CIID Week4: Video Prototypingで感じたデザイナーとして持つべきプライド
CIIDのWeek4では、”Video Prototyping”を学びます。これまで自分は一人のビジネスパーソンとして、PPTやExcelを主なコミュニケーション手段としていましたが、Photography/Videographyはそれら以上に、Conceptualな内容を伝えることに優れていると感じました。
一方でPhotography/Videographyは、光の入射具合、構図、フォーカスする場所、対象の動き、サウンド等といったように、一人のデザイナーとしてこだわる要素が多く存在し、デザイナーの学生と比較した時に、苦難を感じることもありました。
今回は実際に辿ったプロセスを紹介しつつ、自分が感じた以下3つの「デザイナーとしてプライドを持つべきこと」を振り返りたいと思います。
- 学び1: 自分が思いついたIdeaを”優れている”と思えるか
- 学び2: “Research”よりも”Interaction”にこだわれるか
- 学び3: 撮影と編集作業に我を忘れることができるか
実際に作成した動画はこちらになります。2日でゼロから作成した動画で、荒い部分もありますが、プロダクトのコンセプトは伝わるかと思います。
Step0: Project Brief
Video Prototypingの最初の2日間は、主に講義ですが、最後の3日間は4人チームで、とある命題に基づいて2分程度のVideoを作成します。今回のテーマは、”In the current state of COVID-19 how can we help people continue performing their daily life activities?”です。
この時ちょうどコスタリカでも、新型コロナウイルスの感染者が増加し始め、学生は全員オンラインでの授業となっており、その状況をどのように打破すべきか、デザイナーとして考える機会を与えられたことになります。何ともCIIDっぽくて個人的には好きなテーマです。
また同時にそれぞれのチームにテーマが与えられます。自分たちのチームでは、Party好きなメンバーだったため、”Events and Entertainment”を選択しました。
Step1: Brainstorming
まずはいつもと同様に、与えられた命題に関してメンバー全員で認識を揃えるために、連想される問いを全員で洗い出します。ここではとにかく考えるよりも思いついたことを全て書き出して後から振り返ってみることが重要です。このチームではたった30分程度で上写真のような大量のIdeationとIntegrationを行いました。
その結果、チーム全体としては、以下を追求することで合意しました。前の記事からの繰り返しになりますが、後続のプロセスに熱中できるようにメンバー全員の深層心理にある価値観に触れているIdeaを抽出しています。
- Events & Entertainment: Music Festival
- Current Issues ppl are facing in this time: Audience could not get out of their house due to coronavirus, and are fed up with their lives
- Their daily life: music freak - really looking forward to going for music festival
この結果、”How might we Statement”を以下のように定めました。
“How might we create a music festival experience at home during the COVID-19 epidemic?”
■ 学び1: 自分が思いついたIdeaを”追求したい”と思えるか
ここまでは非常に順調に進んでいたチームでしたが、実際のソリューションを考えつくことに非常に時間がかかりました。僕はこれまでのビジネス経験に基づいて、ユースケースを考える(What, When, Who等を考えて状況を明確にする)ことに終始しており、下写真のようなそれっぽい資料(※例1参照)を作ることはできましたが、チームメンバが作成したいと思えるモノは思いつくことができませんでした。
そんな状況を打破したのは、コスタリカ人女性のデザイナーでした。彼女は突然、「鑑賞したいコンサートのDIYキットが自宅に届いてその場でコンサートにいるような感覚を味わうことができたら素敵なんじゃないかな」と言い出して、非常に強くこのIdeaを推してきました。彼女は本当にそのIdeaを追求したいようで、結局チームメンバーを説得し、全体としてそのIdeaを追求することでまとまりました。
Ideaを持った時点でそれを追求したいと思えるか否かは一人のデザイナーとして重要なセンスであり、正直本気で何らかのIdeaを持とうとしていなかった自分は、まだまだなのだなと感じた瞬間でした。
