いがそこに宿った感じがした。ラフでもいい。完成がイメージできることで、活力はどこまでも湧いてきた。

ニコニコの帰り道。編集会議でも確認とってきますね、と編集者さん。

あ〜ハッシュタグになったら「#愛と書かずに愛を伝える本」うーむ、略して「#愛愛」かな!? な〜んてたのしくひとり妄想していた。

・・・・

・・・

・・

「会議でGOサインは出なかった」と連絡をいただいた時は、平常心を保つのに精一杯だった。しゅん。絶叫するものじゃないけど人生で一度「ぴえん」と叫ぶならこの時だった。

しかも、その理由が、ものすごく、もっともだったのだ。

「パッと見の印象で恋愛本に思われたらビジネスマンの方たちは手にとりづらいのではないか?」

・・・それは・・・いなめない・・・かもしれない・・・。。。

「愛と書かずに愛を伝える」は伝えたいことではある。それでも固執している場合じゃない。考え方が変わった。

まだ出会ってない。まだつながってない。まだ見ぬあなたにも届いてほしいんだ。だから、パッと見た時に手にとってもらうためのタイトルでありたい。その思いはつよかった。

あれこれ悩みつつも、書き進めないと本は完成しない。当然だ。2019年の年末〜2020年の年始はしんどかった。この本はどうしても完成させたくて上島珈琲店に通って書き続けた。黒糖ミルク珈琲は脳に沁みる。

振り出しに戻ったタイトル。でもゼロになった訳じゃない。迷った時は原点回帰。そもそも、本の企画が立ち上がったきっかけになったのはWebメディアのキャリアハックさんのこの記事に立ち戻った。1万5千近くもシェアされた記事だった。

同時に、売れている本をよく観察するようにした。売れているものは「人間の生の思い」がある。そこに何かヒントがあるかもしれない。

たどり着いたのが『モデルが秘密にしたがる 体幹リセットダイエット』(サンマーク出版)という本だった。

「リセットダイエット」という言葉も新しいと思う。しかし「モデルが秘密にしたがる」が無性に気になった。

特定の道を突き進む人が秘密にしたがること。その人ならではの考えや取り組み方に、人は惹きつけられるのではないか?

そう考えると、さきほどのたくさんシェアされた記事はどうだろう。

僕はずっとこう思っていた。サムネイル画像の「I LOVE YOUを今のあなたなら何と訳しますか?」という問い掛けがパンチがあるから話題になったのだと。それだけじゃないかもしれない。

『コピーライターじゃなくても知っておきたい』というキャリアハックさんが付けてくださったこのタイトルこそが肝だったのかもしれない。

そこに『この本は、言葉術の本ですよね』という編集部の方の声。SNS時代に誰にとっても大切な言葉術。そこを超えていってほしいと願いを込めた「超言葉術」という名付け。

合体して完成したのが『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』というタイトルだった。僕のことをまったく知らない人でも、手にしてくれる。入口になれると信じたタイトル。寄藤文平さんが装丁してくださった。

スクリーンショット 2020-08-22 0.54.29

本を読み、フォトグラファーの能登直さんが撮ってくれた写真。大好きだ。

本の刊行をSNSで発表する前日。

僕の主宰する「企画でメシを食っていく」の連続講座「言葉の企画2019」のメンバーに送ったメールがある。その時の気持ちを如実に表わしていたので抜粋したい。

タイトルに関しては、本当に紆余曲折ありながら、迷い、ふらつきながらも、最終的に力強くこうなりました。

【タイトル】
コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術

【コピー】
夏目漱石は「I LOVE YOU」を「月が綺麗ですね」と訳しました。今のあなたならどう訳しますか? 

この半年間ずーーーっと、入口と出口のことをずっと考えてました。伝えたいことがある。それをそのまま伝えたくなる。でも、伝わるためにどうすればいいか?

どこに入口をつくり、どんな風に出口まで書き進めればいいのか、ずっと考えながら、昨年「言葉の企画」の終盤から、少しずつ、少しずつ、書き上げていきました。

みんなにタイトル案を見てもらった後も、合計200本近く、案出しはしていて(本当に色々ありました)でも、そこで考えたこと全部、中身に繋がっていると思ってるし、企画生一人ひとりとのやりとりや、みんなの企画書から受け取ったこと、気持ち、思い、BUKATSUDOからの帰り道に考えたこと、書けるかぎりのことを、一冊の中に閉じ込めました。

2020年の3月に刊行。結果、ちゃんと届いた。

書籍の「はじめに」に書いたこの一文。

言葉のせいで逃げ出したくなるほどつらいことがあったり、一方で、言葉のおかげで泣きたくなるほど幸せを噛みしめたりしたことがあるあなたへ。

マラソンのゴールテープを切るように、たくさんの人が入口から出口まで、僕の言葉を完走してくれている。SNSで「#超言葉術」を付けていただける感想がうれしくてたまらない。一冊の本をきっかけに、たくさんの人とつながれて、新しい動きが生まれている。僕は、泣きたくなるほど幸せを噛みしめている。

「名付け親」と「育ての親」のことを思った。

名前は、タイトルは、付けて終わりじゃない。そこから育てていかないといけない。今、「超言葉術」はまちがいなく、読んでくれたみなさんと育てている実感がある。もしよかったらあなたも一緒に、ぜひ。

もしも「愛と書かずに愛を伝える本」で刊行されていたらどうだっただろう?

どうなっていただろう?その世界線に行くことはできない。けど、きっと読んでくれたみなさんと同じく育ての親となって育てていたと思うのだ。

名付けは、タイトルは、はじまりにすぎない。自分の名前もそう。作品の名前もそう。世の中の事象もそう。みんなで呼んで、みんなで育てていくんだ。

冒頭に僕は言った。いい未来が待っている。

もっと言うと、いい未来を育てているに違いない。

3刷重版になりました。涙。このnoteで書き続けていたから、頂いたチャンスです。こうして読んでくれた、気にかけてくれたあなたに心から感謝です。阿部広太郎より。

この記事が参加している募集

名前の由来

ありがとうございます◎ 新刊『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(ダイヤモンド社)手にとってもらえたら嬉しいです🙏🏻 https://www.amazon.co.jp/dp/4478117683/