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職人仲間も巻き込んで世界へ!日吉屋の越境EC元年【後篇】

前篇でお伝えしたとおり、日吉屋が2022年から越境ECに取り組み始めました(サイトはこちら)。めざしているのは、魅力ある日本の職人仕事を独自の視点でセレクトし、世界に発信するポータルサイトのようなイメージ。単に自社商品を販売するだけではなく、これまでに弊社が商品開発や販路開拓のお手伝いしてきた職人達のオリジナル商品に特化して、幅広く取り揃えていこうと、目下少しずつ作業を進めています。今日は、そんな越境ECの運営にまつわる現在進行形のトライアルについて、お話ししたいと思います。

伝統産業の海外進出を「職人」出身の立場で支援してきた10年

弊社が、日本各地の伝統産業の海外進出をお手伝いするようになって、すでに10年以上。これまでに手がけてきた支援事例は、延べ700社を超えました。私たちのビジネスモデルは、海外のバイヤーやデザイナーの視点を入れ、伝統の技は生かしつつも、海外のライフスタイルにも馴染むようなものを作る「Next market-in(ネクストマーケットイン)」というメソッドが特徴です。

これは、日本の伝統産業の作り手が陥りがちな、プロダクトアウト型ものづくりを脱却する上で重要な思考です。つまり「これを作りたい・見せたい」という職人の自己主張にのみ終始するのではなく、外からの目で自分たちの仕事を見つめ直すことが必要なのです。

かくいう私も、デザイン照明「古都里-KOTORI-」ができるまでは、独りよがりなプロダクトアウト型思考にとらわれて、迷走していたことがありました。しかし海外に売ろうとするなら、海外からのリアルな声にしっかり耳を傾けなくてはなりません。ネクストマーケットイン・メソッドは、遠回りをした挙句にそのことに気づいた私の反省の産物でもあります。そしてこれは、私がデザイナーやプロデューサー出身の人間でなく、まさに「職人」だったからこそ生まれたともいえます。

「古都里-KOTORI-」は、海外バイヤーの声でブラッシュアップされて、世界15カ国に販路を広げました。

めざすは、全世界に向けた日本の伝統工芸のポータルサイト

職人出身だから、職人の抱えている課題がよりリアルにわかる。そんな私の強みをもっと生かしたいという考えは越境ECにも生きています。前篇でも述べた通り、越境ECがさまざまな理由で身近になりつつある今、私たちは縮小していく国内市場で汲々としていないで、より購買力のある大きな市場へ出ていくべきなのです。

コロナ禍以前に弊社が行ってきた海外進出支援は、①商品開発 ②原価と売価の見極め ③商談レッスン ④ブランドサイト制作など広報 ⑤海外展示会出展という4つのフェーズで成り立っていました。しかし2020年以降、急速にオンライン化が加速する中では、⑤に加えてオンラインの場にも積極的に商機を広げていかなくてはなりません。

ただ多くの伝統工芸の現場では、人手が少なく、越境ECを自社で行える余力がないのも事実です。もちろん語学のハードルもあります。若い世代の中には、InstagramなどSNSを積極的に活用して、海外からの受注につなげているケースもありますが、より踏み込んだウェブマーケティングまでできているところはほとんどありません。

そこで日吉屋が代表となり、日・英・中の3カ国語に対応した越境EC〈HIYOSHIYA ONLINE SHOP〉を立ち上げて、さまざまな作り手の商品を掲載することにしました。〈HIYOSHIYA ONLINE SHOP〉に注文が入ると、弊社が出店いただいている各社に連絡。商品は各社から直接、注文主に発送します。弊社は出店料として、その売上高の一部をいただくような仕組みになっています。掲載社数は今後、順次増やしていく予定です。

もちろん、ウェブサイトを立ち上げてから効果が出てくるのには時間がかかります。〈HIYOSHIYA ONLINE SHOP〉も6月ぐらいから注文数が伸びており、海外からのご注文が40%を越える月もありました。

コンテンツとウェブ広告で見込み客にアプローチ

2022年は日吉屋にとって越境EC元年ということもあり、これまでやってこなかったさまざまなトライアルを取り入れようと考えています。

まずひとつはコンテンツ発信です。職人である私が日本各地の職人とつながり、製品だけでなく、その背後にある工房の風景や商品開発ストーリーも一緒に届けるのです。ここでは、読みものと合わせてYouTube動画も配信していくつもりです(先日は、友禅彫刻士の西村武志さんのコンテンツをアップしました。ぜひご覧ください)。

そしてもうひとつは、ウェブ広告によるデジタルマーケティングです。まずは手始めに行ったのが、日吉屋の「古都里-KOTORI-」のターゲティング広告。ターゲティング広告とは、自分たちの商品の購買層となるような見込み客をウェブ上の行動から炙り出し、その人たちの閲覧するページに広告を掲載すること。私たちはFacebookとInstagramのSNSプラットフォームを使うことにしました。ターゲットは、FacebookやInstagram上で、高級な車やファッション、家具、和のインテリアなどに「いいね!」をしたり検索閲覧している人たちのグループで、日本人の場合、国内居住者のみ。日本人以外は国内外の富裕層地区に住む方などです。

6月に国内向けに広告出稿した際には、Facebookのアクセス数が2000%に伸び、Instagramのフォロワー数も130件以上増加。次に7月に海外向けに広告出稿した際には、多くのコメントが寄せられました。こういうところから今後のEC運営のヒントを探って行こうと思っています。

広告の写真やテキストは、いくつかのパターンを作って配信。その後、ターゲットから最も反応があったクリエイティブをAIが計測し、継続して配信し続けるものを絞り込んでくれます。今後は上記でご紹介したような、作り手を取材した読みもの・動画にユーザーを誘導し、より深い発見を促すような施策も打っていくつもりです。

ECサイトでは、季節に合わせた特集で、伝統工芸を取り入れた暮らしの魅力を発信中。

私たちにとってもまだまだ不慣れなことばかりですが、今は知見を蓄積するフェーズと割り切り、外部の人の手も借りながらトライアルを続けています。「VUCAの時代(未来予測が困難な時代)」と言われる今、大切なのは、完成度の高さよりも「拙速」だと思います。完成度は70%でもいいから、失敗を恐れず、というよりも、むしろ小さな失敗を繰り返し乗り越えながら、次々と手を打つプレイヤーの方が強くなれる。そう信じて突き進みます。

最後になりましたが、つい先日、テレビ東京の人気番組「ガイアの夜明け」の20年企画として、2011年に弊社の取り組みを放映いただいた際のバックナンバー+新たな取り組みを追加編集した番組をオンライン配信でご紹介いただきました。この中で冒頭のYoutubeチャンネルへの挑戦を取り上げて頂いたおります。こちらからご覧いただけますので、よろしければ、ぜひお楽しみください。
※バックナンバー部分は無料視聴可能ですが、追加編集部分をご覧になるには、TV東京サブスク加入が必要。無料視聴期間あり

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