ちなみに彼女はこのIdeaを前日深夜の3時まで考えたそうで、Sketchや実イメージ(※例2参照)まで作成してきており、技術云々ではなくデザイナーとしての差を感じたところです。
(例1: 自分が考案したユースケース)
(例2: コスタリカ人女性デザイナーのIdea Sketchと写真)
Step2: Research
Ideaについて全員が理解した後は、「それが本当にUserが求めているモノなのか」「どのように使われるのか」といった問いに答えるために、リサーチを行います。リサーチを行う際には、下写真のような”Investigators”と”Investors”の2つの側面から検証します。前者はビジネスマンが精通している「Opportunityは本当にあるのか」を確かめるもので、後者は「ユーザーとプロダクトのInteractionは何か」を確かめるもので、デザイナーが精通しているものです。
時間が限られていたこともあるのですが、コスタリカ人女性の強い意志に引かれて、あまり”Investigators”の側面を捉えずに、”Investors”として自分たちのIdeaを磨くことに多くの時間を割きました。
自分は終始”Investigators”として、ユーザー像とユースケースをもう少し明確にして、説得力のあるIdeaにすることを主張し続けましたが、彼女との間に共通言語がなく、チームとしては、あまりリサーチをすることができませんでした。
■ 学び2: “Opportunity”よりも”Interaction”にこだわれるか
この争点も非常に自分にとっては学びのあるものでした。彼女はきっと頭の中でInteractionを捉えていて、後続で作成するVideoのイメージまでできていたのだと思います。議論していた時、彼女の中では、「私のイメージではそれは絶対に使われるのに。何故Kosukeはそんなに客観的な側面(Opportunity)にこだわるのだろうか」と疑問に思っていたことでしょう。
Opportunityを捉えることは非常に重要ですが、それ以上にデザイナーとしては、プロダクトと人間の関係性(Interaction)を明確に描き、論理的・客観的な領域を超えることが重要と認識しました。
Step3: Storyboard
OpportunityとInteractionを明確にした後は、StoryBoardを描き、実際の撮影するシーンを明確にします。モノが使われているシーン(Interaction)を明確にすることはもちろん重要ですが、「何故使われているのか」も明確にするので、コンテキストも含めて描きます。そして最終的には、困っていた人が喜んでいるシーンを描いて終わります。
このStoryboardをいかに明確にしているかで、その後の撮影のスムーズさが変わるので、念入りに行いました。可能であれば、Storyboardの他にShot Listのような「どこで」「どんな機材を使って」「どんな状況で」「どんな効果を使って」撮るのかをまとめておくと良いと思います。
Step4: Shooting/Editing
ここからが非常に長く、そして最も力を入れたパートです。撮影/編集といっても、ただiphoneを使って撮った動画を編集するのではなく、一眼レフカメラ、GoPro、ドローン、レフ板、三脚など、専用の機材を学びながら撮影するのでなかなか本格的です。自分はカメラに関してある程度知識があるので、ここでは主にカメラマンを担当しました。
自分たちのストーリー概要は以下のようなモノで、それに応じて撮影条件が異なります。理想的な構図や光の入射を得るために、演技の練習、撮影リハーサル、機材変更、Shot Listにはない新たなシーンの撮影などを行い、たった2分の動画を作るだけですが、合計で15時間を要しました。
また編集作業についても、サウンドの選出、モーションデザイン、シーンカットなど多くのことにこだわり、こちらも10時間程度を要しました。要するにほぼ夜通し作業したことになります。
■ 学び3: 撮影と編集作業に我を忘れることができるか
上記に記載した通りなのですが、理想的な条件で撮影を行うために、撮影時間帯や構図、エフェクトなど様々な要素にこだわった上で、文字通り「妥協せずに」撮影に没頭できるか、は技術云々関係なく、デザイナーとして重要なことと認識しました。編集についても同じで、自分が思い描いた動画ができるまで、試行錯誤を繰り返します。
その結果、例えば「フォーカスした位置から顔が10cmずれている」ことに気付き、それだけのために撮り直しなんてこともあるのですが、それすらも楽しめるようになることが重要です。
まとめ
以上の通り、なかなか濃密なプロセスを辿ったのですが、個人的には以下のような学びもあり、非常に充実したプログラムでした。ただプレゼン後に、10時間ぶっ通しで寝たことは秘密にしておきます。
- 学び1: 自分が思いついたIdeaを”優れている”と思えるか
- 学び2: “Research”よりも”Interaction”にこだわれるか
- 学び3: 撮影と編集作業に我を忘れることができるか
町田
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