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19世紀末ノルウェー、固定ギアの自転車でバイクパッキングに出ている男たちの写真

ノルウェーの国立図書館がFlickrで公開している一枚の写真がある。1885年頃、ネーロイ・フィヨルドと呼ばれる景勝地(Googleマップ)でスウェーデンの写真家アクセル・リンダール氏が撮ったとされるもの。大陸を縦横に駆け抜けたり山で自転車を担いだりと面白いサイクリングをする知人がTwitterで紹介していたのを見たのが最初だったような。

「バイクパッキング」と呼ばれる自転車旅のスタイルでよく採用されるラックを用いない荷積みは、19世紀末にも存在していたのだ。ありあわせのバッグ類を適当に車体にくくりつけている感じだが(かなり前に偏って積んでいるように見える)、人間が何も背負ったりしていないのは身体の動きの自由度を確保するためだろうか。現代よりも各種装備が大きくて重かったことを考えれば、写真の男たちのルートは長くて数泊程度のものだと思う。専用ギアを使った洗練された積載もかっこいいけれど、こういう直球で荒削りな実践は見ていて胸が熱くなるね。

ちなみにフォークのフットレストは、ハンドブレーキを有する固定ギア自転車で坂を下る時のためのもの。固定ギア車は車輪が回転している限りペダルとクランクも回り続けるので、ブレーキが無ければ脚を踏ん張って減速するしかない。降りなければ下れない急坂もある。だがブレーキとフットレストがあると、足をペダルから外して楽に坂を下ることができる(下りの終わりで減速が済んだらペダルに足を戻せばよい)。1896年のイギリスの書籍『サイクリング』第5版の挿絵がとても分かり易い(239ページ、120ページ)。

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19世紀末のネーロイ・フィヨルド付近を固定ギア(そして変速機ナシ)の自転車で走った男たちは、どこから、どんな経路で来たんだろう。バッグには何が入っていて、どんなところで眠り、何を食べ、飲み、どんな話をしたんだろう。どんなトラブルや喜びがあっただろう。写真からそれぞれのキャラクターの違いを想像してみたり、機材ってどうにでもなるなあと思ってみたり(もちろん彼らの機材が当時の彼らにとってのハイエンドだった可能性もある)。何かをやりたいと感じたら、持ってるものを集めて飛び出しちゃえばいい。そんな気持ちにさせてくれる一枚。

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ていうか左の二人、手を握って互いに支え合ってたのかよ。






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