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言葉の企画2019

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言葉って何だろう?企画って何だろう?半年間、考え続ける。形にしてみる。BUKATSUDO連続講座「言葉の企画」にまつわるnoteです。
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2019年7月の記事一覧

わたしの思う「素敵な人」

「素敵な人」をテーマにエッセイを書く、というお題をいただいた。 ただ、私は「素敵」という言葉を頻繁に使うので、今その定義に困っている。 【素敵】[形動]...自分の気持ちに合っていて、心を引かれるさま。非常にすぐれているさま。程度がはなはだしいさま 引用:goo国語辞書 何かにつけて「素敵です」と言って「素敵だった」などと書いてきた。とても便利な言葉で“素敵な” 言葉だと改めて思うけど、本当に「非常にすぐれている」ときに使っているだろうか。 「言葉の企画」初回の講座

本と、港と、素敵な人と。

台風が来ているのでは、と恐るおそる起きた土曜日の朝。 わたしの心配をよそに晴れ間の出た空を見て、予定通り三崎に行くことを決めた。 せっかくのお休み、海、恋人とのプチ遠出。 すっかり夏休み気分で、このあいだ奮発して買った真っ赤なワンピースをはじめて着てみた。ついでに髪の毛もちょっとかわいくしてもらった。胸が高鳴る。ふふふ。 この小さな旅のいちばんの目的は、憧れの素敵な人とその人が作った場所に会いに行くことだ。 ◇ ◇ ◇ 東京から2時間弱、電車に揺られて着いたのは神奈

似た者同士だからこそ、素敵だと思える人。

わたしには、わたしにとてもよく似ている友達がいる。 地元が同じ。進学した高校も同じ。大学と新卒時の就職先は違ったけれど、結局わたしが自分の会社に彼女を引き入れ、職場まで同じになった。 わたしたちはのほほんとした良いやつで、あまり敵を作らず、自分のコミュニティ内では楽しく過ごすことができる。 知らない人がたくさん集まる立食パーティーみたいなものは苦手で、人見知り、だけど人は好き。好奇心はけっこうある。 2人とも読書が好きで、いちばん好きな作家は村上春樹。インターネットが好

トライを続ける男の話

彼は燃えていた。 50mは先にいただろうか。 遠くからでもひと目で分かるほどに、異様な空気を放っていた。 何がそこまで彼を駆り立てているのか分からないが、 まるで選挙演説で市民一人ひとりに政策を訴えかけるように、 熱を発している男がいた。 高校に入学して1週間ほど経った頃だろうか。 放課後、どの部活を見学しようかなと悩んでいたところに、彼は現れた。 彼はラグビー部の顧問として、グラウンドのそばで新入部員の勧誘を行なっていた。 「ラグビーは紳士のスポーツだから」 「一

日本一元気な被災者を紹介します

|30歳も年上のお友だち「遅いんじゃー!!はよ泥かけーーー!!」 出会いの第一声は、こんな言葉だった。 タジさんとマチダさん。 父の歳ほどあるオッチャン2人組。 素敵というキラキラワードは似合わないが、 私にとっては道しるべになる人たちだ。 タジさんは、とにかく口がよく動く。 人に対してあれしろこれしろ、と ニコニコしながら指示を出してくる。 マチダさんは、とにかく手がよく動く。 スマホで撮った写真は毎回SNSにアップ。 出会った女子大生とのLINE交換は怠らない。

ぼくが、プランナーになった瞬間

今日は、ぼくをプランナーにしてくれた人のことを書こうと思う。 今から一年前のこと。 ぼくは、心底今後のキャリアについて迷ってた。 転職するかどうかとかではなく、 そもそもこの業界でなにを成したいか、 そして、それにどう携わりたいか、 ひたすらに悩みながらも、日々の業務はそんなこと1mmも気にしちゃくれないので、心身ともにすり減っていた。 そんな時に助けてくれたのが、同じ部署の先輩Oさんだった。 たぶん本人は助けた自覚もなく、シンプルに下をつけたかっただけなんだろうけど。

老人と海と私

夜が明ける前に家を出て、海の上で朝を迎える。 どこからが海で、どこからが空なのか 天地の境のない、真っ暗な世界。 ブルンブルンッ、ドッ ドッ ドッ ドッーー エンジンキーをひねると、船が震えだす。足の裏から伝わる細かな振動。 波に合わせて船が揺蕩うので、腹に力を入れて、体を支える。 真っ直ぐ前を見て、舵を切る。 - 祖父は漁師だ。海の漢だ。 たった一人で、沖に出る。仕掛けも道具も自分でつくる。 季節を読んで、漁を選び、潮を読んで、罠を落とす。 風を読んで、雨を避け、景色

