「訪問診療」を知っていますか?
この記事は全部読むと5~6分くらいかかります。自分にはあまり関係ないという方も、よろしければ目次から、『こんな場合訪問診療をお勧めします』だけでも、一度ざっと読んでもらえたら嬉しいです😊
この記事は、体力や足の筋力が落ちてしまい通院が大変になって来た方、あるいは病院から「訪問診療」を勧められている方に読んでいただきたい記事です。しかし70代以降の親を持つ多くの方は、いつか必要になるかもしれないので、出来れば知っていただき、必要な時に思い出してもらえたら…と思っています。
訪問診療と往診の違い
両者の違いをご存じでしょうか。どちらも医師が患者さんの家に行き診察を行うことに違いはないのですが、往診は、「今日は具合が悪い」という患者さん、あるいは家族の求めに応じて行う、臨時の診察を指します。
これに対して訪問診療は簡単に言えば通院の代わりで、患者さんの困りごとや様子に変わりがないかを医師が出向いて定期的に確認し、血圧を測ったり聴診をしたり、必要な指導や薬を処方することです。「あらかじめ立てた診療計画に基づき」行うもので、訪問日や時間を決めて行われます。
訪問診療を普段行っており、患者さんのことをよく知っているからこそ、私たちは往診でより正確な判断をすることが出来るのです。
ただし、後述するように制度として「訪問診療」と呼ぶ場合、この定期的な訪問診療と臨時の往診を組み合わせたサービスになります。
制度としての「訪問診療」
患者さんの家に定期的に訪問し、通院の代わりに自宅で診察をすることが訪問診療であるというお話をしました。しかしここからは厚労省の定めた「訪問診療」という仕組みについてお話します。「訪問診療」は保険診療なので、いくつかのルールに従って行われます。
まず、概要を説明すると、「訪問診療」は上記の定期的な訪問診療と、臨時に行う往診を組み合わせたサービスです。具体的には訪問診療医は最低「月1回」定期的な訪問診療を行う必要があり、これに加えて24時間365日患者さんからの連絡を受け対応(詳しくは後述)することが義務付けられています。患者さんの体調により定期的な訪問診療は月2回になったり、週1回になったりと回数は変わります。
訪問診療の開始は口約束ではダメで、「同意書」を書いていただく決まりになっています。訪問診療は月の単位で行われますが、不要になればいつでも終了出来ますし、担当医と気が合わないと感じれば変更も可能です(だいたい、直接は気まずいのでケアマネジャーさんが間に入ってくれたりします)。また、終了の際は同意書のような書類は不要です。
このほか、当然ですがケアマネジャー・看護師・病院との連携や投薬(点滴など)、検査、指導、書類の作成などを訪問診療で行います。
「訪問診療」を始めるには
訪問診療を行なっているクリニックに電話すれば必要なことは教えてもらえます。かかりつけの開業医で訪問診療をやっていれば良いですが、行っていない開業医さんも多いので確認が必要です。依頼先が分からない時はネットで「訪問診療」で探すと良いと思います。
ただ、病院にかかっている方は病院のソーシャルワーカー、介護サービスを利用されている方はケアマネジャーに相談するのが近道です。直接ネットで調べて電話をしても良いのですが、ケアマネジャーはきっと評判も分かっていて患者さんや家族の希望に合う訪問医を紹介してくれると思います。
訪問診療が終了するとき
もちろん患者さんが亡くなってしまった場合は終了となりますが、ほかに多いのは患者さんが施設に入られる時です。施設では別な医療機関が訪問診療を行う場合もありますし、施設の嘱託医が対応する場合もあります。また、骨折などの怪我が理由で始まった訪問診療では特に、患者さんが元気になって通院出来るようになれば終了です。
こんな場合訪問診療をお勧めします
基本的に、一人で通院出来ない人全てが訪問診療の対象になります。確かに付き添いがいれば、車いすを借りれば、寝台車を使えば通院は出来ないことはないですが、病気が増えるに従い受診先も増えたり待ち時間も大変になります。この場合は病院の主治医に訪問診療に出来ないかを聞いてみても良いと思います。
また、体調が変化しやすい方の場合、臨時の往診を利用することで救急外来の受診を減らせる可能性があります。ご高齢の方だと不安だけで具合が悪くなってしまうこともあるからです。
そして訪問診療は外来と比べると診療の時間が長くとれるので、ゆっくり話がしたい、聞きたいという方にも向いています。
今のところ、訪問診療を行ってると病院の外来に通院出来ない、というような決まりはありません。中には専門的な治療を受けながらその他の用件は訪問診療で受ける方や、普段は訪問診療で診てもらいながら数か月に一度検査を受けるために病院を受診されている方もいらっしゃいます。
病院の担当医やかかりつけ病院と離れることを不安に思う方もいらっしゃいますが、通常訪問診療に切り替わったからその病院にもう診てもらえない、それを理由に入院出来ないということはありません。訪問診療を受けている方も、入院が必要になることがあることくらい病院の先生はご存じです。心配なら「何かあった時はよろしくお願いします」と伝えておけば良いと思います。
「訪問診療」の臨時対応について
先ほどお書きしましたが、患者さんの具合が悪い、いつもと様子が違う時に対応するのが訪問診療の大切な仕事です。
この「対応」はあまり心配ない内容であれば電話で済む場合もありますし、状況によっては臨時の往診を行い診察や治療を行います。しかし電話を受けた時点で緊急性が高いと判断されればすぐに病院の受診をお勧めする場合もあります。
すぐに受診をお勧めすることがある理由は第一に「訪問診療」の往診は多くの場合、救急車のように10分、15分では行けません。私の過去の経験では多くの場合どうしても平均1~2時間程度かかってしまいます。これに加えて緊急性の高い問題の場合1時間後に訪問医が聴診器を持ってかけつけてもどうにもならないことが多いからです。
ただし、この場合も受診先の病院に連絡をしたり、直近の様子を病院に、「情報提供書」というかたちでFAXします。この「情報提供書」は内容が大切さはもちろんのこと、この書類を送ることで病院の先生も病院でどんな検査を行い、どのような診断となり、どのような治療を行ったか、などの情報を訪問医にフィードバックしてくれますので、連携が強まり、診療の内容を患者さんや家族と共有しやすくなります。
まとめ
「訪問診療」がどのような方に役に立つのか、また「訪問診療」のだいたいの仕組みについて解説しました。なじみのない方は一度読んだだけでは意味が分からないかもしれませんが、必要な時に思い出して読んで頂けたら嬉しいです。
気の合う、何でも相談出来る頼りになる訪問診療医と出会えればとても心強いと思います。通院が大変だなと感じる方は是非検討してみて下さい。
長い文章を最後までお読み下さり、ありがとうございます。今後訪問医の選び方や訪問診療の料金についても書いていきますので、良かったら是非フォローして下さい。
また、よろしければサイトマップもご利用下さい!
主に介護に関するマガジンです。介護は突然始まるので、その前に知っていただきたい記事をまとめています。