今さら聞けないクラシック音楽の管理番号についてケッヘル〜opまで
クラシック音楽において、多くの作曲家の作品には、後世の研究者や音楽学者によって管理番号が付けられています。
これらの管理番号は、作曲家の作品を整理し、特定の作品を識別するのに非常に役立ちます。
加えて例えばプログラミング言語の一つであるPython。
このPythonのライブラリでMusic21というのを使う際に楽譜を読み込む番号としても一般的な管理番号が使われています。
海外のアーティストと共演する際のミーティングなどでも管理番号でやり取りをするとコミュニケーションエラーも起こりにくくスムーズにプロジェクトを進めることができるでしょう。
以下に、主要な作曲家とその管理番号について解説します。
1. モーツァルト:ケッヘル番号(K番号)
作曲家: ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
管理番号: ケッヘル番号(K番号)
解説: ケッヘル番号は、ルートヴィヒ・フォン・ケッヘル(Ludwig von Köchel)によって1862年に編纂された「モーツァルトの作品目録(Verzeichnis der Werke W.A. Mozart's)」に基づいています。モーツァルトの全作品を作曲順に整理しており、作品番号の前に「K.」または「KV」が付けられます。
例:
K. 525: アイネ・クライネ・ナハトムジーク
K. 626: レクイエム
Ludwig Alois Ferdinand Ritter von Köchel (ルートヴィヒ・アロイス・フェルディナント・リッター・フォン・ケッヘル)
1800年1月14日 – 1877年6月3日 (77歳没)
オーストリアの音楽学者、作曲家、植物学者、鉱物学者、教育者です。
年表
1800年1月14日
オーストリア・ニーダーエスターライヒ州のシュタインで生まれました。
モーツァルト没後から9年、ハイドンはまだ存命でベートーヴェンは難聴に苦しんでいた頃でした。
1816年
隣町クレムスのギムナジウムで最優秀の成績で卒業。
その後、ウィーン大学で法律を学んだ後、カール大公の財産管財人を務め、貴族の家の家庭教師となります。
さらにそこからその貴族の知合いである伯爵家の家庭教師へと出世します。
1827年
法学博士号を取得。
同年カール大公一家の家庭教師になります。
ケッヘルは大公の宮殿(現在のアルベルティーナ美術館)内に居住することになりました。
1842年
カール大公の子供たちが成長したのに伴い家庭教師の職を退職。
その際レオポルト騎士団勲章を授与され貴族に叙せられました。
翌年にはウィーン楽友協会の副総裁に選出。
1848年
革命で混乱するウィーンを離れテシェンに引越します。
1850年
ザルツブルクへ引っ越し。
モーツァルトの故郷ザルツブルクには1850年から1863年まで10年以上暮らし、モーツアルトの作品目録作成に取り組みました。
また鉱石学にも没頭し、『ザルツブルク公国の鉱石』(1859年)に結実します。
1851年
ケッヘルの友人フランツ・ローレンツから著作『モーツァルトのこと』が送られてきます。
刺激を受けたケッヘルは作品目録の作成を開始します。
完成した目録は1862年にブライトコップ社から『モーツァルト全音楽作品の年代別主題別目録 Chronologisch-thematisches Verzeichniss sämmtlicher Tonwerke Wolfgang Amade Mozart’s』として出版されました。
1852年
再びウィーンに戻り、ブライトコプフ社にモーツァルト全集の出版を要請するかたわら(ケッヘル没年の1877年にようやく刊行が開始される)、モーツァルト関連の小論を発表したり、ベートーヴェンの書簡集を編纂したり、オーストリアの宮廷音楽の歴史に関する本を出版するなど歴史のアーカイブな活動を行います。
1871年
ヨハン・ヨーゼフ・フックス研究の功績を讃えられてウィーン楽友協会の名誉会員になりました。
翌年作品目録を附録とするフックス伝を刊行。
1877年
ウィーンにて死去。
追悼式ではモーツァルトの『レクイエム』が演奏されました。
ケッヘル番号
ケッヘルが編集したモーツァルトの作品目録は、1761年に作曲された『クラヴィーアのためのメヌエット ト長調』から、絶筆の『レクイエム』までの626曲を作曲時代順に配列した目録。譜例、小節数、自筆譜・写譜・出版譜の有無・保管先などのデータが記載されています。
その際の通し番号が現在のケッヘル番号となっています。
この時代順目録よりも以前は、データを簡素化したジャンル別全作品目録がありました。
ブライトコップ社のモーツァルト全集は、このジャンル分けが採用されています。
表示方法
日本や英語圏では「交響曲第41番ハ長調 K. 551」のように表記されます。
本家ドイツ語圏ではKV 551と表記。
番号はK. 1からK. 626まであり、K. 626はモーツァルトの死によって未完に終わったレクイエムとなっています。
ポイントケッヘル番号を25で割り10を足すと、モーツァルトがその曲を作曲した年齢が概算できる仕組みになっています。
ただしこれはモーツァルトの作曲ペースが均等であると仮定しただいたいの計算式となっています。
例えばK551 だと、551÷25+10=32.04歳となります。
Anh
ケッヘルによる初版では、紛失した作品や断片にはK. Anh. 56のような追加番号が当てられています。
例(「K. Anh. 56」は「ケッヘル・アンハング・56」と読む)。
最初の目録ではない!?
モーツァルトの作品目録は、ケッヘル以前にも存在していました。
一つはモーツァルト自身が作ったもの。
1784年以後死没直前までの176曲が収められています。
さらに、幼少期の作品については父レオポルトも作成しています。
この二つの作品目録には15年の空白期間があるのが残念な点です。
ケッヘルの目録がなければモーツァルト作品の多くが散逸してしまった可能性があるとも言われています。
2. バッハ:BWV番号
作曲家: ヨハン・セバスチャン・バッハ
管理番号: BWV番号(Bach-Werke-Verzeichnis)
解説: BWV番号は、1950年にヴォルフガング・シュミーダー(Wolfgang Schmieder)によって編纂されたバッハの作品目録に基づいています。この目録は、バッハの作品をジャンルごとに分類し、各作品に番号を付けています。
例:
BWV 565: トッカータとフーガ ニ短調
BWV 988: ゴルトベルク変奏曲
3. ベートーヴェン:作品番号(Opus番号)
作曲家: ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
管理番号: 作品番号(Opus番号)
解説: ベートーヴェンの作品は、彼の生前に出版された順に作品番号(Op.)が付けられています。未出版の作品には、WoO(Werke ohne Opuszahl、作品番号なし)という番号が付けられます。
例:
Op. 67: 交響曲第5番「運命」
Op. 27, No. 2: ピアノソナタ第14番「月光」
4. シューベルト:D番号
作曲家: フランツ・シューベルト
管理番号: D番号(Deutsch番号)
解説: D番号は、オットー・エーリヒ・ドイチュ(Otto Erich Deutsch)によって1951年に編纂されたシューベルトの作品目録に基づいています。作品は作曲順に整理されています。
例:
D. 759: 交響曲第8番「未完成」
D. 911: 冬の旅
5. ショパン:作品番号(Opus番号)
作曲家: フレデリック・ショパン
管理番号: 作品番号(Opus番号)
解説: ショパンの作品は、彼の生前に出版された順に作品番号(Op.)が付けられています。未出版の作品には、BI(Brown Index)やB(Kobylańska Catalogue)番号が付けられています。
例:
Op. 9, No. 2: ノクターン第2番
Op. 28, No. 15: 前奏曲第15番「雨だれ」
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