夏は3人に暑く 冬は3人に寒い

「暑い、寒い、歩きたくない~!」 ちょっとしたことで、いつもうるさい。 バンドのギターでボーカル、あきこのことだ。 ラブラブフォーエバーという 女子高生の語感のような名前の ガールズバンドに出会い、 ドラムで参加してから4年位経った。 このバンドに入ったのは、 彼女がすてきだったから。 初めてラブラブフォーエバーを観たとき、 力強くてかっこいい演奏と歌声、そして MCが良かった。 MCに無反応なお客さんたちに (ちょっと強面な男性ばかりだった) 「わっ!」っと突然言い

あの日プロ野球選手だった頃の親父を、僕はまだ知らない。

僕の親父は元プロ野球選手らしい。 ググるとWikipedeiaが出てくる。 過去の功績も出てくる。 でも僕は、そんな輝かしい頃の親父を知らない。 僕が生まれた歳に引退した親父の現役時代を、自分の目で見ることは叶わなかった。 小さい頃から親父が元プロ野球選手だということは噂には聞いていた。(普通に親に聞いていた) ただ僕の目に映る親父はただのちょっと気さくなだけのお調子者のオヤジで、「ふ〜ん」くらいにしか思っていなかった。 友達の家に遊びに行った時に「お父さんはプロ野

しなやかに生きるために

素敵な人は変われる人こんな人になりたい、と憧れを持つ人はたくさんいる。 いつも笑顔で、誰にでも明るく接する人。 自分のことのように人を思い、手を差し伸べる人。 常に友人に囲まれ、愛さている人。 面白い仕事をしていたり、容姿が綺麗な人に対しても「こんな風になりたいな」と思う。 自分にとって「素敵な人」を考えた時に、そんな人たちの顔が幾つも浮かぶけれど、なかなかしっくりとこない。 素敵な人と、私はいつ出会っただろうか。その素敵な人は、私に何をもたらしたか。 改めて掘り下げて考え

愛する母へ、おくる言葉。

7月中旬、母が入院した。 「ママ、鼻に腫瘍あったわ。絶対治すから大丈夫やけど。」 半年前の冬、実家に帰省した私に、 母は突然ポロっとこぼすようにそう言った。 平然と話す母の反面、驚き動揺した事を覚えている。 あれから半年後の先週、母は手術のため入院した。 手術の前夜。 私は何だか不安になって、母に電話をかけた。 「大丈夫やで。ありがとうね。」 携帯の向こう側から聞こえるその優しい声に安心する私。 電話を切って、「いや、なんで私が励まされてんねん」と自分に突っ込

号泣するひとは「大人」じゃないのか。

福岡県に住んだことのあるひとは、毎週金曜日深夜0時55分に8チャンネルで放送される「ゴリパラ見聞録」を一度は見たことがあるだろう。 「しがない芸人3人が日本全国どこへでもあなたの願いを叶えるために出かける旅番組」である。 わたしがこの番組をはじめて見たのは、高校2年生のとき。 当時寝るときもTVだけは消さない癖があったわたしにとって、深夜にたまたま映ったのがこの番組だったのである。 なぜこのときのことを覚えているかというと、人間の暗部がテレビに映し出されていたから。 流れ

進撃の老人

このタイトルは前回の言葉の企画でわたしの父に対するイラっとにネーミングをつけたものだ。父は77歳の後期高齢者で、未だにスマホで写真を頼むと連写する。 わたしは実家に2年以上入っていない。 父は6年前に母が急逝してから、一軒家の実家に独りで暮らしている。 わたしと夫は不規則な仕事のため、息子の育児のサポートを父にお願いしたく、実家の近くに越した。住まいから実家まで徒歩6分ほど。でも入りたくない。なぜなら汚いから。2年前より2年分汚いかと思うと入る勇気がない。行って母の仏壇に

夕焼けとフライドポテト。

はじめに。 言葉の企画4回目の課題が「あなたの「素敵」な人についてというエッセイをnoteに書く」という苦手なもので、どうにも時間がかかってしまった。 就活もまだ終わらないし、圧迫面接もあったりで、気持ちの波が大きすぎてMacを閉じてしまう日が多かった。 素敵な人って?いまそんな事考えていられないんだよなあなんて思ってしまった時も正直ある。トニースタークの事でも書こうかな、とも思ったり。 大学前期も終わるタイミングだったから、課題もあるしテストもあるし、寝てないし、色々なこと